高校生×仲間

世界の高校 行ってみたらこんなとこ

第1回 特別座談会

来てみてびっくり!日本の高校


出席者  (左から)
  ・アズ【出身:タイ、留学先:都内私立男子高校】
  ・アレックス【出身:カナダ、留学先:都立の国際高校】
  ・グスタフ【出身:スウェーデン、留学先:国立大学附属の中等教育学校】
  ・ジーンアン【出身:マレーシア、留学先:都内私立女子高校】

 

4人は、公益財団法人AFS日本協会の交換留学プログラムで、2012年4月から約1年間、日本人の家庭にホームステイしながら、日本の高校に通学しています。

学校の中のようすや大学進学について

ジーンアン
ジーンアン

日本の学校の構造や授業のようすなど、自分の国の学校と違うところがたくさんあると思うけれど、「ココが違う!」と感じたことを教えてください。

 

ジーンアン:

日本の学校はキレイ! 教室はもちろん、玄関や階段、部室といった共用スペースまで、学校内のいたるところが整理整頓されているのには驚いたわ。各教室にエアコンが完備されてるのにもびっくりした。日本の高校の中でも私が通っている学校はちょっと特別かもしれないけれど、マレーシアの高校では、エアコンは職員室にしかなかったから。

 

アズ:

エアコンもそうだけど、僕の学校は人工芝のサッカーグラウンドなんだよ。水はけのよさに感動したよ。雨が降っても12時間で乾いちゃうからね。サッカー部に入って初めてグラウンドに立ったとき、「あ~、人工芝最高!」と思った(笑)。

 

アレックス:

カナダの学校には、「教室(ホームルーム)」がないの。一人ひとり選択している授業が違うからね。あと違うところといえば、1クラスあたりの生徒数かな。日本だとだいたい40人ぐらいでしょう? カナダの高校では、1クラス25人を超えるところはまずないの。クラス数は、1学年だいたい10クラスぐらいかな。学年が進むにつれて中退する人もいるから、卒業時には1クラス分ぐらい減っているけれど。

 

グスタフ:

僕がスウェーデンで通っていた高校は、国がお金を出して運営しているところだったので、備え付けの設備の程度は結構よかったよ。日本とあんまり変わらないイメージだね。ただ大きく違うのは、日本の学校は、学校の中に“スモール・コレクティブ(小さな集合体)”が数多くあるっていう点かな。教室は、まさにその象徴だと思うよ。スウェーデンでは高校に入学した時点で、すでに一人ひとりが“独立”しているね。だれにも頼らずに自分で進路を決めるし、そのために、何を・どれだけ・どのように勉強するかも基本的には自分で決める。そのあたりを、日本では塾で補っているんじゃないかな。

 

アレックス:

カナダにも塾はないわ。

 

アズ:

タイにはあるよ。しかもビジネスとして、すごく発展しているんだ。ある有名な講師がプロデュースした塾がすごくはやっていて、ビル10階分のフロアがすべて学習スペースなんていう塾を建ててしまったんだよ。日本とそこは似ているかもしれないね。


■タイの学校制度と大学入試

日本と同じ小学校6年、中学校3(小中学校は義務教育)、高校3年、大学4年。

高校進学率は約60%、大学進学率は45%くらい(2010)

 


塾がない国のみんなは、大学の受験勉強はどうしているの?

 

アレックス:

カナダには、そもそも大学入試がないの。高校の成績次第で行きたい大学を決められるのよ。しかも私の家のあるケベック州はちょっと特殊で、地元の大学に進む場合は、高校を卒業した後「CEGEP(シージェップ)」っていう教育機関に2年間通うの。日本の塾や予備校と違うのは、大学で選択する専攻もCEGEPで勉強する間に決めて、CEGEPを卒業することが大学入学の条件になっているの。専攻は後から変更できるけどね。大学に入ってからは、学部の専門の勉強をするの。CEGEPに入るための試験もないのよ。


