第13回全日本高校模擬国連大会

現地の人の生の意見を収集。議論をよい方向へ向ける舵取り役に徹した

愛光高等学校(愛媛県) 担当国:ベルギー

田村彰悟くん、清水 昂くん(2年)

■担当国を希望した理由をお教えください。特に、今回の議題の「死刑モラトリアム」については、担当国のどのような点に注目されましたか。

 

「ヨーロッパの縮図」とも表現されるほど多様性に満ちた国であり、EUの意見調整役としての発言力に期待できたことから、ベルギーを希望しました。また、ペアの1人がベルギー育ちだったことから、現地の友人や教師とのコネクションを活かしつつ、英語と仏語を併用してスムーズな情報収集が可能になるとも考えていました。

 

死刑モラトリアムという議題に関しては、ベルギーは死刑廃止に積極的な立場を取っているものの、実際の議場で強く発言するようなことは少なく、多文化に対して寛容な一面が見られ、そこに惹かれました。また、現地の人々にSNSを通して聞いてみたところ、国民の中でも今なお議論が続いていることがわかり、国内での議論が活発であるからこそ廃止国と存置国双方の視点を深く理解でき、互いの意見を擦り合わせながら、まさに国連の意見調整役として議場全体の舵取りができる国であると考えました。

 

■準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

WPの原案を事前に作成した上で会議に臨んだのですが、過去の決議案を真似るのではなく、内容面で何を盛り込みたいのか考え抜き、ポイントを絞り込み、なおかつ予想される議論の順番に沿ってストーリー性のあるWP案に書き上げたことです。こうすることで何が本当に重要な論点なのか一目でわかり、読みやすく、また他国の大使に説明しやすいWP案になったと思います。形だけでない、高校生主体の「模擬国連」ならではのWP、DRを作ろうと心がけていました。しかし直前になってもなかなか納得できる文言が浮かばず、先が見えない中で考え続けるのは、楽しい一方で精神的にきつくもありました。(田村くん)

 


自分は担当国内に友人がいたので、彼らの協力を得て情報収集に取り組みました。彼らは有力な情報やソースを提供するだけに留まらず、議論の相手もしてくれたので、準備する上で苦労したことはあまりありませんでした。強いていうならば、部活動と学業との並行作業だったので、タイムマネージメントが難しかったです。(清水くん)

 

■大会当日は、どのようなことに気をつけながら会議に臨みましたか。特に、立場が異なる国と交渉する際に気をつけたことを教えてください。

 

相手の話を最後まで「聴く」ことです。相手が話し終わるまで口を挟まず、話し終わってからわからなかった点を「訊き」、その後はじめて自国の主張をすることを心がけました。この「聴く」姿勢を貫いたことで、グループ全体としても相手の話を最後まで「聴く」空気が徐々にできあがり、非常にスムーズに、意義のある議論ができました。(田村くん)

 

ひたすら相手の話を聞き、こちらで相手の主張を簡潔に整理して返すことで、信頼を勝ち取ろうと終始意識していました。また、議場全体の流れを把握し、内政担当のパートナーに定期的に報告するようにしていました。(清水くん)

 


■会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。

 

グループ内で各国がお互いに主張をし合うだけで議論が膠着してしまう場面が何度かあったことです。不必要な対立で議論が停滞することは一番の問題であると考えていたため、自グループでは意見が分かれると予想される論点については声に出す前に一度国ごとにメモ用紙に簡潔に主張をまとめてもらい、紙面で共有し、グループ内のすべての意見を全員が把握した上で議論を始めていました。こうすることで、グループとしてあくまで議題にフォーカスした議論に集中できたと思います。(田村くん)

 

 

相手を何とか論破しようとする気の強い外交担当の方が数人見受けられ、彼らの主張を受け止めはするものの、こちらの意見を聞いてもらうことができない状況に陥りましたが、繰り返し相槌を打って共感・理解を示し、自分の外交スタンスを崩さずに相手を持ち上げ、優しく包み込むイメージで対応し、共に語り合えるほどの信頼を勝ち取ることに成功しました。

(清水くん)

 

 

■皆さん自身は、「死刑モラトリアム」についてどのような考えを持っていますか。また、それは今回の担当国の立場とどのような点が同じ(あるいは違う)でしたか。

 

凶悪事件が報道されると、やはり死刑はなくてはならないと思ってしまいます。しかし、日本の外に目を向けてみると、差別により本当に些細なことで死刑に処されている方々、また冤罪により死刑を宣告された、あるいは既に執行されてしまった方々がいます。「死刑」と聞くとどうしても廃止か存続かの2元的な議論に陥りがちですが、そこに集中するあまり見落とされてしまっている、何よりも先に解決されなければならない問題があるのです。そうした問題に目を向け、解決していくための第一歩としての死刑モラトリアムの導入は、ベルギー王国も主張している通り、非常に大きな意義を持つと思います。(田村くん)

 

 

私は死刑モラトリアムの実施には概ね賛成です。ただし、死刑制度の完全撤廃を受け入れるための「期限」としてではなく、犯罪発生率やコスト面、国民からの評価などといった統計データの収集と共有を行う「論拠集め」の機会として実施する方がいいと思います。より詳細なデータを集めなければ、根拠のない価値観の押し付け合いに終始して、発展性のある議論ができないと思うからです。担当国は死刑廃止を見据えた死刑モラトリアムを主張しているので、大まかな意見は共通すれど、細部は少し異なっていると言えそうです。(清水くん)

 

 

■最後に2日間の感想をお願いします。

 

全日本大会は、たくさんの想定外があったけれど、今までで最も濃く、刺激に満ちた2日間でした。一生の思い出になりましたし、2日間の会議を共に過ごした仲間はもちろん、準備の過程も含めお世話になったすべての方々に感謝の気持ちでいっぱいです。世界大会も最高の結果を出せるよう精進してまいります!(田村くん)

 

楽しかった、の一言に尽きます! (清水くん)

 

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