第12回全日本高校模擬国連大会

複雑な国内事情に同情を求めるのでなく、「シリアに利益をもたらす政策が、国際社会にも利益をもたらす」ことを訴えた

岐阜県立岐阜高校 担当国: シリア

辻諒汰くん(2年)

 [海外旅行・滞在の経験] 渡航の経験はない

山下倫未さん(2年)

 [海外旅行・滞在の経験] 旅行や短期留学で何回か行ったことがある

 

担当国を希望した理由を教えてください。

私たちの担当国のシリアは、第4希望の国でした。シリアは近年注目されている「小型武器」を輸入しており、国内で紛争が続いている国です。そこで、武器移転を積極的に行っている当事国として、他国も納得のいく政策を立てられるかどうかという点に注目しました。また、現在の国際情勢の中では非常に難しい立場に立たされている国ですが、それだけにやりがいがあると思い、希望国の一つにしました。

 

担当国は「武器移転」について国際的にどのような立場を取っていますか。また、論点1・2についてのボトムライン(これ以上は譲れない点)を教えてください。 

シリア国内では、今もなお反政府組織によるテロ活動が続いています。シリア政府は反政府勢力を武力で押さえ込むための武器を必要としており、武器を積極的に輸入しています。そのような現状で武器の輸出入に関する情報公開は、自らの手の内を敵対する相手に晒してしまうことになるので、消極的にならざるをえません。したがって武器移転の報告に関しては、できる限り寛容な措置をとる必要がありました。その一方で、反政府組織への武器移転に関しては厳しく規制し、武器の輸出入の情報公開も厳格に行いたいという希望を持っています。

 

このように2つの論点に対して矛盾した態度をとる国について政策をまとめることはかなり難しく、非常に不安定な立場に立たざるを得ませんでした。しかし、そのような状況の中で、少しでも自国に利益をもたらすために、論点1・2のボトムラインを、順に「既存の武器移転報告制度の踏襲」「非政府組織に対する武器移転規制制度の構築」と定めました。

 

 

準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

シリアは、反政府組織のテロによって国内に甚大な被害を受けています。そのような現状を逆手に取って、国内での武器使用やテロに関する情報を徹底的に調べ、政策に説得力を持たせることができました。また、交渉の場では必ず譲歩が必要になるとわかっていたので、他国も納得できる合意点を生み出すために、自国の政策に関する文言や内容を徐々に緩めていく段階ボトムを設定し、議場の流れに応じて政策の提案ができるようにしました。

 

そして今回は、論点1「武器移転における透明性措置の確保」に対する賛成・反対で各国の立場が大きく分かれると予測して、事前に配られるNP(Negociation Paper)を参考にしながら、意見の合いそうな国、対立しそうな国を把握したり、過去に催された決議を調べたりして、各国や国際社会の考え方を理解できるようにしました。(辻くん)

 

シリアの武器移転に関する情報は非常に少なく、国としての立場や政策をまとめる際に苦労しました。ただ、シリアは内戦やテロが続いているため、間接的な情報を集めて立場や政策を考えることができました。当日は、シリアの惨状を前面に出して同情を求めるのではなく、「シリアに利益をもたらす政策が、国際社会に対しても利益をもたらす」ということを強く訴えることで、自分たちの政策を通してもらえるように準備しました。(山下さん)

 

大会当日は、どのようなことに気を付けながら会議に臨みましたか。 

特に意識したことは「役割分担」です。役割としては、立場の似た国同士で集まり意見をまとめる内政と、他のグループと交わって政策の内容や方針を調査する外政とに分かれました。内政が十分に働かないと初日の時点で自国の政策が通らなくなるし、外政が十分に働かないと、2日目に他のグループと交渉を行う際の事前調査で乏しい情報量しか得られないというように、どちらかの動きが欠けても議場活動に影響が出るため、互いの状況を逐一報告し、コミュニケーションを取りながら会議に臨むようにしました。(辻くん)

 

気を付けたことは、議場の流れを読むことです。現在何を議論しているのか、次はどうすれば会議がうまく進むのかを考えて、早めに行動に移したり、チームメイトと情報交換をしたりしました。例えば、次はコンバイン交渉をしなければいけないとわかったら、立場の似たグループに積極的に情報収集に向かい、妥協点を素早く見つけ出すというように、当日も臨機応変に行動しました。また、国としての立場が異なるグループと交渉する際には、まず相手の話を聞くことに徹し、少しでも政策が共通していると思う部分から意見を述べるようにしました。(山下さん)

 

 

会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。 

今回の会議で一番大変だと感じたのは時間の管理です。初日は、各国の意見の集約や文言の体裁を整理するのに時間がかかり過ぎて、一部提出時間に間に合わず、自分たちのグループの政策内容をすべて他グループに伝えることができませんでした。2日目は、スタンスが違う国も加わったために初日以上に意見をまとめることが大変でしたが、初日の反省を踏まえ、各グループの代表と話し合って早い段階から文書の作成に取り組み、各国に文言の確認や理解を求める時間を確保したうえで文書を提出することができました。(辻くん)

 

大変だったことは、グループ間での交渉です。コンバイン作業をする際に、立場の似ている他のグループと意見をまとめようとしましたが、些細な政策の違いに対してお互いが譲らず、交渉が長引いて文書作成が滞ったことがありました。そこで、比較的容易に妥協点が見つけられそうなものから議論し、妥協が難しい内容のものについては新たに提案するなどの工夫を凝らしました。こうした工夫の結果、その後は円滑に交渉を進めることができました。(山下さん)

 

皆さんのスピーチのタイミングはどのあたりでしたか。また、議場に向けてどのようなことを訴えましたか。 

初日の前半にスピ―チをしました。主な内容としては、シリアの現状、他国への影響、今議題に対する考え方、政策の方針について話しました。(辻くん)

 

1st Meeting の初めにスピーチをしました。議場は主に論点2について議論していたタイミングだったので、シリアの現状を訴えるとともに、非国家主体の武器移転規制の必要性を訴えました。(山下さん)

 

スピーチはどのように練習しましたか。特にこんなことを心掛けた、という練習方法や、その場で工夫したことなど、教えてください。 

事前準備の段階でWPの作成を担当していたので、スピーチは担当しませんでした。しかし、山下さんのスピーチ練習の際には内容を確認し、協力して原稿を作成しました。(辻くん)

 

伝えたいことが全員に伝わるように、文字数を抑えてゆっくりしたペースで話すことを心掛けました。また、自分の話す英語を録音し、それを聞きながら何度も繰り返し練習しました。(山下さん)

 

世界大会に向けての抱負を教えてください。 

自分とは生育環境のまったく異なる人たちと話ができることを大変楽しみに思う一方で、海外に長期滞在したことがないために、英語のみで相手と交渉することや文書を作成することに対して強い不安を感じています。その他にも不安に思うことは山ほどありますが、会議の準備と並行して語学の勉強も重ねて、自分たちの良さを議場で発揮できるよう精一杯頑張りたいと思います。(辻くん)

 

議題概説書やPPPなどすべてが英語で書かれているので、語学の面で不安は感じます。しかし、私たちの強みは、全日本大会でも評価していただいたような、計画的で入念な準備にあると思うので、今回もその強みを生かし、自分たちらしさを見失わず、チームとしての良さを思う存分発揮できるよう全力で取り組みたいと思います。(山下さん)

 

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