情報処理学会第82回全国大会中高生情報学研究コンテスト ポスターセッション発表 

画像解析の技術で子どもや目の不自由な人を事故から守りたい !

チーム名:ちくわ

名古屋大学教育学部附属高校

服部 真吾くん(2年)、高橋 承希くん(2年)

「画像解析によるブロック塀と点字ブロックの識別 ーハザードマップの自動作成と視覚障害者の歩行支援ー」

 

■発表の内容

 

ブロック塀の倒壊に巻き込まれて死傷する事故や、視覚障害者が駅ホームから転落する事故の危険性はこれまで指摘されてきたが、予算や労力のため、まだ充分な解決に至っていない。そこで、これらの問題を低予算かつ短時間で解決するためLyfeとLWSの2システムを作成した。

 

Lyfeは「通りの画像」データから危険なブロック塀を検出し、ハザードマップを自動的に作成する。今後はGoogleStreetViewなどの公開されている大規模な画像データを用いて実用的なハザードマップの作成を目指すとともに、機械学習を利用することでブロック塀以外の危険物の検出も目指す。

 

LWSはHSV処理と分割処理を用いて点字ブロックの位置と方向をリアルタイムに検知する。これをRaspberryPiに搭載し、音声案内と組み合わせることで駅ホームからの転落を防ぐことができた。今後は深度推定などの機械学習を利用し、ホーム以外でも利用可能な信頼性の高い歩行支援システムの開発を目指す。

 

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■今回発表した研究を始めた理由や経緯は?

 

2018年6月18日の大阪北部地震にて、女子小学生がブロック塀の下敷きとなる悲痛な事故が発生しました。これは、ブロック塀が危険な状態のまま放置されていたために起こった事故でした。この事故により、政府は多くの予算を取り、撤去等対策に充てることを発表しましたが、ブロック塀は大量に存在するため、目視により全てのブロック塀を調査することは大変な労力と時間がかかります。また、ブロック塀以外の危険な構造物に同様の対策をするならば、その都度膨大な時間が必要となります。

 

そこで私は、公開されている「通りの画像」からブロック塀を自動的に識別できれば、ハザードマップを低コストに速やかに作成でき、事故を防ぐことができると考え、この研究を始めました。

 

また、近年の日本では、視覚障害者が線路に転落し、人身事故に巻き込まれる事態が表面化しています。これは、ホームが欄干のない橋と表現されるように、視覚障害者にとって極めて危険なものであるからです。最近になって、駅にホームドアが設置され始めましたが未設置の駅もあり、このことが視覚障害者の自主的な移動を阻害していると考えられます。そこで私は、スマートフォン等で撮影した画像に、単純な処理を施すことで点字ブロックを識別し、自動的に歩行案内できれば、視覚障害者が安心して移動できると考えました。このことも、この研究を始めたきっかけです。

 

■今回の研究にかかった時間は?

 

歩行案内装置には半年、ハザードマップの自動作成は1年かかりました。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

全体として、私たちの研究は画像解析を主としているので、最適な手法の設定とパラメーター探索に苦労しました。また、StreetViewに似た画像を作成する際も画像の品質が安定せず苦労しました。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

実際に運用しているところを見ていただきたいのですが、歩行支援機は軽量なフィルタを用いることで点字ブロックの検出を高速にし、使用者の安全性向上に努めました。また、ハザードマップの自動作成において、使用者の目的に合わせて推薦するルートを変更する点にこだわりました。

 

■オンラインの発表と実際の会場での発表のどちらがよかったと思いますか?

 

私は実際の会場での発表の方が良かったと思います。なぜなら、オンライン開催は発表の効率化、感染拡大の防止の面では良いのですが、質問もアイデア交換もできず、自分の研究の改善案をいただくこともできないからです。

 

■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことは?

 

今後は、視覚障害者の歩行のみならず、コミュニケーションを伴侶のようにサポートしてくれる人工知能とハードウェアのセット、そして、機械学習を利用することでより高精度、多種類の危険物を検出しハザードマップに反映させるシステムを開発したいです。

 

 

※「ちくわ」チームの研究は、中高生研究賞入選を受賞しました。

 

第82回情報処理学会全国大会中高生情報学研究コンテスト ポスター発表より

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