10代だって政治に参加したい。めざせ「18歳選挙権」

18歳選挙権をめぐる討論イベント参加者に聞きました


政治に興味ある?政治って自分の生活に無関係だと思う?

10代だって政治に参加したい。政治に参加して、日本の社会を変えていきたい!そんな思いを持った10代の取り組みを紹介しよう。それは、Teen's Rights Movementという団体の活動。

 

若者の政治意識の向上を目的とし、10代が活動している団体で、その第一歩として、「18歳選挙権」を当事者である10代が自らの手で実現することを目指して、シンポジウムや模擬投票などの活動を行っているのです。

 

その団体が、「18歳選挙権」をテーマにした、討論イベントを行いました(Teen's Rights Summit 2014年3月26日@参議院議員会館)。

 


参加者を趣向にあわせた6つのグループに分けそれぞれを「党」とし、6つの視点からディスカッションを行いました。党は下記の6つ。

 

成人党 / 責任教育党 / 政治教育党 / 国際党 / 法律党 / ウェブサイ党

 

今回は、それぞれの党のリーダー役を務めた高校生たちにお話しを聞きました。

 

高校生でも、社会の問題に意見を述べ、実際に行動を起こすことができる

宮地 彩華さん<成人党> (広尾学園高校3年)

●成人党とは?

 

18歳選挙権と成人の関係について考え、18歳選挙権を実現する上で18歳を成人として扱うのか否かを考える党です。

 

●成人党でまとめた、「18歳選挙権」が、《実現された時の問題点》《それに対しての解決案》を教えてください。

 

現状では日本の若者たちは自分の意見を持つのが苦手で、18歳で選挙権を与えられてもしっかりとした判断ができないのではないか。だから、自分に自信を持ち自分の意見を言える成人像を人々がめざし、それが容認される社会を作るべきであると考えました。

 

そのために、まずは「周りと同じが良いとされる」日本の雰囲気を変えるために、移民を受け入れ、交換留学を活発に行わせます。そして、小学校からの教育を根源から変え、その教育を受けた子供が親となって新しい世代を育てることによって、私たちの求める成人像を実現することができると考えました。

 

●どんなディスカッションが行われましたか?

 

成人年齢について議論する上でかならずぶち当たるのが酒とタバコに関する問題です。今回は政治参加に関することがテーマであったため、掘り下げることができませんでしたが、「酒とタバコは身体上の話なので、20歳のままで、別の法律として規制すればいいのではないか」、「18歳で酒・タバコが許可されるが高校内などで酒を飲んだりタバコを吸う生徒が出ないよう、18歳になった次の年度の4月から許可すればいいのではないか」などという意見がでました。

 

また裁判員制度に関しても意見が出ました。「18歳に人を裁くことができるのか」、「18歳が殺人事件などの捜査資料を目にすることで精神的ダメージを受けるのでは」などと議論が出ましたが、18歳から20歳の者は断ることも可能にすればいいのでは、という結論がまとまりました。

 

●他の党の解決策や意見の中で、あなたがいいなと思ったものはありますか?

 

政治教育党の意見です。学校で政治に触れ、生徒たちが政治に対して自分の意見を持つ重要性を学ぶことが、若者の政治意識や投票率を上げるためには必要不可欠だと思うからです。高校生の私自身も政治について学校で学びたいと思っています。

 

●あなたは、Teen's Rights Movementで活動されていますが、どんな思いやきっかけで始めたのですか?

 

18歳選挙権への思いはこの活動に参加する前から持っていました。原発再稼働の報道を目にした際、未来を担う若い世代に選挙権がないことを悔しく思いました。しかし、実際20歳以上の若い世代の投票率が少ないことも事実であり、その現実に対しても憤りを覚えました。そこで18歳選挙権の実現とともに、政治への興味や理解を高めるために、高校で政治教育を行い、投票の重要性を教えるべきだと考えました。しかし、女子高生の自分ひとりが思ったところで、実際にできることはないと、行動を起こすことを諦めました。

 

それからしばらくたち、友人がこの団体の活動に参加しているのをFacebookを通じて知り、自分と同じことを考え、さらに実際に行動を起こしている高校生たちがいることに衝撃を受けました。私がやりたかったことをやっている仲間たちがいるのを、とても嬉しく思い、メンバーに入れてもらいました。

 

●同世代の高校生に訴えたいことは?

