留学フェローシップのサマーキャンプ 参加者インタビュー

■プログラムを通して「知らなかった自分」が見えてきた!

フェロー(参加者) 津山家野くん(東京都立井草高校3年)、山本つぼみさん(大阪府立箕面高校3年)

——お二人はなぜ海外進学を考えているのですか。

山本さん:私は海外経験がなく、将来外国の方と関わる機会が増えると思うので、大人になるまでに海外での経験を積みたいと考えています。また、日本の大学にいると、刺激がとても少なくインターンシップなどの機会も限られていると思います。そこで、海外大学に進学したいと考えました。

 

津山くん:僕は南アフリカで生まれ、小学6年生のときに日本に来ました。しかし、日本の文化が自分に合わず、長い間不満を抱えていました。自分の生まれた国にいる友達にアメリカ人が多く、彼らは個性やユニークさをとても大切にしており、そのような文化が僕は好きでした。そこで、アメリカの大学に進学することが自分に合っていると思いました。

 

——このイベントに参加しようと思ったきっかけは何ですか。

山本さん:私は、自分の思いなどを言葉にするエッセイを書くのがとても苦手なため、それを克服するために、今回のサマーキャンプに参加しました。また、私は大阪の公立高校なのですが、そこでは海外進学を希望する人がとても少なく、海外進学に関する情報がほとんどありません。そこで、サマーキャンプで情報やコネクションを得たいと思ったことも理由の1つです。

 

津山くん:僕も、コミュニケーションは得意なのですが、文章にすることがとても苦手で、エッセイの書き方を学びたいと考えていました。また、海外に進学する人たちの中にはとてもユニークな人が多いです。そういう人たちの経験やアドバイスを聞き、意見をシェアしたいと思って、今回のサマーキャンプに参加しました。

 

——イベントを通じて自分が変わったと思うことや、得ることができたものは何ですか。

山本さん:昨日行ったプログラムの中にソクラテスの「問答法」を用いたプログラムがありました。その中で、相手の質問に答えているうちに、自分の知らない自分が見えてきて、それがとても新鮮でした。また、先輩が海外大学を受験する際に書いたエッセイを教えてもらい、とても参考になりました。

 

津山くん:僕は『ファミリー』のメンバーから多くのアドバイスをもらい、エッセイを書くことがとても楽になりました。また、このように留学生や留学を目指す人たちの多い環境がとても好きなので、気が楽になりました。そして何より、ユニークな留学生の方たちと話す中で、大学に入るための知識と、将来に役立つ知識が得られました。

 

——「ミッケ!」のプログラムで考えた『大切なもの』は何にしましたか。

津山くん:僕は今着けている腕時計にしました。この時計は家族や友人からもらったなどではないのですが、この時計を見たときに一目惚れして、また大好きな俳優やキャラクターがつけているものであるという理由で買ったものです。自分でもくだらない理由だと思うのですが、それを自分を表すための文章にするのがとても楽しかったです。

 

山本さん:私は、高校のダス部でいつも履いていたダンスシューズにしました。そのシューズは、ダンスをするために欠かせないもので、コンテストで勝ったりイベントに参加したりした思い出が詰まっている相棒のような存在です。ただ、その大切さを説明して文章にするのが難しかったです。

 

——最後に、将来の夢を教えてください。

津山くん:僕は、起業することが夢です。現在起業がブームになっていますが、99%の人は失敗すると言われています。でもその中でチャレンジしたいし、一番になる自信があります。また、僕は過去にバイトした際に、他人の下では働けない人間だと感じたので、自分が上に立って下の人が暮らしやすい環境を作りたいと思いました。僕が尊敬する会社を起業した人たちがアメリカにたくさんいるため、そのような人たちに会い、その環境を感じるためにアメリカに行きたいと考えています。

 

山本さん:私もビジネスに興味があり、同時に発展途上国の貧困問題などにも興味があるため、私は発展途上国を開発するソーシャルビジネスに関わろうと思っています。そこで、経済の中心であり、イノベーションが生まれやすい、アクティブな環境であるアメリカへ留学し、刺激を受けたいと考えています。

 

■海外進学に必要なのは、「転んだあとに起き上がる力」

メンター 久保田しおんさん(マウント・ホリヨーク大学/Mount Holyoke College1年)

