第14回全日本高校模擬国連大会

途上国と先進国の橋渡しを目指し、常に全体を「俯瞰」する目を持つことを心掛けた

福井達於都くん(2年)、高橋侑里さん(2年)

開智高校(埼玉県) 担当国:チリ

 

 

■担当国を希望した理由を教えてください。

 

私たちは2人とも経験が浅かったため、模擬国連に精通している方に、「先進国はその国力の大きさから、問題解決の責任を負う側面や、厳しい立場に立ったりすることが多く相当な交渉力が必要とされる」と聞いたことから、まず途上国という前提のもとで国を選びました。

 

その中でもチリは、途上国でありながらも、宇宙利用に関しては積極的な姿勢を示していたこと、また、フランスなどをはじめとした先進国とも協力関係を築きつつあったことなどから、状況を見て複線的な動きができることや、他の途上国と先進国の橋渡しとなり、この議論の前進に大きく寄与することが予想できたため希望致しました。

 

 

■準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

 

議題に関する準備

 

リサーチでは、チリの宇宙利用に関する鮮度が高くて、信頼できる情報がなかなか出て来ず、 BGで求められていた現代の情勢に則した詳細なスタンスを見極めることに苦労しました。

 

これが原因で、会議本番前に自分たちの主張の問題点が見つかってしまったこともありましたが、最後まで妥協を許さずに準備したことは、当日の揺るがない自信につながりました。

 

会議行動に関しては、一問一答や、想定できる限りのシナリオを作成するなどして、不測の事態に備えました。

 

オンライン会議に関する準備

 

オンラインという未知の形態に対する不安感を少しでも取り除くため、他の団体が主催しているオンラインでの練習会議に参加したり、ペアでズームを用いて、プロシージャに則って当日のシミュレーションを行い、当日の感覚を掴む努力をしたりしました。

 

 

■大会当日は、どのようなことに気を付けながら会議に臨みましたか。

 

私は、昨年も今大会に参加したのですが、その際に自分たちの会議行動において、各国との接点の不足を感じたため、積極的に多くの大使と議論しようという意識は常に念頭に置いていました。そしてその際、不信感をもたれてしまっては、一国の大使として本末転倒であると考えていたため、当たり前のことですが、笑顔を忘れずに、画面の向こうの相手の目をしっかり見て、意見に耳をきちんと傾け、疑問は逐一解消することで各国との間に信頼関係を構築していくことに気を付けていました。

 

また、独りよがりな議論にならないよう議場全体を俯瞰する視点を忘れないこと、一つ一つの行動や発言が意義を持ったものであるようにすることなども心掛けていました。(福井くん)

 

 

会議開始時から終了時まで気を付けていたことは、自国の要求や意見を感情論ではなく筋道立った論理を基に主張することです。私自身、模擬国連をやること自体が初めてだったため、特に1日目のファーストミーティングは、チリ大使としてのスタンスをしっかり軸において冷静に行動・発言できるよう意識することから始めました。

 

ファーストミーティングである程度雰囲気が掴めたので、そこからはとにかくひるまずに積極的に発言するようにしていました。自分は外交として他グループの議論に入る場面が多かったので、そのグループ内であまり発言していなさそうな大使からも情報を得られるよう話を振るなどして今話題になっている議論になるべく多くの国を巻き込むことを目標として発言するようにしていました。

 

また、意見を交わしている大使と良い関係を築いてより議論を深めるために、相手の空気感が伝わりづらいオンラインだからこそ、対話中は相槌などを意識的にするよう心掛けていました。(高橋さん)

 

 

■あなたが感じた、オンラインの模擬国連とリアルの模擬国連の、それぞれの長所・短所を教えてください。

 

オンライン模擬国連

[長所]

比較的、どんな人でも議論に参加しやすいことはオンラインの長所であると感じました。対面の会議は、リーダー国を中心にした輪のような形態で、大きな声で議論をまとめ上げていくような手法が取られていたので、声の小さい人の意見が伝わらなかったり、立っている位置が発言力に影響を与えてしまったりということが、頻繁に起こるので、この点に関しては、非常に良いと思いました。

 

また、ズームの画面共有機能などを用いることで、リアルの模擬国連ではUSBを介して一国ずつ行われる文書の共有が1度で済み、時間が短縮できたことも良かったと思います。(福井くん)

