量子力学っておもしろい! 高校生にも見える&できる「量子消しゴム実験」の現象解明に挑戦!!

【物理】宮城県仙台第二高等学校 物理部

左から舩山怜さん(2年)、石崎梨理さん(3年)、渥美拓土さん(2年)
左から舩山怜さん(2年)、石崎梨理さん(3年)、渥美拓土さん(2年)

◆部員数 38人(うち1年生13人・2年生16人・3年生9人)
◆書いてくれた人 石崎梨理さん(3年)

 

■研究内容「量子消しゴム実験における、偏光板と干渉縞の関係」

量子力学は、原子や素粒子などといったミクロな世界を支配する自然法則のことで、日常生活からは想像もできないような世界の姿を見せてくれます。そのような量子力学的な現象を目に見えるほどマクロな世界でも体感できるという「量子消しゴム実験」という実験に、私は興味を持ちました。そこで、この再現実験を行い、挿入する偏光板の角度と干渉縞の関係を考察することにしました。

 

量子消しゴム実験について簡単に説明します。まずスクリーンに向かって光を照射し、間にスリットを挟みます。すると光はスリットの両側を同時に通ります。ここでの光は波としてふるまい、両側からの波がスクリーン上の場所によっては強めあったり弱めあったりするので、「干渉縞」という縞模様が現れます。

ここでスリットの両側に互いに90°の角度の偏光板を設置すると、スリットの両側からの光は振動方向が全く異なるものとなります。つまりその振動方向によって、スリットのどちらを通過したか確定できるようになります。経路が確定できるようになることで、光の波動性が失われます。したがって、粒子としてふるまう光はまっすぐに進み、干渉縞は消えます。

この実験のおもしろいところは、観測していなくても、観測すれば光の経路が確定できる状態にするだけで光の波動性が失われることが巨視的に観察できるところです。

 

さらに両偏光板に対して45°の角度の偏光板をスリットの奥に設置すると、光子の経路情報が失われてしまうので光の波動性が復活し、干渉縞が再び現れます。この時に、3つ目の偏光板が経路情報を消す、「消しゴム」のような役割を果たすので「量子消しゴム実験」と呼ばれるのです。



今回の再現実験では、光源に波長が650nmで45°偏光の赤色レーザーポインター、スリットに0.2㎜のシャープペンシルの芯を使い、3つ目の偏光板の角度を調節できるようにしました。

以下が実験結果です。
まずスクリーンとレーザーポインターを設置し、間にスリットを挿入します。この時のスクリーンの様子です。確かに干渉縞がスクリーンに現れました。

 

次に互いに直角である偏光板をスリットの両側に挿入しました。すると干渉縞は消えました。


最後に両偏光板に対して45°の3つ目の偏光板を挿入しました。干渉縞はまた現れました。



これによって再現実験が成功したので、次の実験に移りました。


この実験では、3つ目の偏光板の角度θを変えることで、干渉縞がどのように変化するのか観察しました。


横偏光板がスリットの左で縦偏光板がスリットの右であるとき、最も明るい点の位置はθ=0°のとき左端となり、右端となる90°までは右方向に移動しました。また、そこから180°までは左方向に移動しました。

 

そこで私は、0°から90°と、90°から180°でそれぞれの中間値、θ=45°、θ=135°の時はスクリーン上の位相が一致すると仮説を立てました。

 

しかし、予想に反して、2つの角度の写真を比べると明るい箇所と暗い箇所が逆転している、すなわち逆位相になっていました。そこでθ=30°とθ=150°、θ=60°とθ=120°など、足して180°になる組み合わせを試しましたが、やはり逆位相となっていました。

 

まず、θ=0°とθ=180°の時はスリットの左にある横偏光板を通った光のみが通過できるので、スクリーンの左寄りに最明点が写ります。θ=90°の時も同様にして右寄りになると考えられます。

 

 

ここで、なぜ3つ目の偏光板の角度がθ=45°と135°の時逆位相になるのか考察してみました。

まず、横偏光板を通過した光の変位が右方向に1、縦偏光板の光が上方向に1だとします。この2つの光が縦偏光板より反時計回りに45°傾けた偏光板(\)を通過するとします。このとき光の変位をベクトル分解すると、右方向に変位1の光は、右下(↘)と右上(↗)に変位1/√2の光となります。


同じように上方向に1の変位の光は左上(↖)と右上(↗)に1/√2の変位の光に分解できます。このとき3つ目の偏光板を通過できるのは、右下(↘)と左上(↖)の変位の光だけです。この2つの光は打ち消し合い、暗点となります

反対に、3つ目の偏光板が135°のとき(/)に、同じく右に1、上に1の変位の光が通過すると、変位がそれぞれ右上(↗)に1/√2と右上(↗)に1/√2の光となります。つまり2つの光は強めあい、明点となります。これはθ=30°と150°、θ=60°と120°など、和が180°になる他の組み合わせにも当てはまります。

 

結論です。
光の経路情報の確定と干渉縞が現れることは同時に発生しません。また、3つ目の偏光板を回転させるとθ=0°、180°と90°を両端として左右に移動し、その方向はθ=90°で切り替わります。また和が180°となる2つの角度では干渉縞が逆位相になります。

なお今回の実験では干渉縞の間隔が不十分だったので、θの変化に合わせた最明点の移動の詳細が測定できませんでした。今後は、装置の改良によって最明点の移動の法則を解明してみたいと思います。


■研究を始めた理由・経緯は?

量子力学に関心があり、高校生でもできる実験を探した結果、「量子消しゴム」を見つけました。

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

1日あたり3時間で6か月程度です。

■今回の研究で苦労したことは?

最明点の移動はごくわずかな距離であるため、観察しにくかったこと。偏光板がズレると干渉稿ができないため、立体顕微鏡を用いるなどして対応しました。

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

細かな移動が目でみてきれいにわかる実験の正確さ、考察・実験をくり返し検証していった点です。何よりも実験そのもののおもしろさを見ていただきたいです!

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?

・『日経サイエンス 別冊161』「不思議な量子をあやつる」
・Observation of Geometric Phases in Quantum Erasers
  http://arxiv.org/pdf/0907.2289.pdf

■次はどのようなことを目指していきますか?

後輩に引き継ぎたいと考えています。今回解消できなかった課題である、移動の数値化を目標としてほしいです。

■ふだんの活動では何をしていますか?

グループ(または個人)ごとに様々な研究(ex. イスタンブールのお盆(※))を行っており、宮城県高校生理科研究発表会に参加しています。7月には、東北大学で行われる「サイエンス・デイ」にも参加します。また、年に4回ほど、ホログラフィ作成合宿を行っています。
※コップに入れた水を運ぶのに、「振り子式のお盆」を使うと、お盆を揺らしても水がこぼれない。

■総文祭に参加して

量子力学のおもしろさを高校生に広めたいという目的もあったので、多くの人たちが隙間時間に質問しに来てくださったのが嬉しかったです。特に「量子力学は知らなかったけど、説明がわかりやすくておもしろい学問なのだと思った」と言ってくださった方があり、本当に嬉しかったです。賞をとれなかったのは悔しかったけど、それ以上に楽しかったです。

 

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