第14回全日本高校模擬国連大会

良い政策を共同で作成する努力を続けた結果、グループ外でも賛同の輪が広がった

伊藤 碩くん(2年)、坂崎遼太郎くん(1年)

駒場東邦高校(東京都) 担当国:ドイツ 

(2020年11月取材)

 

■担当国を希望した理由を教えてください。

 

宇宙利用では、米ロ中の宇宙大国や欧日印など探査をリードする国々、開発に参入する地域有力国、そして十分な恩恵を受けられていない途上国など、多様な立場の国々が存在します。これらの国々が対立する利害を乗り越えて、国際協調行動を生み出すために何が必要かを考えて、僕たちは欧州の挑戦に着目しました。欧州、特に英仏独は国際機関による共同開発に力を入れており、中小国にも配慮した独自のルールを設けることで、加盟国が利益を得られるよう試行錯誤を重ねています。このルールを応用して自分たちのアイディアを加えることで、世界中の国々が共同利益を得られる仕組みを提案できるのではないかと考えました。

 

欧州の中では、あえて国主導ではなく、民間企業主導で宇宙開発にイノベーションを起こそうとするドイツのフロンティアスピリットに、大きな魅力と可能性を感じました。さらに、宇宙技術の軍事利用が課題となる中で、第二次大戦下でナチスが兵器として利用したV2ロケットにより多くの人命が失われた過去を踏まえ、「国際協調の場では、宇宙の平和利用を絶対的使命とする」という方針を、ドイツ国民の思いを代表して世界に発信しようと考えました。

 

 

■準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

 

議題に関する準備

 

今回の議題は、国際協力の全体像を示しながら、スペースデブリ対策など多岐にわたる個別テーマへの解決策を提示する必要がありました。

 

僕たちは、まず総合的な方針と政策の柱を作り、それをテーマ毎に組み合わせて課題を解決することで一貫した協調行動に繋げようと考えましたが、その立案は容易ではなく、二人で悩んだ結果、前日の深夜にようやく構想がまとまりました。そのため今回初めて組むペアにも関わらず、議場行動や役割分担については打ち合わせが完全でないまま本番で臨むことになりました。

 

でも、苦労の中で宇宙の未来像を自分たちで造ることへのモチベーションが徐々に高まり、「ドイツの国益とは何か?」ということをしっかり考えた上で、ドイツにしか提案できないようなオリジナリティを持った政策を用意することができました。

 

僕たちは調査やペア間の議論を重ねて、先進国・途上国間のフェアで持続可能な国際協力を行うためには「情報の相互共有」、「フェア・リターン」、「市場原理」の3つの方針が必要だ、というスタンスを固めました。これらの方針を起点に、国際共同開発機関の設立、宇宙開発市場の創設、宇宙環境税とその基金の活用などの主要政策をまとめていきました。

 

オンライン会議に関する準備

 

PCの画面越しでは、ホワイトボードなどで視覚的に伝えるのが難しく、また全員で画面を共有するため一人当たりの発言時間は限られることを想定していました。そのため、自分たちが練り上げたアイディアを、キーワードなどを使ってシンプルな言葉で相手に伝えられるように準備しました。

 

また、オンライン会議では表情などの反応が掴みにくいので、議論に取り残される大使がいないよう、参加者一覧等をチェックしながら、様々な意見を求めて議論が深められるよう、ペアと事前に相談しました。

 

逆にオンライン上では1人が喋り続けることもできてしまうため、協調と会議コントロールのバランスをどのように取るのか対策を考えながら会議に臨みました。また、ペアとすぐに連携が取れるように、主にLINEの使用方法について、綿密な打ち合わせを行いました。

 

 

■大会当日は、どのようなことに気を付けながら会議に臨みましたか。

 

まず、問題解決に向けて確実な一歩を踏み出せるインパクトのある決議作りを目指しました。DRを通すためだけであれば、曖昧でいかようにも取れる主張を並べることで多数派を形成できるかもしれませんが、あえて対立軸にも踏み込んで具体的な政策を議論し合い、新たな国際行動に結び付けなければ大使として価値を生み出すことはできないと考えました。終始時間との戦いでしたが、協力し合う国々と「何を変えるのか」に最後までこだわって行動しました。

 

次に、必要だと考えた場合は、反論を恐れず、周囲に迎合せずに自分たちの考えを伝えるように心掛けました。会議中は他国からの激しい攻撃もありましたが、建設的な意見のぶつけ合いであれば、優れた政策を作り出すためにはむしろプラスだと捉えて対応しました。国益や共同利益を実現するためには、政策を自らチェックし意見表明によって議論を戦わせる段階を避けてはいけないと感じたからです。WPやDRの作成時には、大使として客観的にその内容を判断し、各国の利益のために修正が必要と考えた点は、相手国にその理由をわかりやすく説明して交渉するよう努力しました。

 

最後に、たとえ時間が迫っていても、できる限り各国とコミュニケーションを取ることで議論を深められるように集中しました。反対意見を含めて十分に話し合うことは、遠回りのように見えて、メンバー間でゴールが確実に共有される効果があったと感じます。

 

自分たちの政策はオープンな市場創出によって国際分業を進め、各国の平等な参加と利益分配を目指すことを説明し、各国の意見を聞きながら必要な修正を加えていきました。時間一杯議論を続けた結果、内容を反映させたDRを完成させながらあと一歩のところで最終提出ができませんでしたが、ベストと思える宇宙政策について、対立を越えながら作り上げたことに後悔はなく、多くの大使と本音で意見をぶつけ合えたことに充実感を感じています。(伊藤くん)

 

