遺伝子調査で解き明かす トウキョウサンショウウオのルーツ!


【生物/ポスター部門】千葉県立市原八幡高等学校 理科部

(2015年7月取材)

左から 石坂南実さん(3年)、江澤亜梨沙さん(3年)、武川茉由さん(3年)
左から 石坂南実さん(3年)、江澤亜梨沙さん(3年)、武川茉由さん(3年)

◆部員数 12人(うち1年生4人・2年生4人・3年生4人)
◆書いてくれた人 江澤亜梨沙さん(3年)


■研究内容「村田川のトウキョウサンショウウオ個体群のルーツを探る」

村田川は千葉県中央部の下総台地の南部を東京湾に向かって流れる河川で、約20kmの本流と3つの支流があります。市原八幡高校はその河口約2kmのところに位置しています。

村田川の生物を調べているうちに、トウキョウサンショウウオの産卵地が少なく上流にわずかしか生息していないのに、千葉県南部の房総丘陵では広く分布していることがわかりました。その理由として、村田川に隣接する一宮川や養老川などの多数生息している地域から分布を拡大してきたのではないかと考え、3年前から分布調査とDNA解析を実施。それぞれの個体群の比較を行っています。


[採集と解析]
村田川の上流域(A東急脇、C大沢、E長柄山)と分水界を隔てた隣接する河川の上流(B萱野、D上太田、F刑部)の6か所から96個体分の卵を採集し、孵化前後に99%エタノールで固定しました。さらに今年は、調査範囲を広げて、養老川や真亀川の流域も調べ、合計142個体を比較しました。

 

DNA解析は「かずさDNA研究所」にて実施しました。
1.DNA抽出
2.PCR法によるDNA増幅
3.電気泳動によるDNAの確認
4.DNAの塩基配列を読み取る
5.DNA塩基配列のアセンブリング

[考察]
ミトコンドリアDNA803塩基を比較したところ8カ所に変異が見られ、8つのハプロタイプ(※)が見つかりました。産卵地ごとに見られるタイプの割合を円グラフに表しました。
※ハプロタイプ:DNA塩基配列の変異のタイプ

ハプロタイプの割合において、隣接する産卵地どうしに強い関連性が見られました。すなわち、村田川の上流域(A、C、E)と分水界を隔てた隣接する河川の上流(B、D、F)の6か所を比較すると、A東急脇とB萱野ではIが7割を占め、Vが次に多く、VIとVIIは見つかりません。C大沢とD上太田はIが5割、他にもV、VI、VIIが見つかっています。そしてE長柄山とF刑部にはIが8割を占め、他にVIIとVIIIがいます。つまり、村田川の3つの個体群どうしの類似性よりも、おのおのの産卵地に距離が近い隣接河川の個体群との割合が似ています。

このことにより、私たちの仮説を支持する有力な結果が得られたと考えています。さらに、私たちが見つけた8つのタイプを京都大学のデータとともに系統図に表すと下のようになり、村田川流域においては、房総丘陵に多いタイプVからタイプIが分化してきたことが予想されます。

京都大学のデータ30個体と私たちの8タイプ(142個体分)を合わせた系統樹
京都大学のデータ30個体と私たちの8タイプ(142個体分)を合わせた系統樹

■研究を始めた理由・経緯は?

私たち理科部は校舎屋上緑化を始め、校内環境の整備を活動の中心にしています。さらに、この4、5年は学校近くの村田川の生物を調べ始めました。その中でトウキョウサンショウウオは上流にわずかしか生息していないのに千葉県南部の房総丘陵では広く分布していることを知り、分布調査と遺伝子解析でその理由を明らかにしようと思いました。

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

分布調査は2011年から始めて、毎年3~5月の産卵~幼生の期間に行っています。またDNA解析は2012年から大学や研究機関に出かけて行っています。

■今回の研究で苦労したことは?

分布域の一番端を調査地としているため産卵地が少なく、さらに1か所で10以上の産卵した卵を採取しないと個体群の調査にならないため、1日中卵のうを探し回っても必要な数が見つからない日があったりして、大変でした。

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

希少種を守るため卵のうから1,2個をサンプリングして他は産卵地に残すようにしました。96匹分のDNAのアセンブリングを自分たちで1匹ずつ行いましたが、微妙な個所も多かったので、DNA研究所の先生に見てもらって、ほぼ正しいことを確かめていただきました。

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?

1)吉澤賢治 他:トウキョウサンショウウオのミトコンドリアDNA遺伝子解析、東京学芸大学紀要 4 部門 56pp.97~100,2004
2)小賀野大一 他 :房総半島におけるトウキョウサンショウウオの生息域と特徴、両棲類誌18 ,2008

■次はどのようなことを目指していきますか?

調査地を千葉県の広い範囲に拡大していくと、DNA分析ミトコンドリアDNAのD-loop領域では新しい塩基変異が次々に見つかることがわかり、今後は千葉県の房総丘陵の成り立ちなど地史的な観点からの分析も加えていかなければならないと思います。

■ふだんの活動では何をしていますか?

村田川のスナヤツメ、アカハライモリなどの分布や生息状況の月例調査をしています。また、校舎屋上緑化と中庭の研究は10年来のメインテーマです。その他、校舎の野鳥、モーターの起動トルクの研究など、一人1つのテーマを持って活動しています。

■総文祭に参加して

他の学校の発表を聞いて、ポスターや発表に工夫がされており、興味深い発表がたくさんありました。そして先生方にはアドバイスをたくさんいただいたので、それを生かして研究を続けていきたいと思います。



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