 

この活動を通して、私は改めて自分の意見述べることの大切さを学びました。高校などでは、自分の意見を述べて発言する人はほとんどいないと思います。しかし、一人一人が意見を出すことでお互いの考えが深まっていくと思います。勇気がいるかもしれませんが、ぜひ自分の意見を声にして欲しいと思います。そして世の中に起こっていること、政治や様々なニュースに対して自分の意見を持って欲しいと思います。

 

●活動を通じて、得たもの、変わったことは?

 

活動を始めた頃は政治にはそれほど詳しくありませんでした。この団体で都知事選の模擬投票を行いましたが、実際に候補者を選ぶとなると、難しいことも身をもって経験しました。18歳選挙権が実現した際、自分が自信を持って投票したいという思いから政治について勉強するようになりました。

 

そして、高校生でも、世の中の疑問に思っていることに対して意見を述べ、実際に行動を起こすことができることを身をもって感じました。また、学校の枠だけにとらわれていたら絶対に出会うことのできなかった、様々な考えを持った、様々な地域から来た仲間たちと出会うことができました。

 

●将来のプランを教えてください。

 

教育や広告、出版業界に興味があります。現在は高校3年生で受験生なので、活動はしばらくお休みしますが、大学生になったらまた始めようと思っています。

 

これからの日本を背負っていくのは自分達 権利を使わないのはもったいない!

井手 康貴くん<政治教育党>(聖光学院高校[神奈川]3年)

●政治教育党とは?

 

教育現場の現状を踏まえて、日本においてどのような政治教育を行えば若者の政治的関心を高めることができるのかを具体的に考えます。

 

●政治教育党でまとめた、「18歳選挙権」が、《実現された時の問題点》そして《それに対しての解決案》を教えてください。

 

いきなり18歳選挙を始めたとしても、政策等をしっかり吟味して投票するような判断能力が足りないを思われます。そこで、18歳選挙や16歳選挙の進んでいる海外の例を参考に、小・中・高のうちから学校のカリキュラムに政治教育を取り入れる。ただし、取り入れる際は年齢に合わせて段階的に、自分の判断に対する責任を大きくしていく。取り付きやすいように、身近な話題から始める。といったアイデアを出しました。

 

●ディスカッションはどうでしたか?

 

投票率を上げることが政治の質の向上につながるのか、という議論が出ました。それに対しては、「オーストラリアのように罰金を課して投票率を上げても、適当に選ぶ人が増えるのでは」という意見が。また、政治教育を誰が教えるのかという議論には、「先生一人だと意見が偏るかも」という意見が出ました。

 

●あなたは、Teen's Rights Movementで活動されていますが、どんな思いやきっかけで始めたのですか?

 

これからの日本を背負っていくのは自分達若者なのに、その若者が政治に無関心(というより政治を身近に感じていない)ことでは、これからのことを決めていけない。また政策がお年寄り向けのものばかりなのはおかしい。みんなにもっと政治を身近に感じて学校等で話をしてみたい(今だと学校で政治の話をしているとそれだけで意識高い系等と言われてしまう)、という思いで活動を始めました!!

 

●同世代の高校生に訴えたいことは?

 

自分達の未来は自分達で決めよう! 権利を持っているのにそれを使わないのはもったいない! 政治はみんなが思っているより身近で楽しいよ!

 

●活動を通じて、得たもの、変わったことは?