自分1人の意見だけではなく、様々な大使の方と協力して一緒にDRの作成を進めることを心がけました。会議では、一国一国の国益よりマジョリティの意見が通ることが多々ありますが、ドイツ大使として、自国の国益に反することに関してはしっかりと意見を言い、ドイツに絶対に不利にならない決議案作りを心がけました。(坂崎くん)

 

 

■あなたが感じた、オンラインの模擬国連とリアルの模擬国連の、それぞれの長所・短所を教えてください。

 

オンライン模擬国連

[長所]

発言の機会を工夫して割り振ることで、声の大小などに関わらず、各大使が全員に向かって話す時間を偏りなく確保できる点です。また、文書作成の際に手分けしてみんなで共同編集できる点も利点だと感じます。全般的に、公式なコミュニケーション手段については、調整する際の効率がアップし、リアル模擬国連以上に進めやすいと感じました。(伊藤くん)

 

(1)全国各地の自宅から参加できること

(2)紙媒体を用いずに資料の共有やディスカッションを行えること

(3)ペア間での情報共有をオンライン上で容易に行えること

(4)参加者個人の声の大きさに左右されることなく議論を進められること

などが長所だと思います。(坂崎くん)

 

 

[短所]

画面越しではホワイトボードなどで視覚的に伝えるのが難しい点や、表情などの反応が掴みにくい点です。また、ペア間で通話やSNSによる情報共有を常に行うのは非常に難しく、お互いを信頼しつつ相談なしで判断しなくてはならない場面がありました。全般的に非公式コミュニケーションの取り方については、工夫の必要があると感じています。(伊藤くん)

 

(1)Face-to-face ではないため、リアルと比べ、コミュニケーションが難しいことが多々あること

(2)ネット環境の差によってパフォーマンスに差が出てしまうこと

(3)1人がずっと喋り続けることが容易であるため、全員が議論に参加しにくい環境となってしまい、短絡的な結論に陥りやすいこと

(4)アンモデにおけるグループ間のコミュニケーション(外交)が難しいこと

などが短所だと思います。(坂崎くん)

 

 

リアルの模擬国連

[長所]

オンラインと比べると外交を目に見える形で派遣しやすく、外交会議が開きやすいことが挙げられます。各国の駆け引きや反応、他のグループの動向など非公式な情報を正確に掴みやすいのは利点だと思います。個人的には、最初のアンモデで各大使が大声を張り上げてグループ形成を行っている時間が一番好きです。これを聞くと「あぁ、模擬国連してるなぁ」という気分になり、リアルならではの独特な雰囲気を肌で感じることができます(笑)。(伊藤くん)

 

(1)実際に人が集まるので、オンラインでは体感できない熱量があること

(2)会議の進め方について、議論が紛糾するオンラインと違い、アンモデにおいてスムーズにグループ分けができるので、議論を深く掘り下げることができること

などが長所だと思います。(坂崎くん)

 

 

[短所]

話す国が、特定の国に定まってしまうことが多いという点です。初めの方は各国で活発に議論するものの、WP・DR提出時は文書作成に関わらない大使が多くなり、少数の国以外はただ内容を聞く形になりがちです。コンバインについても広く意見を聞こうとする場合、オンラインと比べると主に時間面でのマネジメントがかなり難しいのではないかと感じます。(伊藤くん)

 

 

■2日間の感想を教えてください。

 

大会の2日間は、自分たちが想像していたよりはるかに苦しく、楽しく、そして何より素晴らしく、あっという間の体験でした。

 

コンバインが時間通りには進まず締め切り時間が刻一刻と迫る中で、僕たち先進国グループはDRを作り上げるため必死に論点整理とグループ間折衝を行っていましたが、終了間際になって途上国が続々と賛同の輪に加わってくれて、遂に最大グループにまでなるという奇跡が起こり、思わず感動で涙が出そうになりました。最終的に、提出DRは政策と国名の一部記載が間に合わず取り下げる結果になりましたが、もし提出していれば多数国の参加によりほぼ確実に可決されていたので、自分たちのタイムマネジメントと文書編集力が及ばなかったことに対して、先進国・途上国連合グループの大使の皆さんには本当に申し訳なかったと感じています。

 

一方で、最後の数秒までより良い政策を共同で作る努力を惜しまず、異なる立場の国々が結集して一つのDRをまとめ上げたことにはやり遂げた達成感を感じるとともに、この場で出会えた仲間に心から感謝しています。自分たちの政策は、実現には多くの困難が伴うものの、国際社会にリアルに提言できる内容を目指しており、大会の公式記録には残りませんが、自分たちの記憶に残るメッセージを作り上げることができたと確信しています。

 

そういう点では多くの反省はあるものの、会議で楽しみながら悔いなく議論するというボトム目標はもちろんのこと、対立を越えてリアルな宇宙利用政策を創り上げるという一番の目標も達成できたと思います。これから模擬国連に取り組む人たちには、アイディアを考え抜き反論を恐れずに議論の輪に飛び込むことで、大きな成果や達成感を仲間と分け合えることをぜひ伝えたいです。僕たちもこの活動を模擬国連にとどめることなく、JAXAに在籍する学校OBなどを通して政策案に対する専門家視点のフィードバックを貰うなど、次に自分たちができることを考えていこうと思います。(伊藤くん)

 

 

全日では普段の練習会とちがい、全国各地からさまざまな価値観を持った学生が集い、非常に有意義な議論ができたと思います。私個人は他の大使との意見の相違や模擬国連に対する価値観の違いなどで、少なからず辛いことや理解し難いことに悩まされたが、それも含めて、今回の全日は私に模擬国連の楽しさを伝えてくれたと思います。公式の大会にはもう出場できませんが、これからも鍛錬を積んでいき、精いっぱい模擬国連を楽しみたいと感じています。(坂崎くん)

 

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