2018信州総文祭

流星を二地点から同時観測し、「オーロラと同じ光」が発生する高度を突き止めた!

【地学】佐賀県立佐賀西高校 サイエンス部

(2018年8月取材)

左から 古賀かりんさん(3年)、江口矢起くん(3年)、末廣大雅くん(2年)
左から 古賀かりんさん(3年)、江口矢起くん(3年)、末廣大雅くん(2年)

■部員数 29人(うち1年生12人・2年生8人・3年生9人)

■答えてくれた人 江口矢起くん(3年)

 

佐賀でオーロラを見る! 4 ~二点観測による流星痕の高度計算~

佐賀でも「オーロラと同じ光」が見られる?

流星通過後に残る煙のようなものを「流星痕」といいます。流星痕は、発光継続時間の長さによって、「短痕」と「永続痕」に分類されます。私たちは、発行継続時間が1秒未満~数秒である短痕の中でも特徴的な緑色の発光を、「酸素原子の禁制線の発光」として、研究を行っています。

 

 

酸素原子の発する光は、短痕の代表的な成分です。そして、実はオーロラの緑色も、この「酸素禁制線発光」なのです。全ての観測を佐賀県内で行っている私たちは、「北極圏でしか見ることができないオーロラの光を、佐賀県でも見ることができるのではないか」と思い、研究を開始しました。

 

 

昨年までの研究成果から得た「気づき」

 

2014・15年度の研究では、「一点観測」の結果、「対地速度が大きい流星群ほど、緑色の短痕が多く観測される」という知見が得られました。ただ、ここまでの研究では、緑色の短痕が酸素禁制線発光であるということは仮定であったため、昨年度はこれを検証するために、回折格子を用いた分光観測を実施しました。その結果、緑色の短痕が酸素禁制線発光であることを示す証拠を発見しました。

 

その時の写真がこちらです。右側の白い光が流星本体で、左側の数本の光は、分光された輝線です。私たちは、白い線で囲まれた緑色の輝線の波長を計算し、その値が酸素禁制線発光のものと一致することを確認しました。つまり、オーロラと同じ光を佐賀県で観測することに成功していたことがわかったのです。

 

 

酸素禁制線発光の下層部はなぜかすれているのか?

 

今年度、私たちは、昨年度の研究に用いられたこの分光写真に注目しました。この流星は、左上から右下へ向かって流れているため、この酸素禁制線発光は、下層部分がかすれていることがわかります。

 

酸素原子に流星体が衝突すると、エネルギーが増大し、酸素原子の一部の電子が本来の軌道よりも外側の軌道に移ります。これを「励起状態」といいます。この電子が、元の状態に戻ろうとするときに、余分なエネルギーを光エネルギーとして放出したものが、酸素禁制線発光なのです。酸素禁制線発光は、原子が励起してから発光するまでに、他の発光の100万倍にあたる約0.7秒の時間がかかることが知られています。

 

これは、大気の密度の比を視覚的に表した模型です。大気密度は、高度が低くなるほど、大きくなります。私たちは、「高度の低い部分では、酸素が励起してから発光するまでの間に、他の物質と衝突してエネルギーを失ってしまうために、酸素禁制線発光が起こらなくなるのではないか」と考え、分光写真に見られた「かすれ」が生じた理由についての仮説としました。

 

2地点から、流星を同時に観測・撮影、60000枚以上の写真から条件に合うものを選び出す

そこで、この仮説を検証するために、私たちは今年度から「二点観測」を開始し、酸素禁制線発光の発光高度を求めることにしました。こちらは、過去の「ペルセウス群」と「ふたご群」の観測結果です。「ペルセウス群」で酸素禁制線発光が確認された一方、「ふたご群」では一例も見られませんでした。このことから、この両者を観測することで、酸素禁制線発光が起こる高度と起こらない高度の境目、つまり「酸素禁制線発光の消失点」を求められると考えました。

 

二点観測の観測地点は、放射点の位置と水辺からの距離、そして2地点が東西に並ぶことを考慮してそれぞれスライドのように設定しました。

 

撮影時のカメラの設定は、暗い流星も撮影できるよう短い時間でも十分に光を取り込めること、月明かりの影響を小さくすること、流星本体と流星痕を分けて撮影できることを考慮して、

・F値:F1.8(双方とも)

・ISO感度:6400~12800

・露出時間:1秒 

と決めました。

 

