小さなトンボの生きる力、戦略に迫る! 

【生物】島根県立浜田高等学校 自然科学部

(2015年7月取材)

前列左から川中美沙さん(2年)、佐々木春奈さん(3年) 後列左から大崎健志郎くん(1年)、渡部慶一郎くんくん(1年)
前列左から川中美沙さん(2年)、佐々木春奈さん(3年) 後列左から大崎健志郎くん(1年)、渡部慶一郎くんくん(1年)

◆部員数 7人(うち2年生5人・3年生1人)
◆書いてくれた人 川中美沙さん(2年)

■発表内容「ハッチョウトンボの生体調査Ⅱ~秘めたる力、生き残りを懸けた戦略~」

日本一大きなトンボはオニヤンマ。では日本一小さなトンボは何でしょう? 答えはハッチョウトンボです。


学校の近くに生息しているハッチョウトンボは一円玉に収まる程度の大きさしかなく、体重も0.02グラムしかない、日本一小さなトンボです。このトンボは生息できる環境が限られているので、多くの県で絶滅危惧種とされています。


ハッチョウトンボは普通のトンボと違い、動きが緩慢で、飛翔能力も低く、飛びあがってもすぐに草に降りてとまり、手で捕まえることもできます。このトンボに愛着を感じた私たちは、もっとよく知りたいと思い、出現期間と生存期間と移動距離の3つに焦点を当てて生態調査を始めました。


 

調査方法としては、標識再捕法という方法をとりました。はじめに調査区画を決め、調査区画と番号を羽に書いて標識をつけたハッチョウトンボを放ち、数日後に捕獲して得たデータを使って生態を調べるという手法です。


調査結果が下表の通りです。出現ピークは6月中旬から下旬、最大生存日数は43日で、最大移動距離は472mでした。また、調査の途中で、調査地から山を隔てた休耕田にもハッチョウトンボが生息していることが明らかになりました。周りから隔離された環境にハッチョウトンボがいることを不思議に思いました。そこで、私たちはそのトンボがどこからやってきたのかを調べることにしました。

調査の結果、休耕田に住むハッチョウトンボは調査地から、標高差60m、直線距離400mの山を一気に越えて移動してきたことが明らかになりました。また、休耕地に住むトンボも山を越えて調査地に移動していることもわかりました。手で捕まえることができるぐらい飛翔能力の低いハッチョウトンボが、どうやって山を越えているのか、疑問を持った私たちはこのトンボがどのようにして山を越えるのかを調べました。

人工的に上昇気流を作り出してトンボに当てる実験や、いろいろな方向から風を当てる実験をしました。下からの風や横からの風に反応して飛翔行動をとることが確認されました。

その結果私たちは、ハッチョウトンボは晴天下で暖められた空気(上昇気流)と、横からの突然の風が、ハッチョウトンボの内的欲求と相まって作用することで飛翔行動を起こすと推測します。

上昇気流を再現する装置
上昇気流を再現する装置


ハッチョウトンボは普通のトンボと比べても軽量で、羽の幅が広いので自分の力ではなく、風を利用して飛ぶように進化したのだと考えています。


以上が、私たちが考えた、ハッチョウトンボの生き残りをかけた戦略です。今後は環境DNA調査による生息地域操作と、遺伝子分析による系統解析を行っていきたいと思います。


■研究を始めた理由・経緯は?

学校からそう遠くないところに、貴重なハッチョウトンボがいることを知りました。観察をして、その色と小さく可憐なようすに愛着を感じたので、これを地域の宝として保護して存続させたいという思いから生態調査を始めました。

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

生態調査は、4月~9月にかけて、1日あたり1~3時間程度。3年間調査しました。

■今回の研究で苦労したことは?

1回の調査に、個体数の多いピーク時には放課後3時間近くかけて丁寧に調査を行ったこと。山中にトンボがいないことを確認しようと、獣道(けものみち)すらない山中に分け入り、踏破したこと。


■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

トンボの飛翔能力を確認するためにフライトミルという装置を作ったのですが、ハッチョウトンボは体重が0.02gほどしかなく、しかも個体によって微妙に体重が異なるため、バランスをとる際にセロテープの重さで調節するのがたいへんでした。


■次はどのようなことを目指していきますか?

ハッチョウトンボは、年々個体数が減少しているようです。個体数の年推移調査を中心に、生態調査を継続し、減少の主たる原因について調べたいと思います。

また、環境DNA(※)を調べることで、県内のハッチョウトンボ生息場所を特定して、「生息マップ」を作成し、生息地の一部をハッチョウトンボ保護区とし、地域の小学校やNGO、行政と協力して保護地の生息最適環境を確立することで保護活動を実施したいと思います。

※川や池などの水を分析して、そこに、どのような生き物が生息するのかを調べる方法

■ふだんの活動では何をしていますか?

日頃は、ウーパールーはじめ生き物の飼育と観察をしています。共同研究以外に、個人研究にも取り組んでいます。


その他、学園祭での展示・口頭発表、地元の公民館のお祭りで、年2回子どもたち対象にサイエンスショーと科学おもちゃづくりを実施しています。今年は、ハッチョウトンボ生息地の小学校に行き、このトンボについて説明した後、地域の環境の素晴らしさについて一緒に話し合いました。

■総文祭に参加して

多くの高校生の発表を聞いて「負けていられない!!」と思いました。来年も全国高総文祭に出場して、入賞したいと思いました。

 

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