世界へ”FLY”する東大生

~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ

登阪亮哉くん(東京大学)

第6回 

休学経験者インタビュー:

世界40ヵ国以上、約300日間で回り、海外で働く人を取材し発信する旅
~生ぬるい自分を変え、同世代にいろいろな選択肢を示したい

狭間純平さんインタビュー(一橋大学3年生)


アフリカのウガンダでお会いした「ウガンダの父」と呼ばれる衣料メーカーフェニックス社 社長柏田雄一さんと
アフリカのウガンダでお会いした「ウガンダの父」と呼ばれる衣料メーカーフェニックス社 社長柏田雄一さんと
狭間純平さん
狭間純平さん

狭間純平(はざまじゅんぺい)さんは、一橋大学の3年生です。2014年9月から2015年7月末まで、休学して世界を回りながら、世界の仕事やキャリアを取材していました。僕の活動に対してアドバイスを下さる方を探していた時に、FLY Programの先輩に紹介していただきました。今まさに海外にいる狭間さんに、学生が世界を旅しながら活動することの大変さとやりがいをうかがいました(取材は2015年5月に行いました)。

旅好き。旅を広める団体も創ったが

○狭間さんは休学して何をしていますか。

「キャリア」をテーマに、バックパッカーとして世界一周をするCAREERPACKER PROJECTを行っています。


具体的に言うと、約300日間の旅で、東南アジア、北米、南米、ヨーロッパ、中東、アフリカ、南アジア、東アジアと40か国以上をまわり、起業家や駐在員などのビジネスマンや、JICAの方、フリーランスの方など、分野を限らず幅広く、海外で働く人のキャリアについて取材し、それを記事としてWEBで発信しています(※1)。
※1 CAREERPACKER PROJECT http://junpeihazama.com/

   
この世界一周プロジェクトを通して、自分のこれからのキャリアの方向性を定め、かつ同世代の人たちに新しい選択肢を提示できればと考えています。数値的な目標は、帰国までに300人の方の話を聞くことです。

 


○なぜ休学という道を選んだのですか。


自分で決めたことをやりきるために休学しました。

休学する前、僕は東京旅人会(※2)という、東京を拠点に学生などの若者に旅を広めていく団体を自分で創って運営していたり、TABIPPO(※3)という旅系のベンチャーでインターンをしたりしていました。
※2 東京旅人会 http://tokyotabibitokai.net/
※3 TABIPPO    http://tabippo.net/

東京旅人会主催の旅好き・バックパッカー大交流イベント「マイタビ」
東京旅人会主催の旅好き・バックパッカー大交流イベント「マイタビ」

建前では、好きなコトをしてイキイキしていました。しかし実際はそのどれも展望が見えず、どこか中途半端に終わってしまっていたんです。

僕は0から1を創ることは出来た。しかし、それを10、100、1000と大きくしていく力、最後まで責任を持ってやりきる覚悟がなかったんです。

建前と実際の不甲斐ない自分のギャップに大きく落ち込みました。沢山の人に迷惑をかけました。

そんな折、まるでその心境を見透かされているかのようにインターン先の社長に「もっと意志を強く持って覚悟決めて、自分の決めたことをやりきれ」と言われました。

それがある種の起爆剤になり、「こんな自分ではダメだ。生ぬるい自分を変えなければ。」と一念発起。じゃあ、かねてから学生時代に必ずしようと思っていた世界一周をまず、やりきろうと決断しました。

世界一周のスタート地点、関西国際空港にて
世界一周のスタート地点、関西国際空港にて

また、将来自分自身で事業を起こしたいという思いと、もっと同世代の人たちにいろいろな選択肢を提示できればという思いもありました。

ですから、どの道に進むかの指針を決めるためにも旅中にいろんな分野の人と話すことを決め、その経験を発信という形で同世代の学生に伝えていこうと思いCAREERPACKER PROJECTを画策しました。

つまり、世界一周プロジェクトをやりきるための時間と環境を得るために休学したんです。

 

言い訳できない環境に身を置く

○休学して一番よかったことは何ですか。


逃げられない環境に身を置けたことです。

大学生であれば大学の授業、バイト、サークル、部活、遊び。高校生であれば授業、部活、受験勉強と、日々何かしらに追われているので、他に自分の実現したいことがあってもいくらでも言い訳が出来る環境にいます。「あれをやってみたいけれど、今は勉強が忙しいので出来ない」と自分で自分に言い訳ができて、いくらでも逃げることが出来ます。

しかし、休学をすると、そういう言い訳の要素がなくなるので、強制的に自分の決断したことを逃げずにやりきるしかありません。

そして、旅でも留学でもインターンでも何でもそうですが、ある意味言い訳や放り出すことができない環境に自分を置くことで、人は格段に大きく成長することができると思います。

何よりその経験は、後に間違いなく大きな自信につながります。

そういう意味で、その環境に身を置けることが、休学をして一番良かったと思うことですね。

ミャンマーでお会いした日系コンサル会社の桂川さんとは旅中に何度も連絡し合いました。
ミャンマーでお会いした日系コンサル会社の桂川さんとは旅中に何度も連絡し合いました。

