ダイコンの部位による辛味の違いは、酸化ストレス回避の戦略だった!

【生物/ポスター部門】群馬県立前橋女子高等学校 MJラボ

(2015年7月取材)

村岡怜奈さん(3年)
村岡怜奈さん(3年)

◆部員数 15人 (うち1年生8人・2年生3人・3年生4人)

■研究内容「ダイコンの部位による違い~カタラーゼ活性と辛味成分~」

豚の肝臓を過酸化水素水に入れると酸素が発生します。これは、細胞小器官であるペルオキシソームに多く含まれる酵素のカタラーゼのはたらきで、過酸化水素を分解して酸素と水に変えるからです。カタラーゼはアルコールを分解する際に必要とされるため、肝臓に多く含まれますが、植物にも含まれています。

過酸化水素は活性酸素の一種で、活性酸素とは呼吸や代謝によって発生しますが、この酸化ストレスが細胞の老化や病気の原因になります。このストレスを回避するために、人間や植物は酵素などの抗酸化物質で活性酸素を除去するのです。


この研究では、入手しやすいダイコンを使って、カタラーゼの活性と他の生命活動との関係、そして、ダイコン酸化ストレスの回避戦略の解明をめざしました。

 

調べたのは、(1)カタラーゼ活性、(2)呼吸量、(3)辛味成分、(4)ビタミンC、(5)デンプンの5つです。


また、全ての実験においてダイコンを図のA~Eの5つの部位に分けて実験を行いました。Aを最上部、Eを最下部としました。

実験1.カタラーゼ活性


すりおろしたダイコンを過酸化水素水に入れ、発生した酸素量を調べました。カタラーゼは全ての部位に含まれますが、発生した酸素量から、上の部位ほどカタラーゼの活性が高いことがわかりました。

 

実験2.呼吸量


ダイコンを袋に入れ、25℃の暗所で24時間放置し、その前後のCO2・02の濃度を調べました。呼吸量は部位による違いがあり、上位の部分から順に大きく、最下部(E)とそのすぐ上(D)はほとんど変わりませんでした。

 

実験3.辛味成分(イソチオシアネート)
実験4.ビタミンC
実験5.デンプン


辛味成分は下の部位ほど多く、ビタミンCは下の部位ほど少なく、デンプン量はAからDがほぼ同じでEが多いことがわかりました。


実験1でカタラーゼの活性は上部ほど大きいことが示されましたが、これと同様の傾向を示したのが呼吸量(実験2)とビタミンC(実験4)、カタラーゼ活性とは異なる傾向を示したのが辛味成分(実験3)とデンプン(実験5)です。


また、根の上部(D)と最下部(E)の呼吸量はほぼ等しいのに対して、カタラーゼの活性は最下部(E)でかなり低くなっていました。

 

ダイコンのカタラーゼ活性には、部位によって違いが見られましたが、カタラーゼ活性と呼吸量に相関が見られたことから、カタラーゼは呼吸などダイコンの異化に関わっていることが示されました。


一方、デンプンや辛味成分の合成という同化のはたらきとカタラーゼは関係していないと考えられます。

また、根の最下部では呼吸量に対してカタラーゼの活性がたいへん低いので、カタラーゼに代わる抗酸化物質が存在すると考えられます。今回調べた中で、辛味成分のイソチオシアネートはカタラーゼが少ない部位ほど多く含まれていたので、カタラーゼに代わる抗酸化物質である可能性が考えられます。


これらのことから、植物はカタラーゼなどの酵素と、その他の抗酸化物質を併用することで酸化ストレスを回避し、病気や老化を防いでいると考えられます。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

ダイコンの辛さが部位によって異なることの興味を持ち、ダイコンの部位による違いを調べるために実験を行いました。また、ダイコンに含まれるカタラーゼが活性酸素である過酸化水素を分解することを知り、ダイコンがどのように活性酸素の酸化的ストレスを回避しているかを実験結果から考察しました。

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

1日2時間で1年程度です。

■今回の研究で苦労したことは?

何度も実験を重ね、結果を得るのに苦労しました。特に辛味成分の量を測定する実験では、1回の実験に1時間以上かかるのでたいへんでした。

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?

・「大根中の辛味成分の比色定量法」江崎秀男 小野崎博通(『栄養と食糧』vol.33(1980)No.3 P.161-167)
・「ウンシュウミカンの栄養診断のためのヨウ素比色法によるデンプン簡易測定法」
 杉山泰之 大城晃(『日本土壌肥科学雑誌』 第72巻第1号(2001)P.81-84) 
・『活性酸素の話-病気や老化とどうかかわるか』永田親義(講談社ブルーバックス)
・『細胞の分子生物学 第5版』Bruce Alberts他(ニュートンプレス)
・『活性酸素・フリーラジカルのすべて』吉川敏一、河野雅弘、野原一子(丸善出版)

■次はどのようなことを目指していきますか?

ダイコン以外の食品に関する研究をしてみたいと思います。

■総文祭に参加して

全国各地の様々な研究を見ることができて、とても勉強になりました。全国大会に参加するのは初めてのことだったのでとても緊張しましたが、充実した時間を過ごすことができました。興味深い研究テーマや、模型を使ったわかりやすい発表などがあり、たいへん参考になりました。また、発表を通してたくさんのアドバイスを頂き、私の考えの幅も広がったと思います。巡検研修では、他校の高校生とコミュニケーションをとることができ、楽しかったです。この経験を今後に生かし、役立てていきたいと思います。


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