今回の観測で撮影した写真の枚数は、61518枚でした。これらを、パソコンの画面上で目視し1枚ずつ選別したところ、「ペルセウス群」の観測で同時撮影に成功した流星は4つで、いずれも「ペルセウス群」に属する「群流星」でした。また、「ふたご群」の観測で同時撮影に成功した流星は1つで、この流星は流星群に属さない「散在流星」でした。下図は、実際に撮影に成功した酸素禁制線発光の写真です。

 

 

幾何の知識を活用して、独自の方法で発光高度を計算

 

私たちは、撮影された写真を用いて、酸素禁制線発光の消失点の高度を求めるために、独自の計算方法を考えました。そして、「ペルセウス群」の酸素禁制線発光2つと、「ふたご群」を観測した際に撮影された散在流星の酸素禁制線発光1つについて、それぞれの発光高度を計算しました。

 

私たちは、2カ所の観測地点と酸素禁制線発光の発光地点の位置関係を、図のような三角錐で捉えました。求めるべき酸素禁制線発光の消失点の高度は、図の「H」にあたります。

 

この値を求めるために、次のように式を立てました。

 

まず、三角錐の底面の三角形について「正弦定理」を用いることで、図の「X」の長さを求めます。次に、三角関数の基本的な定理を用いて「H=X×tanE」と計算することで、「H」を求めることができます。

 

しかし、計算前の段階では、酸素禁制線発光の消失点の位置がわからないため、観測地点と消失点がなす方位角「A」・「B」、消失点の仰角「E」が不明です。そこで私たちは、2地点から撮影された消失点が重なっている恒星をそれぞれ調べ、その恒星の位置から、消失点の位置を確定させました。

 

計算の結果、酸素禁制線発光の消失点の高度は、このように求めることができました。

 

また、消失点の高度が最も低かった酸素禁制線発光について、発光開始点の高度を求めると、約150キロメートルでし上の結果から、約150キロメートルから、約80キロメートルの高度範囲では、酸素禁制線発光が起こるということがわかりました。

 

「オーロラと同じ光」が発生する高度がわかった!

 

今回の観測で、酸素禁制線発光が確認された最低の高度は、83.8キロメートルでした。この高度周辺の大気組成を、地学図表で調べました。この図から、高度約85キロメートルより下では、酸素原子がほとんど存在していないことがわかります。

 

以上のことから、昨年度の考察に加えて、酸素が原子状態で存在している高度範囲で、酸素禁制線発光が起きると考えられます。

 

「ペルセウス群」など対地速度が比較的大きい流星において、流星通過後も注意して空を観察すること、さらに放射点よりも遠いところを観察することで、酸素禁制線発光を観測できる可能性が高まります。来週は「ペルセウス群」の極大期です。月明りが弱く、観測には好条件なので、ぜひ観測をしてオーロラと同じ光を見てみてください。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

シリーズ研究として、北極圏でしか見ることのできないオーロラと同じ光を佐賀で見ることができるのではと考え、研究を行っています。今年度は、昨年度に撮影した写真において、流星痕(酸素禁制線発光)の高度が、他の輝線と異なったため、高度に着目しました。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

2014年度より始めて、8時間ほどの観測を9回、4時間ほどの観測を3回行い、1日に3時間ほどの確認を計13か月間(4年間で)行いました。

 

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

同時撮影された流星の写真を得ることが、データにつながる8時間位の夜間行動であり、体力的に大変でした。また、6万枚以上の写真を1枚ずつ確認するのは単調で、長時間を要する作業なので苦労しました。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

流星の位置の特定に、恒星を使ったことと、一般に、計算ソフトを用いるところを高校生でもできる計算方法を見つけて、計算に用いることができたことです。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

・先輩方の研究(過去3年分)

  第41回全国高等学校総合文化祭2017みやぎ総文論文集PA01

  第40回全国高等学校総合文化祭2016広島総文論文集PA17

・「ニューステージ新地学図表」(浜島書店)

・「天体観測の教科書 流星観測編」マーチンビーチ (誠文堂新光社)

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

流星群の種類を増やし、対地速度に差をつけることで、発光高度を変え、酸素禁制線発光の高度条件についてさらに細かく調べていきたいです。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

1年生の研究のサポートや、中学校への実験交流会をしています。

 

■総文祭に参加して

 

2018年度の研究を飾るにふさわしい発表、交流、知見になり、参加できたことの誇りと、支えてくださった方々への感謝でいっぱいです!

 

※佐賀西高校は地学部門の奨励賞を受賞しました。

 

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