■カナダ(ケベック州)の学校制度と大学入試

小学校1年生~6年生、その後中等学校は7年生~11年生(日本の中学1年生~高校2年生に相当)。州内の大学に進学する場合は、日本の高校3年生~大学1年生にあたる2年間、CEGEPで基礎教養(Pre-university課程)を学ぶ。CEGEP卒業時に与えられるDCSDiploma of Collegial Studies)が、州内の大学願書の受付条件になる。大学は3年間(日本の大学24年生、学部によって異なる)。CEGEPの授業のやり方は大学と同じ。

 

   

グスタフ:

スウェーデンも、カナダと似てるね。いい大学に行きたいなら、高校でいい成績を取ること。それがすべてだよ。


■スウェーデンの学校制度と大学入試

初等学校(小学校+中学校・義務教育)9年、高校3年、大学は通常3年。小学校から大学まで学費は全て無料。高校入試はなく、初等学校の成績で決まる。大学は全て国立で、全国一斉の大学入試か高校の成績のどちらかよい方で、どの大学に入れるかが決まる。高校卒業後、留学したり働いたりしてから大学に進む人も多い。

 

 

日本では、学校だけでなく塾でも必死に勉強して大学に行くっていう人が多いけど、みんなの国ではどこで勉強するの? 

 

グスタフ:

スウェーデンでは、勉強は家でやるものだね。学校にも学習室があって、広い意味での将来的なプランを立てたり、先生に相談したりすることはできるけど、勉強の内容や範囲、時間配分も含めて、基本的には全部一人でやるよ。

 

アズ:

一人でやるのってしんどいよね。精神的にもタフじゃないと。

 

グスタフ:

そう、それが問題。眠くなるし(笑)。

 

ジーンアン:

私の国の大学入試システムは、日本とちょっとだけ似てる。マレーシアには、高校を卒業する時にSPMという全国統一学力試験があるの。このSPMでいい成績を取れば、どの大学でも選べるわ。


■マレーシアの学校制度と大学入試

 小学校6年、下級中等学校(日本の中学)3年、上級中等学校(日本の高校)2年、大学予備教育1年~1.5(成績による)、大学34(学部による)。小学校から大学予備教育まで、すべての学校で卒業する際に全国統一の学力試験があり、SPMは上級中等学校の卒業時に受験する。

 

 

みんなの国と日本の大学入試のシステム、どっちがいいと思う?

 

アレックス:

どっちがいいってわけじゃないけれど、日本の勉強はとにかく“メモライゼーション(記憶)”だよね。でも、暗記力よりも、“ちゃんと理解しているかどうか”の方が大事じゃないかな。

 

グスタフ:

僕もまったく同じ意見だね。

 

アレックス:

たとえば数学だったら、公式ってただ使うだけじゃなくて、なんでこの問題のときはこの公式を使うのかを理解しなくっちゃいけないと思うの。だから、人によって異なるたくさんの解答の道筋があっていいと思うんだけど。

 

ジーンアン:

日本のやり方は、結論を出すのが“ワンウェイ”なのよね。先生がいうのと違う解き方だと、なんていうか道を踏み外す感じ?ちょっと勇気がいる、みたいな(笑)。

 

アレックス:

私たちは、ただ単純に答を出すことはしないわ。他に違う方がいい解き方だったら、そっちを選べばいいんだもの。数学以外のほとんどの科目で同じことがいえるんじゃないかな。

歴史の勉強は、また違うかもしれないけれど。

 

部活など学校生活について

グスタフ
グスタフ

では勉強の話から少し変わって、日本の学校で面白いなと感じたところってある?

 

グスタフ:

部活はサイコーだね! 陸上部に入って短距離走をやっているんだけど、すごくリラックスできるよ。スウェーデンの学校には部活がないから、授業が終わった後に学校の友達たちと一緒に何かをするっていうのがすごく楽しいね。

 

学校が終わった後、スウェーデンの学生たちは何をやってるの?