 

 

リアルの模擬国連では、体格差や雰囲気、声の大きさなど競うべき本質ではないところで圧倒されてしまうという事態が起こりますが、オンラインではそれが起こらなかったので、その点では非常に公平だと感じました。また、WPやDRなど複数の国が共同で提出する文書も、作成段階のうちからグループ内の大使全員に共有してある状態だったので、各国大使がきちんと手元で文言に目を通し、内容を把握しながら文書作成ができていたのはとても良い点だったと思います。(高橋さん)

 

 

[短所]

今回の会議では、ズームのブレイクアウトルーム機能を使ってアンモデレートコーカスが行われたので、議場の形とそれぞれの大使の位置の把握(例えば、どの大使が輪の中心にいるのか、どの大使が輪から漏れているのか、など)が難しいことは、議論の円滑な進行に少なからず支障をきたすという点で短所であると思いました。

 

また、ペア間の連絡もLINEなどのSNSを通して行われたので、特に互いが別のグループで議論に参加している時などは電話をすることが難しく、必然的に文字でのコミュニケーションをしなければなりませんでした。その点で、思い違いが起こってしまう可能性があることも短所だと思いました。(福井くん)

 

 

慣れないオンライン機器での作業に手間取ってしまう人が多く、その時間が大幅に無駄になってしまったと思います。また、私たちの様に2人それぞれが色々なグループを行き来していたペアは、ペア間での連携を取るのもとても難しいところがあったと感じました。(高橋さん)

 

 

リアルの模擬国連

[長所]

2国間での交渉が比較的しやすいことは長所だと思います。オンラインでも可能ではありますが、1度所属しているグループ全体の話し合いから抜けて他の部屋に移動しなくてはならなかったり、全体の部屋で行う場合は、1対1でのチャットなどを通して行わなければならなかったりしたため、リアルと比べ、余分に時間がかかってしまったと思います。(福井くん)

 

経験したことがないので推測ですが、グループ別で分かれて議論しているとしても、やはり1つの部屋で会議が進行していて会場全体を見渡すことができるリアルでは、オンラインより遥かに会議全体の流れや雰囲気が掴みやすいと思います。(高橋さん)

 

 

[短所]

対面は、声の大きさや、立ち位置などが発言力に影響を与えてくるという特性があり、これらにより、中心にいる一部の国だけで議論が進んでしまう傾向がオンラインよりも強いという点は、短所だと思います。(福井くん)

 

リアルではグループで1つの文書を作成している際、中心となって作成している何ヵ国か以外の大使には、文言の内容や表現の把握をきちんとするのがとても難しいと思うので、そこは短所だと感じます。議論を進めていくに当たって、すべての大使がしっかりと納得した上で共同提出国になるのが望ましい形だと思うので、その点ではオンラインの方が長けていたと感じます。(高橋さん)

 

 

■2日間の感想を教えてください。

 

本会議は非常にタフで、楽しいものでした。

 

オンラインというなれない形式や、普段の会議とは全く異なる全日の場に戸惑ってしまう場面もありましたが、その度に冷静に議場を俯瞰し、「今やるべきことは何なのか」ということを見極め、実行に移しました。

 

タイムマネジメントの甘さなど個人的な反省点は多々ありますが、全国から一堂に会した、大使の皆さんと共に、熱い議論を交わしたことは本当に得難い経験になりました。また、目標としていた優秀賞をいただけたことを大変嬉しく思います。 (福井くん)

 

 

全国から集まるレベルの高い高校生たちと議論ができたこと、そしてその場で優秀校として選んでいただいたことは本当にありがたい限りです。模擬国連経験がなかった私を準備段階から当日まで先導してくれたパートナーの福井くん、協力してくださった先生方、共に会議を創った各国大使の方々には本当に感謝しています。

 

当日の2日間はとにかく引けを取らないように会議についていくことで必死でした。担当国の大使としてのスタンスを軸に、その軸を揺るがさないようにしつつ、その場でいかに鋭く臨機応変に行動できるかが鍵となる模擬国連は自分を大いに成長させてくれ、自分の中で今まで磨かれることのなかった能力を新たに伸ばすことができたと感じます。

 

大会中の2日間は特に、きついと感じたこともありましたが、それも含めて本当に糧になる経験でした。(高橋さん)

 

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