原点は中学校の部活。ピンポン玉の回転数とはね返り方の関係を解き明かす

【物理】埼玉県立越谷北高等学校 物理同好会

石﨏新太くん(3年)
石﨏新太くん(3年)

◆部員数 7人(うち2年生5人・3年生2人)
◆書いてくれた人 石﨏(いしざこ)新太くん(3年)


■研究内容「回転するボールのはね返り方」

ピンポン玉を自由落下させる時、そのまま落とすのと回転をかけながら落とすのでは、跳ね返った後の動きが著しく変わります。このことからピンポン玉の回転運動が、跳ね返った後のボールの運動に何らかの影響を及ぼしていると考えられます。そこで、回転数の異なるボールを同じ高さから落下させ、落下した後のボールの運動が回転数によってどれくらい変わるのかを調べました。

 

(1)実験
ピンポン玉を50㎝の高さから自由落下させ、1回目と2回目の接地の間にかかった時間と動いた距離から、ピンポン玉が跳ね返った後の横(地面に水平)成分の速度が計算できます。


これを、1秒間に10回転しているボールから5回刻みに50回転しているボールまで実験し、得たデータを箱ひげ図にまとめました。また、外部から力を加えずに回転させながらボールを落とす装置を、左右対称に開くコルクスクリューとモーターを利用して自作しました。


(2)理論
力積、力のモーメント、慣性モーメントの公式を組み合わせ、計算を行いました。

その結果、ピンポン玉の落下後の速度

という式を導きました(rはピンポン玉の半径、π(パイ)は円周率、nはピンポン玉の回転数)。

 

また、衝突後の回転数は、衝突前の回転数の2/5倍であることも同じ計算から導出できました。これらから、衝突後のピンポン玉の運動は、ピンポン玉の半径と回転数のみに依存していることがわかりました。

この結果を先ほどの実験のデータと照らし合わせてみると、回転数の低い部分ではほぼ一致することを確かめることができました。

 

したがって、回転数の低い範囲では、回転した物体が衝突した時の速度は回転数に比例している、つまり物体の回転数とそれが生み出す摩擦力は比例していると考えられます。


また衝突時に滑らないものとすると、ピンポン玉の衝突後の回転数は、衝突前の回転数の2/5倍となります。しかし回転数が大きい部分では比例からずれが生じます。これは衝突時にボールが滑り、動摩擦力が働くためではないかと考えました。


今後の課題としてこれを確かめたいと思います。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

中学生の時に、卓球部に所属していました。その練習のときに、回転がかかったボールとかかっていないボールで、ラケットに当たった後の運動が大きく違うのを見て、「どうして動きが違うのか」「どのくらいの回転をかけるとどのくらい運動に差があるのか」が気になりました。

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

高校1年生の2学期(2013年9月)から。1日1-2時間で1年半(秋冬のみなので実質1年間)です。

■今回の研究で苦労したことは?

「回転をかけ」「初速度0で」「まっすぐ落下」させることに苦労しました。これをクリアした落下装置は3基目でした。

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

どんなに良い研究も伝わらなければ意味がないので、専門用語を省き、できるだけ説明を丁寧にしました。実験装置は開発に4か月を費やした自信作です。

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?


『工学系物理の基礎(これでわかった! シリーズ)』正宗賢(技術評論社)
『高等学校物理基礎』(第一学習社)
「よくわかる慣性モーメント」http://kagennotuki.sakura.ne.jp/moi/

■次はどのようなことを目指していきますか?

大学に入っても、摩擦学(トライボロジー)の研究に携わりたいです。

■ふだんの活動では何をしていますか?

春―物理チャレンジ用グループの研究や勉強
夏―文化祭に向けたピタゴラ装置製作
秋冬―個人研究

■総文祭に参加して

全国ということもあり、レベルの高い研究を見られました。大学の装置を借りて、研究しているグループや社会への実用化を考えて研究しているグループなどもあり、大きな刺激を受けました。

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