 

グスタフ:

遊びに行くか、勉強するかだね。いずれにしても完全にプライベートの時間だよ。中には集中授業や、音楽やダンスなんかのスペシャルプログラムを取り入れている学校もあるみたいんだけど、ほとんどの学校には、部活もそういったプログラムもないね。

 

アレックス:

私が部活をやってないのは、あんまり遅くに家に帰りたくないから。剣道部に興味あったけど、毎日やっているっていうし、部費が……ね(笑)。スウェーデンと同じように、カナダの学校にも部活はないけれど、私は学外のクラブに参加していたわ。全部で4つやっていたけど、ランチタイムだけ活動するダンスクラブだったり、毎週火曜日の学校が終わった2時間だけ、とかそういう感じだったわ。

 

ジーンアン:

マレーシアの学校では、少なくとも3つの部活に入らないといけなかったのよ。

 

アズ:

本当に!? 少なくとも3つ?

 

ジーンアン:

そう。スポーツ、カルチャー、ライフスキルのうちから選んで。しかも「勇気を養うため」っていう理由で、アクティビティ系の身体を動かすクラブは必須だったなあ。でも3つ入らないといけないのは、学校が午後1時には終わるからっていう理由もあるね。

 

アレックス:

1時に終わるの? 早いね~。朝は何時スタート?

 

ジーンアン:

7時だよ。

 

全員:

7時!? 早っ!(笑)

 

みんなは何時から何時だった?

 

アレックス:

8時か9時に始まって、終わるのはだいたい16時ぐらいかな。

 

グスタフ:

僕たちは、9時半か10時から15時か17時ごろだね。日によって違うから。

 

アズ:

8時~16時かな。僕も結構早いな(笑)。

 

部活の話に戻るとアズはどう? サッカー部だったよね。

 

アズ:

留学生は公式試合に出られないからちょっとさびしいけれど、サッカーを通じてみんなと仲良くなれるのはうれしいね。面白いなあと思ったのが野球部。野球部の人ってみんな甲子園を目指してるでしょう? 練習も大変だし、髪も短く切ってるし、タイや他の国でスポーツを“本気で”やる人は、みんな学外のクラブに所属するから、学校の部活で一つの目標をめざしてがんばるのはユニークだと思ったよ。

 

アレックス:

サッカー部ではどのポジション?

 

アズ:

えーっと……。

 

ジーンアン:

ベンチでしょ?

 

アズ:

そうそう、水をあげたり、タオルを冷やして渡したり……って!

 

全員:

(爆笑)

 

ジーンアン:

日本の高校って先輩、後輩の関係が厳しいからね。先輩へのケアを後輩がやってるけど、私みたいな留学生は全然気にしてないね。みんなも私たちにはそういうことを求めないけど(笑)。

 

アレックス:

そうそう、年上か年下か、先輩か後輩かをすごく意識してるよね。私、日本では高校2年生として通ってるんだけど、クラスメイトよりも1歳年上なの。そうしたら、年上とわかったとたん言葉遣いが変わったのは面白かったわ(笑)。“敬語”ってやつよね。

 

グスタフ:

僕たちは先輩でも後輩でも「オッス」だな~。おはようでもこんにちはでも「オッス」(笑)。

 

全員:(笑)

 

日本の生活で困ったことは?

アズ
アズ

日本に留学して苦労したことは何かありましたか? やっぱりコミュニケーション?

 

アズ:

そうだね。言葉が違うっていうのは本当に大きい。僕はまだ日本語を20%ぐらいしかわからないから、友達と話すとき、会話のほとんどを“推測”するしかない。そうするとときどき間違って理解しちゃうこともあるよ。でも、ホストファミリーも学校の友達もみんな耳を傾けてくれるし、毎日本当に楽しい。

 

アレックス:

通学時間のラッシュ以外はね……。

 

アズ:

そう! 日本に来たばかりのころはなかなか人を押しのけて降りることができなくてさ(苦笑)、そのまま電車から降りられなくて、何駅か先まで乗り越して遅刻したこともあるよ。あのときはまいったなあ。

 

グスタフ:

うん、わかる。電車からあふれ出た人を押し込んで学校に行くなんて、信じられないよ。僕にとっての一番の問題は、金髪で青い目をしてるってことで注目を浴びすぎてしまうこと。ものすごく見られるよ。身長もあるし。スウェーデンや他のヨーロッパの国だったら、「転校生が来たぞ」「ああそっか」ぐらいだけど、入学の挨拶のときに壇上にあがったら、みんな「ガイジンがきたぞー!」って感じ(笑)。