○つらいことはありましたか。


まさに今、インドのデリーにいるんですが、ちょうど体を壊してしまい、点滴を打って療養中です(笑)。

他にも、アフリカで警察に言いがかりを付けられて捕まったり、iPadやKindleを盗まれたり、ヨルダンで旅の写真を全て保存していたハードディスクが壊れたりと、旅中に辛かった経験はたくさんあります。

でも休学したことで辛いと思ったことはありませんね。

確かに周りの友達と一緒に卒業出来ないなど、休学者ならではのエピソードはありますが、それも全部含めて自分が選んだ選択です。

今はいかにその選択肢をいい方向に持っていくか、正解だったと思える決断にするかに尽力しています。

休学中も、その前もそうですが、自分の決めたことを思う存分やらせていただいているので、辛いという感情は出てこないですね。

 

「点」と「メガネ」を得た

○狭間さんが現在の活動から得ていることは何ですか。今後、それをどのように活かしていこうと思われますか。

まだ旅の途中ですが、今得ているものとしては大きく2つ。「点」と「メガネ」です。

スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で話した「点と線の話」は知っていますか。

簡単に言うと、「はじめは点にしかすぎなかった知識が、経験を経て線でつながり、創造性をもってすれば、新たなものを生み出すことができる」という趣旨のものです。

その話に当てはめれば、僕は今、線(経験)で紡ぐための点(知識)をたくさん集めている準備段階です。

イスラエルのテルアビブ大学にて。現地の大学生と10日間一緒に生活をしました。
イスラエルのテルアビブ大学にて。現地の大学生と10日間一緒に生活をしました。

世界中を回ること、そしていろいろな人に会ってその生き方、働き方を学ぶというたくさんの知識、点を通して、自分のこれからの選択肢が大きく広がっています。

帰国後にじっくりこの旅で得た知識を整理して、何が自分の生き方にいちばん合っているのかを見定めて、次のアクションにつなげます。

もう一つは「メガネ」です。今まで僕は、日本というメガネを通してしか物事を考えることができませんでした。

しかし先日、日本にいる大学の友人と帰国後のことなどについてSkypeで話したのですが、その時アフリカにいたということもあり、「これってアフリカではどうなんだろう?アフリカの中でもこの国だったら?」そんなことを自然と頭で考えて、口に出していたんですね。

この瞬間、僕はアフリカのメガネをゲットしたと思いました。

アフリカ、ケニアにいるマサイ族の青年と。彼らと話すことで「メガネ」をゲット
アフリカ、ケニアにいるマサイ族の青年と。彼らと話すことで「メガネ」をゲット

他にも東南アジア、アメリカ、ヨーロッパなど、その地域や国ベースで物事を考えられるようになりました。

僕らから下の世代は、当たり前のようにグローバルを意識せざるを得ないですから、今のうちにこの視野を持てたというのは大きいですね。

と、今の段階で2つ挙げましたが、やはり一番は世界一周という体験そのものです。帰国した時、間違いなく自分の中で大きな自信になっているし、世界一周自体が、これからの人生の中で必ず生きてくる経験になると確信しています。

 

満足するまでやりきれ

○目の前に、休学するかどうか悩んでいる人がいたとしたら、狭間さんならどう声をかけますか。

自分の興味のあることがはっきりしている人は、それが休学しなければできないことであれば、休学してやりきってください。

問題はその興味が曖昧な人、または興味のあることがない人です。

ただ、僕個人は、そういう人こそどんどん休学しちゃってもいいんじゃないかと思っています。

別にやりたいことが明確じゃなくたっていいんです。

日本は、はっきり言って休学後進国なので、やりたいことがないと休学しちゃダメ、みたいな雰囲気が漂っています。僕はそれがすごく嫌いです。というのは、やりたいことなんて、学生のうちに見つかる方が珍しいからです。そんな学生は、世界でも1%にも満たないと思います。

先日、デリー近郊のグルガオンという街で、スタートアップ(ベンチャー企業)のインド立ち上げを行っている方とお話をしたんですが、その方は元々企業の人事部で働いていたことがあったらしく、こんなことをおっしゃっていました。

「人事部で働く中で、たくさんの日本の学生に会ってきたけれど、正直そのうち4分の3くらいの学生は夢がなくて、自分に対する自信や自己肯定感が感じられなかった」

日本では、多くの人が高校の時に文理選択をして、大学に行って、勉強、部活(またはサークル)、バイトをして、そのまま就職します。そんなふうに周りと同じレールを歩む中で、自分だけの成功体験や自信を得るための経験をするのは難しいのかもしれません。

結果、その方が言われていたように自己肯定感のある学生が少なくなってしまう。

だったらやりたいことを見つけるための時間、周りと違う体験を通して自信を得る時間として、あえて休学してもいいのではないでしょうか。

海外に行くなり、人に会うなり、本を読みまくるなり。

ただ、世界一周をするにせよ、500人の人に会うにせよ、500冊の本を読むにせよ、その時忘れてはいけないのは、どんなことをするにしても、それを自分が満足するまでやりきるいうことです。

世界一周のルート。314日間で45カ国83都市を回りました。
世界一周のルート。314日間で45カ国83都市を回りました。

つづく

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