 

(この団体の)東京代表として、様々な政治家の方や企業の方とお話し、メディア等に出させていただく機会も増えていく中で、政治や経済を学びたいと思うようになり、理系から文転をしました。大きな決断でしたが、自分の学びたいことを学ぶことが何よりも重要だと思っていたので迷いはありませんでした。

 

●将来のプランを教えてください。

 

大学でも若者の政治関心を高めるような活動を何かしらの形で続けて行きたいと思います。 ゆくゆくは政治家としてイギリスに倣った青年議会などの制度の整備を進めていきたいです。

 

少しずつでも政治への興味が広がっていけば日本の政治は上向く

上杉 直矢くん<法律党>(聖光学院高校[神奈川]3年)

●法律党とは?

 

18歳選挙権が実現した時、どのような問題が生じるのか、そしてどのようなルールを制定したらそれを解決できるかを考える党です。

 

●法律党でまとめた、「18歳選挙権」が、《実現された時の問題点》そして《それに対しての解決案》を教えてください。

 

18歳選挙権が実現しても、受験などで忙しいため政治に注意が向かず、投票率が低くなる、または適当に選んでしまうのではないか、という問題が挙げられました。

 

その解決案として、「高等学校卒業認定法」というものを制定します。これは、高校の卒業試験の中で、従来の各教科の試験に加え、ディベートやプレゼンテーション、小論文などの、深く論理的な思考や主張の説得力を試す試験を行う、というもので、これに合格しないと卒業することができません。また、これがあることで、学校でも思考力を訓練するような授業を展開しやすくなる、というような狙いもあります。

 

●どんなディスカッションがなされましたか?

 

現場分析の段階で、「若年層の投票率が低いから若者向けの政策が軽視され、余計に選挙に行く人が減っていってしまう、という負のスパイラルができてしまっている」という意見が出て、これはなるほど、と思いました。

 

「民主主義では国民が国の方針を決める権利があるが、逆に言うと国民が決めなければ国は動かないので、投票に行くというのは義務とも言えるのではないか」という意見が出たのですが、これはなかなか着眼点の新しい意見でユニークだな、と感じました。

 

「どうしたら投票率をあげられるか」という議論では、「前日を休日にして、候補者や公約について研究する時間を設けたらどうか」という意見が出ました。それに対して、「国民の義務を増やすのは人権問題にも繋がりかねないから、企業ごとに休む権利を与えたらどうか」という意見が出て、しかし「企業側からしたら表面的な利益が期待できないため、普及しないのではないか」といった反論も出ました。

 

●他の党の解決策や意見の中で、あなたがいいなと思ったものはありますか?

 

国際党の、世界各国の制度のいい点を真似る、という意見がいいと思いました。もちろん日本に合う、合わないはあるとは思いますが、そこを考慮して、選挙制度で今の日本よりいいと思ったものはどんどん取り入れていくべきだと思います。(昔の日本が中国からたくさんの文明を学んだように。)

 

●あなたは、Teen's Rights Movementで活動されていますが、どんな思いやきっかけで始めたのですか?

 

最初は友人に、東京都知事選挙の(10代向けの)模擬投票(イベント)の手伝いをやってみないかと誘われました。中1から、学校に閉じこもっていて、自分の世界を広げたいと思っていたので、説明会に行き、参加しました。

 

●高校生に訴えたいことは?

 

政治に関する意識が高いとはいえない現代の若年層。教育制度などの改正である程度は改善できるが、結局は個々人の意識の問題。「やっぱり自分で決めなければ!」というほどでなく、「選挙あるから仕方ないけど投票するか」くらいの心持ちでも、その心が広まっていけば、自ずとみんなが興味を持っていってくれるはず。少しずつ少しずつでも、政治に関する興味が広がっていけば日本の政治は上向いていくと信じています。

 

●活動を通じて、得たもの、感じたことは?

 

一番実感したのは、政治に興味を持っている人の少なさでした。東京都知事選挙の模擬投票のときに、舛添候補や細川候補すら知らない人がたくさんいて、こういった人々一人ひとりが、国のことに関して考えるようになるきっかけを作らなければと思いました。

 

●あなたの将来のプランを教えてください。

 

とにかく今は、自分自身が自分の目指す社会の典型になる必要があるので、政治問題にかかわらず、いろいろな行事に参加していろいろな人と知り合い、自分の世界を広げたいと思っています。将来は教員になることを目標にしているので、それまでは様々なことを勉強し、自分の経験を後世に引き継いでいけたらと思っています。

 

何も目標がなく勉強する。これほど無意義なことはない

大原 健太郎くん<国際党>(国学院久我山高校[東京]卒)

●国際党とは?

