世界へ”FLY”する東大生

~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ

登阪亮哉くん(東京大学)

(2016年8月掲載)

第37回 シンガポールの幼児教育

先進的な取り組みでシンガポール政府教育省に認定されたSarada Kindergarten その1

~音楽の授業を見学

 

広くて風通しの良い園舎
広くて風通しの良い園舎

2016年の1月末に、シンガポールで、幼児教育の教育評価法に関する「Learning Story」を学ぶワークショップに参加しました<ワークショップの様子はこちらから>。そして、その後、会場であるその幼稚園Sarada Kindergartenを取材しました。

 

Sarada Kindergartenは、独立心と自信と学習への熱意を伸ばすことを重視するとともに、シンガポール人としてのアイデンティティの確立も目指しています。立地上インド系の子どもが多く通っているため、授業中に英語だけでなくタミル語が用いられることもあります。

 

先進的な取り組みを積極的に行っており、SPARKというシンガポール政府教育省による認定を受けています。また、園長はECDAフェローと呼ばれる、シンガポールで十数名しか選ばれない優れた園長に認定されています。そのため、優れた幼児教育のモデルの1つとして、国内外から先生が見学に訪れるそうです。

 

はじめに、授業を見学させていただきました。

 

まずは音楽の授業でした。音楽のための専用の教室があり、音楽専門の先生もいます。教室にはパソコンとモニターが設置されており、授業中は担任の先生がそれらを操作するなどの形で授業の進行を手伝っていました。

 

授業の最初に、一日のはじまりということで「おはようの歌」を歌いました。子どもたちはみんな元気よく大きな声で歌い、歌い終わってもはしゃいでいましたが、先生が「OK!」と手を叩くとみんな静かになって先生の話を聞きました。

 

この日は初めてピアニカに触れる授業でした。まずピアニカを手に取る前に、先生が子どもたちにピアニカの鳴る仕組みを問いかけます。

 

「ピアニカはピアノと似ているけれど、ピアノのように音が鳴るパワーの源がないよね。そのパワーはどこから来ると思う?」

すると子どもたちは手を挙げ、

「チューブ!」

と答えました。それに対して先生は、

「惜しいけど、本当にそうかな?チューブ、というより私たちの息が音を鳴らすんだよね」

と解説しました。

 

次に、ホワイトボードを用いて、音符の説明をしました。五線譜を描きましたが音程については説明せず、拍子についてのみ教えました。具体的には、全音符、二分音符、四分音符を描き、それぞれ書いたとおりのリズムで子どもたちと手を叩きました。全員ができるようになるまで何度も繰り返しました。ただ手を叩くだけでなく、二分音符を二つ並べて「これは何拍分?」などと子どもに問いかけることもしていました。

 

それらが終わると、教室に幼稚園のマネージャーで僧侶のスワーミーさんという方がいらっしゃいました。子どもたちも先生もスワーミーさんに挨拶し、特に新しく入った子どもは担任の先生がスワーミーさんに紹介していました。そして、スワーミーさんは子どもたちに声をかけ、教室から出られました。僧侶の方がとても尊敬されている様子が伺えました。

 

次に、ピアニカが子どもたちに配布されます。その際はちゃんと列を作ってから受け取るよう徹底していました。全員の手にピアニカが渡ると、先生は子どもたちにピアニカの扱いについて注意しました。

 

「みんな私を見てね。ピアニカはスクールのものだよね。じゃあ、箱の中のチューブは使っていいのかな?」

すると、子どもたちは「使えない!」と答えました。このように、問いかける形で注意をしていました。また、注意する際は先生が少し声色を変え、聞く態度ができていない子どもがいたら担任の先生が注意していました。

 

そして、個人用のチューブが配布され、まずはみんなで「ド」の音を鳴らします。この時、鍵盤を右手で押すように指示がありました。左利きの子もいましたが、「ピアノは両手で弾くものだよね。だから、右手も使えるようになろう!」と、右手を使うよう促しました。これも全員ができるまでしっかり確認していました。先生の助けのおかげでできるようになった子もいました。

 

全員がドの音を鳴らせるようになると先生は「Good job!」と言い、次にリズムに合わせて吹く練習を始めました。先ほど学んだ音符を用いて、様々なリズムを演奏しました。先生の指示なく音を鳴らしてしまう子もいましたが、Stopと言われると止めました。

 

最後に、先生が子どもたちに片付け方を教えます。それに従ってピアニカが片付けられ、授業が終わりました。

 

園庭にはたくさんの遊具が置いてあり、自然も豊か
園庭にはたくさんの遊具が置いてあり、自然も豊か

※東京大学初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/fly/

前回の記事を読む

第36回 シンガポールの幼児教育ワークショップ体験記 その4

教育評価法「Learning Story」を学ぶ ~実際に書いてみた

 

第35回 シンガポールの幼児教育ワークショップ体験記 その3

教育評価法「Learning Story」を学ぶ ~Learning Storyの書き方 

第34回 シンガポールの幼児教育ワークショップ体験記 その2

教育評価法「Learning Story」を学ぶ ~子どもの観察をどのように記録しているか

第33回 シンガポールの幼児教育ワークショップ体験記 その1

子どもの学びを客観的に記述することを通して教育の質を高める「Learning Story」を学ぶ

第32回 子どもを共に育てるチームとして、学校と親が協力することの意味 ~マレーシアの事例紹介 その2 

第31回 発展途上国の子どもたちに、実践を通した学びの機会を与えるEQLの試み  ~マレーシアの事例紹介 その1

 

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第28回 「普通の都会」の風景とアジアの文化が混在する街 inマレーシア

第27回 タイの夜の怖い体験

第26回 都市のエネルギーが圧倒的。強烈に焼き付くバンコクの匂い

 

第25回 欧米の学生の自己発信力と行動力の原点を幼児教育に見た

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[欧米の幼児教育調査まとめ]

第24回 「社会の中の自分」を意識できることを重視~ドイツの幼稚園Kindergarten Küpkersweg

第23回 ドイツの年末年始 ~様々な行事にお国柄がにじむ

第22回 キリスト教国の最大の祭りの準備~クリスマスマーケットに行ってみましたinドイツ

第21回 騒ぐことも休むことも遵法精神で~ドイツ人の「真面目さ」に触れる

 

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第19回 ニューヨークで「人種のサラダボウル」を実感

第18回 ニューヨークの幼稚園から高校までの一貫校・Riverdale Country School訪問記3

「コミュニティへの責任感」を身に付けさせることでリーダーシップを養う ~Mary Ludemann先生インタビュー

第17回 ニューヨークの幼稚園から高校までの一貫校・Riverdale Country School訪問記2

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