それぞれの放課後

漢字狂いが「漢字上達ソフト」開発! 学会発表を梃子(てこ)に推薦入学の道を開いた

間辺美樹(よしき)くん(元神奈川県立平塚中等教育学校)

第2章:90%が「楽しかった!」。ジュニア会員になって夏休み、函館の研究会に行った

もう1つの大きなステップは、偶然、情報処理学会という大人の学会にジュニア会員制度があることを知ったことです。学会なんて大学に行ってからの世界と思っていたから、中高生でも学会員になれるのは、驚きでした。

 

まさかそこに行けるなんて思わなかったけれど誘いが来ました。学会の中にはたくさん研究会があり、人文科学とコンピュータ研究会では、古文書解読アプリなんて開発している研究者がいました。

 

ますます「熟語マニア」を多くの人に伝えたいと思うようになり、だったら論文にして研究会発表しろと研究会の大学の先生に言われました。しかも指導もしてくれるそうだ。それなら自分をもっと進化させられると思いました。

 

ソフトが完成したのは高2の夏です。論文にする以上、研究目的や研究の方法だけじゃなく検証実験と考察、まとめまで書かないとダメと言われました。検証実験どうしようと悩んでいるとき、助け船を出したのは父でした。勤め先の神奈川県の高校の情報授業を利用して、「熟語マニア」の検証実験をしてくれたのです。

 

夏休み直前行われた検証実験は、高1生39人を対象に、パソコンで「熟語マニア」の20問3セットで計60問を解いていくもの。実施時間は20分です。

 

高校での検証実験風景
高校での検証実験風景

 

正しい熟語を3つ先に選べば5点(すなわち最後まで誤りを残した場合)で、20問正解で100点満点となります。ただし途中で誤りを選択した場合、3 回目で誤りを選んだ場合3 点、2 回目で誤りを選んだ場合1 点、最初に誤りを選んだ場合0 点というように早い段階で誤りを選択すればするほど、より多く減点される仕組みになっています。また、迷ったら、ヒントを表示させることができます。このヒントが、漢字の意味を理解するのに有効です。

 

○○○×…5点

○○×○…3点

○×○○…1点

×○○○…0点

 

検証実験授業の前に事前アンケート、実施後には利用後のアンケートを行いました。その結果、90%以上が「楽しかった」と答えてもらえました。「点数制にしてあるから本気になれる」「ドキドキ感を味わいながら漢字を学習できて一石二鳥と思った」というコメントも。

 

なによりも嬉しかったのは、「漢字の部首が違うだけでずいぶん意味が変わる。熟語の意味をしっかり理解することが大切だとわかった」という意見です。それを見たとき、意味に基づいて熟語が作られていることに気づく生徒も多いんだなと思いました。ソフト開発の目的は達成できたと実感しました。

 

論文発表本番!

 

高2の夏、「熟語マニア」の開発研究の発表です。函館で開かれた「情報処理学会SSS2016」で発表しました。

 

プレゼン発表は20分の予定でしたが、緊張したせいか早口でしゃべってしまい、15分で終わってしまいました。ああ、しまった。質疑応答の時間が長くなってしまった(笑)!

 

会場の大人の先生から「漢字の意味が大事だなんて当たり前のことじゃないの」ときついことを言われたり、あと「漢字でも日本と中国、韓国では用法も違うからそういうところにも焦点を当てたほうがいいんじゃないか」と指摘されたりしました。まあ大好きな漢字のことだから、けっこうきびしいことを言われても、プラス面に感じられたんです。大会の最終日に最優秀発表賞をいただけたことは嬉しかったです。

 

後に、高2の夏プレゼン発表した論文を、自らの意思で情報処理学会の本格的な論文誌「教育とコンピュータ」に投稿しました。半年後の高3の夏、論文審査を通り掲載されました。

 

テレビ「検定王」に出演!

 

漢字のことから少し離れていた高2の正月、突然、テレビ「検定王」という、検定1級の人が漢字力を競う番組に出演したんです。出演者は最強の漢字王と呼ばれる東大生、漢字塾の塾長、主婦、外国人で第1号検定1級取得者など、強豪1級がぶつかり合うクイズ番組でした。

 

僕は惜しくも決勝進出手前で脱落しました。悔しかったけど、年齢の違う1級仲間と知り合い、人生の幅が大きく広がったように感じました。特に漢字塾を経営している塾長との出会いは新鮮でした。出演後、今でも毎月のようにその塾に遊びに行きます。漢字塾には小学生~80代のおばあちゃんまで塾生が集まるんです。漢字が好きだけでのめり込んでも、それを生かしたこんな収入の道もあるのかって、驚きでしたね。そんな人生もまた面白いかなって。

 

インスタントラーメンは独創性?! ~東大推薦入試合格

 

高3の春、大学どうしよう、それは悩みました。漢字は好きですが、長文は苦手で、国語に自信がありませんでした。だから大学は理系へと考えていて、どの学部、学科にしようか悩んでいました。でも東京大学工学部に推薦入試があることを知り、こんな都合のいい方法あるんだ!受けてみたいと思いました。漢字ソフトで磨いた自己流の力をさらに進化させたい、それにはものづくりのできる東大工学部へと思ったんです。

 

東大推薦入試は、書類選考、小論文審査、面接、センター入試試験の成績などを総合的に評価されます。12月には個人面接が行われました。

 

面接会場では、5人の面接官の先生がズラリ並び、おっかなかったです(笑い)。特に緊張したのは、「今まで人類がなしてきた発明や発見の中で真に独創性があると思ったものを1つあげよ」というあらかじめ提出していた小論文に対して答えた時でした。僕はあえて「安藤百福のインスタントラーメン」と答えました。

 

それに対しては、真の独創性とは、人類に貢献した普遍的な法則の発見などを言うのであって、君の意見は少し違うんじゃないかというようなことを面接官からかなり厳しく言われました。

 

僕は、「ニュートンの万有引力の発見もレントゲンのX線の発見もすごいと思うけど、それは偶然の発見に支えられています。それよりもお湯をかけるだけでみんなが食べられるものをつくるという明確な目的に向かって邁進していくほうが真の独創性と思った」と答えました。

 

もうタジタジでしたが、合格できたのはたぶん、論文発表で鍛えられ、自分の意見をはっきり言うことがプラスになったのかなあと思います。

 

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