今をとことんLive

部活の強い公立高校の秘密を追う!

東京都立東久留米総合高等学校・サッカー部はなぜ強い?

(2013年6月掲載)


私立学校に比べて、今ひとつ弱いとされている公立高校の部活。でも、中には強い公立高校も! 強豪揃いの中で、優れた成果を出している公立高校の部活動を、高校生の特派員が取材。強さの秘密を聞いてきました。

【取材先】
東京都立東久留米総合高等学校 サッカー部
強豪校の多い東京都から、全国高等学校サッカー選手権大会に、前身の久留米高校から通算4回出場。日本代表の常連の中村憲剛選手(川崎フロンターレ)もこの学校の出身。部員数はマネージャーも合わせて約200人。A・B・C・1年の4チームに分かれ、各チームがそれぞれの目標を持って頑張っている。この取材の前月(2013年5月)には、東京都大会決勝で、強豪帝京高校をPK戦の末7-6で破って優勝している。

校内に展示される数々の優勝トロフィー
校内に展示される数々の優勝トロフィー

【取材者】

都立高校 2年生 河西浩史朗くん
国立大学附属高校 1年生 サガワ キコさん

 

取材を終えて<感想>

都立高校でも全国で戦える希望が見えた! 文武両道の精神も見習いたい

河西浩史朗くん


interview1

大事なのは、部活も勉強も「デザインできること」 

サッカー部監督 齋藤登先生

--東久留米総合高校サッカー部が強くなるまでの軌跡を聞かせてください。

東久留米総合高校は、もともと久留米高校という学校として創立し、2007年に清瀬東高校と統合した時に、今の学校名になりました。久留米高校は、サッカーで全国大会に出るほどの強豪校で、昔から強かったのですよ。でも、都内の一番上手な子が集まっているわけではありません。中学の時に上手な子は、推薦で私立高校に行ってしまうことが多いので、うちに入って来る子は、本当にこの学校に入りたくて、公立高校の入試まで頑張って勉強してくる子が多いです。

 

--他の高校にはない練習って、どんなことがあるのでしょうか?

人工芝のグラウンド
人工芝のグラウンド

設備面では、総合高校になってから作られた人工芝のグランドがありますので、練習のためにわざわざ移動する必要がありません。でも、うちの学校には定時制があるので、その生徒たちの授業のために、夕方遅くまで練習をすることはできません。本当は5時過ぎには下校しなければいけませんが、定時制の皆さんの理解を頂き、6時まで部活をやらせてもらえているので、感謝しています。

 

だから、練習時間は3時40分から6時までと、決して長くはありませんが、集中して内容の濃い練習をしています。高校サッカーの試合時間は80分間ですが、サッカーは、試合に出ている間はすべての選手が走り回り、緊張感を持たなければなりません。3時間、4時間もやったら、かえって手を抜くようになります。それでは、実際の試合で通用しません。


それから、Aチーム(レギュラーチーム)だろうと、1年生チームだろうと、1週間の中でこのグランドを使える時間や広さは、全員が同じです。その同じ条件の中で、どれだけ頑張って質の高い練習できるかが、うまくなるかどうかを決めると思います。

 

Bチームの練習
Bチームの練習
Aチームのストレッチ練習
Aチームのストレッチ練習

部員は200人を超えていて相当多いのですが、それだけ可能性を秘めた選手がいるかもしれないので、平等に育てることを大切にしています。

 

--レギュラーも、そうでない子も、同じ条件で練習って意外です。ほかに何か生徒に言っていることはあるのですか。


「人間としてちゃんとやること」が約束事なので、校則はしっかりと守ることが第一。その前に、法律やマナーを守ることも当然です。だから、あいさつもきちんとする。シャツもちゃんとズボンの中に入れる。だらしない子はいませんよ。


それから、この学校では、定期試験の1週間前から部活の練習は休みになりますが、追試になったり、宿題をきちんと出さなかったりした生徒は、2週間前から練習に出られません。それはレギュラーでも同じです。サッカー部だからと言って、特別扱いはいっさいありませんよ。

 

--レギュラーでもですか?!