――なぜ今回のイベントに参加したので

 

私は2年前、高校3年の時に、フェローとして初めてサマーキャンプに参加しました。その際、留学に関する情報がとても少なく、受験の方法すらよく知らなかった私を救ってくださったのが、メンターの方たちでした。そんなメンターの方たちに感謝し、憧れていたため、私と同じように留学の仕方がわからなくて困っている高校生たちを助けたいと思って、昨年メンターを務めました。

 

今年も参加した理由は、一つは去年のサマーキャンプがとても楽しかったからです。また、去年はギャップターム生として参加していて、まだ大学には行っていなかったため、海外大学について実際に知っているわけではなかったのです。そのため、無知なままいろいろな話をしてしまったことを後悔して、今年は実体験に基づいた正しい情報を提供したいと思い、メンターとして再び参加しました。

 

――久保田さんが感じた日本と海外の大学の最大の違いを教えてください。

 

日本に帰ってきて友達と喋ったときに、話題の内容が違うと感じました。海外の大学に通っている友達と話すと、大学内で起きていることや勉強していることに話題のフォーカスを当てているのに対して、日本の大学に通っている友達と話すと、バイトやサークルのことなど、大学外での出来事にフォーカスを当てられていることが多いです。

 

また、日本の就活では、自分の礼儀正しさや受け身の姿勢の中での美しさで企業と対話している印象を受けるのですが、ボストンキャリアフォーラム(※)などの海外の就職イベントでは、自分が勉強してきたことや取り組んできたことをいかに企業にアピールすることが重視されているように感じられます。

 

※10月中旬もしくは11月中旬にボストンで3日間開催される日英バイリンガル向けの就職イベント

 

――海外大学に進学するために最も必要なことは何だと思いますか。

 

「転んだあとに起き上がる力」だと思います。もちろん学力や成績などの表面的な面も大事だとは思いますが、そもそも留学に必要な情報が少ないので、まず様々な活動を一か八かで試してみなければなりません。その際に、失敗や後悔は多く出てきますが、それで立ち止まっていると間に合わなくなるくらい、いろいろなことを同時進行しなければならないのが、海外留学のアプリケーションです。ダメだと思っても次に進まなければ、ただの時間の無駄になってしまいます。例えば、エッセイを書くと自分の悪い面が見えてしまうこともありますが、落ち込んでいる暇はなく、自分をドライブし続けるパワーが必要になります。そのために、持久力とパワーと向上心を持っていなければ厳しいと思います。

 

――自己分析の手法として最も有用な方法は何ですか。

 

私がお勧めするのは、「他人が反応した自分の動作を忘れず、きちんと考え直す」という手法です。

 

例えば、私は高校時代、友達に「なんでそんなにいつも鞄がパンパンなの?」と驚かれたことがあります。実際に鞄の中身をじっくり確認してみると要らないものがたくさん入っていました。なぜそのように要らないものを詰めていたのかというと、私は鞄に無駄な空間を作るのが嫌で、隙間がなくなるように物を詰めていたのだということが分かりました。他にもエレベーターに乗るとすぐ「閉」ボタンを押していたことなどから、自分は「無駄が嫌い」だということがわかりました。

 

このように、他人との違いを自分で見つけるのは難しいので、他人に判断してもらうことは大事です。ですが、他人に直接判断を求めても冷静な判断が出来ないため、相手が無意識に自分に反応している点を見落とさず、改めて主体的に掘り下げることが重要だと思います。

 

――久保田さんの将来の夢を教えてください。

職業の面でいうと、私は物理学者になりたいと考えています。最近、「自分はどうすれば社会に貢献できるのか」と考えたときに、私は貢献の先がはっきり見えないものに対しては頑張れないということに気づきました。そして、改めて自分ができる貢献を考えた際に、主体的に好きなことをした上で、その結果がどこかの誰かの幸せにつながるようなことをしたいと思いました。私は物理に出会った際、知識が完全に組み合ったときの快感を得て、これを理解できる人間に生まれてよかったと感じました。私が物理について話すことで、他の誰かが同じように気持ちを得られたらいいなと思っています。

 