 

ジーンアン:

その点、私は誤解されがち。日本語ができると思われて、話しかけられると詰まっちゃうこともよくあるよ。でも、日本はどこでも便利で安全で、時間に正確! 明るいところも多いから、多少遅い時間でもそこまでの心配はいらないしね。マレーシアでは、暗くなると誰も出歩かない。場所によっては危険なところもあるからね。だから学校も早く終わるんだよ。

 

アレックス:

日本語って、他に似ている言語がないでしょう? 他の言語だと、この部分がスペイン語っぽいとか、フランス語に似てるとか、自分の知識や経験に当てはめて推測することができるけど、そういうのがないからね。日本語しか書いていない標識が多いので、漢字を勉強中の私には、目的地まで行くのが大変! 初めて高校に行ったとき、「○○コウコウ、ドコ?」だけで何とかたどり着いたの。本当は同じ制服の学生たちにくっついていっただけだけど(笑)。

 

留学してよかったこと、将来の夢

アレックス
アレックス

留学したことで、日本に来る前に思い描いていたイメージは変わった?

 

グスタフ:

スウェーデンでは、いなかの町に住んでいたから、街の大きさにびっくりしたよ。とにかく何もかも巨大だね。規模がすごく大きい。日本人については「スウェーデンと似てるな」って思うこともあるんだ。でも生活をするにつれて、根本的なものの考え方はやっぱり違うかなと思う。別に悪い意味じゃなくてね。

 

アレックス:

都会は都会で似ている部分は数多いけれど、カナダのいなか町と日本のいなかが違うのはユニークだと思ったわ。日本のいなかの町って、小さいエリアにたくさんの家が集まっているでしょう? でもカナダは、1軒の家がそれぞれ広い牧場や農場を持っていて、何軒もの家が集まっているわけじゃないわ。

 

ジーンアン:

日本は自然が多いっていうイメージはそのままだったし、地方だけでなく、街にも緑が案外多かった。きれいな街並み、優しい人たちというのも想像していた通りだったんで、安心したわ。

 

アズ:

日本人は礼儀正しいと聞いていたけど、ホントに本当だった。学校の友達も、おとなしいところと高校生っぽいノリのいいところを両方持っていて、すごく元気でにぎやかだよ。遊びは遊び、勉強は勉強ってメリハリの付け方が上手だね。

 

アレックス:

遊ぶときは本気で遊ぶよね。こないだ初めてカラオケに連れて行ってもらったんだけど、7時間ぶっ通しで歌ってたよ(笑)。でも不真面目ってわけじゃなくて、勉強は勉強としてちゃんとしてる。切り替えが上手なんだろうね。

 

最後に、将来就きたい仕事、そしてその実現に今回の留学経験がどう活きるかを教えてください。

 

ジーンアン:

神経科医やセラピストといった、人を救う仕事に就きたいと思ってるの。病気や悩みに困っている人は、人種を問わずに世界中にいるわ。だから今回の留学のように、クロスカルチャー(異文化)に触れるということは継続していきたいね。

 

グスタフ:

正直にいうと将来のことはまだ考えてないんだ。決めてない。いまはたくさん勉強して、いろいろな経験を積んで、自分という人間に幅を持たせているところだよ。

 

アレックス:

エンジニアとして最先端の技術に触れていたいと考えているの。だからいまは科学を専攻しているけど、苦手なバイオロジー(生物学)もやらなくっちゃね。でも目標のためだから、楽しみながらやりたい!

 

アズ:

父親がビジネスをやっているので、いずれパートナーとなって僕も活躍するつもり。だからアカウント(会計学)やマーケティング、ネゴシエーション(折衝)といった勉強やスキルは磨いていくよ。本当は1年前に留学するはずだったんだ。ところが東日本大震災が発生して延期となり、留学先を米国に変更することもAFSから提案されたんだけど、今しかできないこと、今の日本でしか学べないことが絶対にあると考えて日本に来たんだよ。

● 映像で観る!特別座談会

海外留学生の座談会の様子をぜひご覧ください。

約1分20秒の映像です。

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