そうです。レギュラーも1年生も同じです。サッカーでも何でも、うまくなるためには自分を甘やかすようではダメです。自分を向上させ、目標に向かう努力ができることが必要だと思っています。校則を守れなかったり、勉強の努力もできなかったりするような生徒では、サッカーのテクニックをあげるための練習や、戦術を理解したりするために知識を得る努力もできず、結局いい選手になれないと思います。今のAチームのキャプテンに加藤君を選んだのは、そういう点で頑張ることができる人間だからです。
 

齋藤先生からフォーメーションの指導を聞くAチームのメンバー
齋藤先生からフォーメーションの指導を聞くAチームのメンバー

--先生ご自身は、サッカーの研究はされているんですか?


はい。サッカー界でよく言われる言葉で「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない」というものがあるのですが、サッカー以外のことでも常に物事は進歩しているし、人を指導するために自分自身が成長することは、自分の義務であると思っています。サッカーの監督にはいろいろなライセンスがあるのですが、私自身、生徒たちの指導をしながら、Jリーグの監督ができるS級の資格を取りました。自分が学んだことを、生徒たちに還元するための努力をしなくてはいけないと思っています。

 

--最後に、全国の部活をしている高校生にメッセージをお願いします。

 

勉強と部活の両立ということを考えるとき、「デザインする」という言葉を大事にしてほしいです。人生のデザインです。


具体的に言うと、やることに優先順位をつけて、どんなふうにバランスを取ったらいいのか、考えることです。自分の今日1日をどのように時間を使うか。それが1週間ならどうか、1か月、1年だったらどうするかということ。未来をより良くするためにどうしたらいいかということを、いつも頭においておくことです。日課表や予定にキーワードを書いていつも意識していれば、限られた時間を有効に使い、部活や勉強の両立もできると思います。

 

--貴重なお話ありがとうございました。すごく参考になりました。

齋藤先生(中央)、河西君(左)、サガワさん(右)
齋藤先生(中央)、河西君(左)、サガワさん(右)

interview2

みんなを引っ張っていく人は、下を向いてはいけない

レギュラーチームキャプテン 加藤勇騎君

--加藤君がこの学校に入学しようと思った理由は何ですか?


2つ上の兄がこの学校に来ていたので、自分もここに来てサッカーがしたいと思ったからです。練習は、中学の時と比べたら激しいし、人数も多いので、緊張感も全く違いますね。


兄は自分を追い込むタイプではなかったのですが、自分は追い込むことで伸びる方だと思いますので、気になりません。週に2回、STという30分間の筋トレと30分間走があって、それでしっかり自分を追い込むようにしています。

 

--加藤君にとって、東久留米総合のキャプテンマーク=背番号10番はあっさり手に入ったものでしたか?


いや、頑張ったと思います。


1つ上の代が最後の大会で負けて、次の練習から齋藤先生にキャプテンをやるように言われました。正直、自分がどうして指名されたかはわからないです。でも、先生なりの期待などがあって、自分をキャプテンにしてもらったと思うので、その期待に応えたいと思います。
 

キャプテン加藤君(右)、河西君(中央)、サガワさん(左)
キャプテン加藤君(右)、河西君(中央)、サガワさん(左)

--キャプテンとしてこのチームをまとめることに対して、常に意識していることはありますか?


最初は、キャプテンという立場に戸惑って、うまくみんなをまとめることができませんでした。ただ、大会などの試合の流れが悪い時はキャプテンの責任になるので、だんだんと「このチームを引っ張っていかなくてはいけない」と自覚するようになっていきました。


ストレスとかは溜まりますけど、学年関係なしに仲が良いので、人間関係で悩んだりすることはないです。心がけているのは、なるべく下を向かないことです。みんなを引っ張っていくのに、先頭に立つ人が下を向いてはいけないと思うからです。


目標は全国に定めて、そこで勝てるようにもっていきたいと思っています。まだ自分たちは強いと思っていないですし、満足していません。もっと強くなれると思っています。


--この学校では「文武両道」を大切にしていると聞きましたが、加藤君はそれに対してどう思っていますか?