 

海外の選挙権年齢とその設定理由を比較しながら、日本においての18歳選挙権の是非について考えました。

 

●国際党でまとめた、「18歳選挙権」が、《実現された時の問題点》そして《それに対しての解決案》を教えてください。

 

選挙権年齢を18歳に引き下げても今の青年の投票の低さから見て、あまり大きな効果は見られないことがディスカッションを通してわかりました。ですから18歳選挙権を有意義なものにするにはどうしたら良いのかが論点でした。

 

国際党に有識者として参加していたNPO法人の方から、ヨーロッパの地方ではコミュニティ内で青年同士が政治についてディスカッションをしているという話を聞きました。そこで国際党では、地域内の青年と高齢者が政治についてディスカッションをする制度を提案しました。ディスカッションを通して青年の政治意識が高まり投票率が高まると考えました。また、韓国出身の参加者が韓国では選挙当日は国全体が休みとなるので選挙しやすい環境が整っているという話も聞いたのでそのシステムも国際党の解決案に組み込ませました。

 

●ディスカッションはどうでしたか?

 

最初は国際党の趣旨からズレて、議論の内容が教育に傾倒ぎみだったのですが、途中からは参加者全員が国際党の趣旨を理解の上で議論を進めることができました。参加者全員が積極的に自分の意見を述べてくれたのでとても嬉しかったです。

 

●あなたは、Teen's Rights Movementで活動されていますが、どんな思いやきっかけで始めたのですか?

 

参加したのは高3の2月、つまり受験を放棄して参加しました。ちょうどセンター試験が終わったあと、ふとしたきっかけで受験に対する思いが急に切れました。今大学に行っても何もできないような予感がしたのです。そこで前から気になっていたTeen's Rights Movementでメンバー募集をしていたので参加してみました。そういうところに一度身をおいて、勉強の意味を再確認してもう一年間受験を頑張るというてもあるのではないかという思いが当時ありました。

 

●同世代の高校生に訴えたいことは?

 

自分は今の高校生に政治についてもっと調べろとか、関心を持てとはいいません。でも、Teen's Rights Movementのような、メンバーとディベートしてイベントを企画するような団体に入ることはとても価値あるものだと思います。とりあえず部活に入って、友達と帰りスタバでたむろい、定期試験前は一夜漬けをする。ほとんどの高校生はそんな状況でしょう。そんな生活って振り返ってみると何もなかったのと等しいんです。

 

それよりも、ある目標を達成すべく、仲間とディベートし、悩み、解決策を生み出し、その先の達成感は相当たるものです。何よりも自己が磨かれるのです。そうすると、今までなんとなく過ごしてきた生活が一変します。明確な目標ができて、やりたいことが見つかり、行きたい大学が見つかる。何もやらずに受験勉強にさいなまされているのならば、一度手放してそういう団体を入るべきなんじゃないのかな、そう思います。

 

●活動を通じて、得たもの、変わったことは?

 

漫然と勉強することがなくなりました。何も目標がなく勉強する。これほど無意義なことはないと。それぞれの科目がこれから自分にどう影響してくるのか、それを考えながら勉強するようになりました。

 

そして自己を磨くことに専念するようになりました。本を読み、ディベートする能力をつけ、教養を深める。そうすることによってどんなフィールドでも活躍できるようになりたいと思っています。そしてその時々のフィールドで周囲の人をインスパイアしていきたい、その願望が強いです。

 

●将来のプランを教えてください。

 

自分は教育に関して関心が強く、いろいろ情報を集めているので、恐らくは教育関連の仕事につくと思います。でももしかしたら将来何か強い衝撃を受けて別の道を志すかもしれません。いづれの道にせよ、その分野で大きなイノベーションを起したいと考えています。

 

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