人生の面では、男女の区別を考えられないような存在になりたいと考えています。私は女子大学に通っているのですが、「女性の権力について興味があるの?」と聞かれることがよくあります。その際に、「女性の」という形容詞が世間の様々な面で使われていることを気にするようになり、まだ女性に対する偏見が残っているのだと感じられました。その時、私はマツコ・デラックスのような存在になりたいと思いました。マツコさんは男女の性別を気にすることすら忘れさせてしまうような個性を有しています。私はそのように、性別の壁を取り除いてしまうくらい自分だけに秀でたものを持ちたいというのが、人生における夢です。

 

■自分と真摯に向き合うことが海外進学への道を拓く

留学フェローシップ代表 高島崚輔くん(ハーバード大学1年)

――今回のサマーキャンプの目標は何でしたか。その目標を達成できましたか。

今年のサマーキャンプも、「自分に徹底的に向き合ってもらうこと」を大きな目標として掲げました。

 

それは自分にとって大きな出来事だけではなく、普段何気ない暮らしの中で見過ごしている小さな自分の癖や、大切にしているものに表れていることも往々にしてあります。だからこそ、このキャンプでは「自己分析」「自己表現」のサイクルを通して、そこから見えてくる「自分らしさ」を見出すことを大切にしてきました。

 

最後に書いてもらったエッセイを見ると、一人ひとりが自分に真摯に向き合ってきた姿が表れていました。もちろん完成ではないにせよ、目標は達成できたと思います。

 

――海外大学に進学するために必要なことは何だと思いますか。

 

海外大学の受験は日本の大学の一般入試と異なり、テストの点数のみで合否が決まるわけではありません。センター試験のようなテストの点数はもちろん、学校の成績・課外活動・先生からの推薦状、そして何よりも短い物語で自分らしさを表現するエッセイを通して、自分という「人間」をアピールすることが求められます。

 

模試による判定も出ませんし、最終的にはその学校の校風に合っているかが合否の分かれ目のような気もします。

 

だからこそ、机に向かうだけでなく自分と真摯に向き合い、そんな自分をどうすればより魅力的に伝えられるかを、徹底的に考えていきました。

 

――高島くんから見て、日本の大学と海外大学はどのような点で違いますか。

一番は学生が学びをデザインできるところでしょうか。必修の授業がほとんどなく入学時には学部も決まっていないため、自分で何を勉強したいのか、どのような授業を取ることで自分の学びがより豊かになるのかを考えなくてはなりません。1学期に取る授業も4つであることが多く、一つひとつの授業を真剣に選び、真剣に受講する学生が多いように思います。だからこそ教授も真剣に学生と向き合う。好循環が生まれていると感じます。

 

――将来の夢は何ですか。

 

今のところ専攻は環境政策を考えています。でも、変わりそうです(笑)。

 

アメリカの大学の良いところの1つとして、専攻を自由に変えられるところがあります。自分がより興味を抱く分野があれば、その分野を深く学べる。変わることを恐れず、自分の興味の赴くままに学び続けていきたいと思います。

 

ということで、計画性がないかもしれませんが、将来の夢というよりも、今自分がやりたいなって思うことをする毎日です。

 

■取材を終えて

みらいぶ大学生特派員 舩木駿一くん(早稲田大学2年生)

今回の取材を行うまで、私は「なぜ海外大学に進学するのか?日本の大学では駄目なのか?」という疑問を抱いていました。その疑問は中学時代からの旧友であり、ハーバード大へ進学した高島くんへ向けたものであったのかもしれません。様々な場面で交友のあった高島くんが、海外大学への進学を決めた際、私はその理由を問うことができませんでした。

 

今回の取材では、多くのメンターやフェローたちから留学志望動機を聞き、起業願望や海外大学ならではのシステムや文化など、海外進学のメリットを充分に知ることができました。ですが、特に印象に残ったのはやはり、高島くんの「自分の興味の赴くままに学び続けていきたい」という言葉で、留学を志すあらゆる人の根底にある気持ちを代弁しているようにも感じられました。

 

全国には海外進学を志してはいるものの、その方法や現状がわからずに悩んでいる高校生が多いはずです。この記事を通じて、そのような高校生たちに留学することの可能性を、そして留学フェローシップの存在を知らせたいと思います。

 

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