成績は、学年の中でも上位にいられるように毎日勉強しています。性格的に「他の人に負けたくない」という思いが強いので、勉強も大事にしています。

 

--勉強もサッカーも、両立させるために大切にしていることは何ですか?


切り替えです。休むときは休んで、しっかりやるときはやる。上手く切り替えることが大切だと思っています。最低でも6時間は寝るようにしていますが、毎日夜12時くらいまで勉強しています。


--将来は何になりたいと思っているんですか?


学校の先生になりたいです。指導者として、生徒にサッカーを教えたいと思っています。

 

--もし、プロの選手にならないかとスカウトされたら?


そうしたらプロになりたいと思っています。将来なにかしらサッカーに関わっていきたいと思っているので。
 

--ありがとうございました。がんばってください!

 

キャプテン加藤君(中央)、河西君(右)、サガワさん(左)
キャプテン加藤君(中央)、河西君(右)、サガワさん(左)

 

取材を終えて<感想>

都立高校でも全国で戦える希望が見えた! 文武両道の精神も見習いたい

河西浩史朗くん

2013年6月8日、僕は東久留米総合高校に取材に行きました。亀有在住の僕には着くまでには時間がかかりましたが、それ以上の価値のあるものに出会えた気がします。

 

東久留米総合高校サッカー部の取材に行きたかった理由としては二つあります。


一つ目は、なぜ都立なのに強豪校になれるのか、という単純な興味がありました。そして、もう一つ大きな理由としては、僕は野球部なのですが、強豪校の練習を見て、何か自分の部活にいかせる部分があるのではないかと思ったからです。


僕も都立高校に在学しているのですが、平日の下校時間と、入学当時の実力の2点が制約になっていると感じていました。


自分の学校も遅くても18時には下校をしなさい、と定められているのですが、東久留米総合高校も18時には下校していて、私立高校と比べて、やはり放課後の練習時間が短いようです。ということは、練習中のモチベーションが高く、時間の使い方がかなり上手なのだと思います。ただ、齋藤監督は「この練習時間はサッカーの練習では短くはない」とおっしゃっていました。高校サッカーの試合は80分なので、その間だけ全力でプレイできるような練習をすればいいからだということです。

 

また、入学当初の実力について考えると、強豪校なのに、実際には推薦で入ってくる選手はとても少ないのが現状です。東久留米総合高校の推薦があるのは1月なのに対して、私立の強豪校の推薦は数か月前の10月からです。「サッカーで生きていこう」と考えるような生徒は、早々と練習ができる私立へと進学することが多いので、東久留米総合高校には私立高校の推薦基準に入れなかった人が入学します。つまり、東久留米総合高校は、入学してから全国大会クラスの実力にまで成長させることができる指導力を持っているということです。これは本当にすごいことだと思います。個人的な感想ですが、都立高校でも、スポーツで全国クラスと戦える実力がつけられるんだと、少し希望が見えました。

 

もう一つ驚いたこととして、東久留米総合高校は勉強面でもすごいのです。私立の強豪校の場合だと、スポーツ科の生徒だからと勉強面を疎かにしていると感じることがあります。都立高校でもそういうことはあるのかなと思っていたのですが、勉強面でみても、このサッカー部のレギュラーは学年順位でも上位に入るなど、文武両道できっちりこなすことができています。僕はあまりできていないので、見習わなくてはいけないなと思いました。

 

そういった文武両道の精神から、部活の強さも分かったような気がしますし、何か人間として大切なものを教わった気がします。さらに監督の話を聞いて、野球とサッカーに対する考え方も変わったといます。

 

この取材の中で特に心に残る言葉があります。それは「デザイン」です。デザインとは、ある対象について良い構成を工夫し創作することですが、生きていくうえで自分の人生を「デザイン」することが不可欠だと、齋藤監督はおっしゃっていました。人生で考えると長すぎるので、短く考えていくと、進路のことを考えることも自分の人生をデザインしていると言えますし、なんだったら「明日は何をしようかな?」みたいなことでも、自分の人生をデザインしていることになります。齋藤監督が最後に、選手にも全国の部活をしている高校生にも、このことを大事にしてほしいと仰っていた姿がとてもかっこよく見えました。またお話しできる機会があれば嬉しいなと思います。

 

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