2016ひろしま総文 自然科学部門

ソフトテニスボールの回転の仕方を、4年にわたって徹底分析!

【物理】富山県立富山東高校 科学部

(2016年7月取材)

野崎弘晃くん(3年)
野崎弘晃くん(3年)

■部員数

15人

(うち1年生4人・2年生7人・3年生4人)

■答えてくれた人

野崎弘晃くん(3年)

バウンド時のボールの回転の変化について

ソフトテニスボールに回転をかけて落下させると、バウンド後に反転する!

ソフトテニスボールを地面と平行に回転させながら落下させると、バウンド後にボールの回転方向が反転するという現象があります。

 

このことを中学2年生の時に発見して以来、僕はこの現象に関して、ボールの回転方向が反転する条件やそのメカニズムについて調べています。

 

これまでにも関連した実験と調査を行ってきましたが、今回はその現象が起こる条件やメカニズムに加えて、実験中に新たに見つけた不思議な現象についても探究しました。

実験用の落下装置の仕組み

実験に使用した装置を説明します。脚立に落下装置とその電源装置を固定し、落下地点にカッター台とハイスピードカメラを配置しました。ボールの回転数はこのカメラによって求めました。

落下装置は左のようにボールを三つのタイヤで挟み込み、うち一つのタイヤをモーターで回転させられるようになっています。これの装置によって、バラつきがある人の手によらずに一定の回転数で実験することができます。

実験1「摩擦と回転」の関係は?

まずは、ボールとの静止摩擦係数と回転比の関係について実験しました。

 

落下地点に左の8種類の素材を使い、それらがボールの落下後の回転にどのような影響を及ぼすのか調べました。

 

今回は測定をしやすくするために、静止摩擦係数との関係を出しましたが、ボールは回転しながら地面と衝突するので、動摩擦係数を使うほうが適切だったと考えています。

結果のグラフです。

 

回転比とは「バウンド前」に対する「バウンド後」の回転数ですから、これが正の値の時に回転方向は反転しています。

 

氷以外のすべての素材で回転方向が反転していることがわかり、また静止摩擦係数が大きくなるにつれて回転比が大きくなることもわかりました。

このことから、回転方向が反転するのは、ボールが地面に衝突する際の回転方向に対する摩擦が原因であると考えました。

 

つまりボールが接地すると、地面との摩擦によって接地部分の回転数は落ちますが、接地していない上部は元の回転数のままなので、ねじれが生じます。ボールが再び地面を離れると、ねじれを解消すべくボールが逆方向に回転すると考えました。

そこで、透明なケースを用いてボールの落下と接地の様子について真下からカメラで撮影しました。ねじれがわかりやすく見えるように、ボールにマジックで45°ずつ線をひいています。やはり接地直後にボールはねじれていました。

実験2「回転数とバウンドの高さ」の関係は?

次に、バウンドの高さと回転比の関係について実験しました。

 

ボールの回転数を、2.0V・2.5V・3.0Vの三段階に電源を調節し、それぞれの場合について実験しました。結果を散布図として、それぞれの回転数の段階について表しました。結果、どの電圧においても、回転比とバウンド差について程度の差はあるものの、正の相関関係が認められました。

 

つまり、回転をかけたほうが、回転をかけなかったときよりもバウンドが高くなるということです。この結果は当初の予想とは反していたので、不思議に思いました。


そこで、この現象を説明するために仮説を立てました。ボールが回転しているとき、遠心力によってボールは外向きに引っ張られるので、真横から見ると楕円の形になります。

 

この変形により、ボールは地面に対して水平方向に密度は低くなり、垂直方向に密度が高くなるので弾性力が上がるのではないかと考えました。弾性力が高ければ、同じスピードで落下しても跳ね返る高さは高くなります。

 

この仮説を試すために、変形率と回転速度の関係を調べました。具体的には、ボールを回転させるために使う電源の電圧を0、1.5、2.0、2.5、3.0Vまで変化させ、すべての条件で5回ずつ実験しました。

 

変形率はボールの元の形状に対する比で、1から遠ざかるほど変形しているということになります。

 

結果、回転をかけているほうが、回転がない場合よりも変形していることがわかりました。しかし、回転数が0回/秒から5回/秒の間のデータを取れなかったので、どのような関係で変形率と回転速度が結ばれているのかは、結論がでませんでした。 

実験からわかったボールの回転のメカニズム

ボールと接触する地面の静止摩擦係数が大きいほど、回転比も大きくなることがわかりました。このことから、ボールが反転するメカニズムは、接地の際に摩擦力によって生じるねじれに対する反動であると解明しました。

 

また、回転をかけるとバウンドが高くなりました。これは回転するときにボールは横につぶれ、弾性力が上がるからだと考えました。その根拠として、ボールは回転をかけると潰れることも確認しました。ただし回転速度と変形率の関係はまだわかっていません。

 

今後はボールと地面の動摩擦係数とバウンド時の回転比の関係やボールの変形率と回転速度との関係についてさらに詳しく実験していきたいと思います。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

私が中学2年生の時に、ソフトテニス部に所属していました。その時、ボールを地面に平行に回転させて落としたところ、落とした時とは逆向きに回転してバウンドすることに気が付きました。私はもともと、ボールの回転方向は変わらないと思っていたため、この現象がとても不思議に感じ、何故ボールの回転方向が反転するのか、そしてその条件について研究することにしました。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

時期によって違いますが、1日3~6時間で20カ月以上、実験・データ解析をおこないました。また、この研究を始めたのは中学2年生の時(2012年5月頃)で、高校3年生までの4年間研究を行ってきました。中学3年生の時は別の研究をしており、この研究はしませんでした。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

電流などの小さな実験とは違い、比較的規模の大きい実験なので、どうしても誤差が大きくなってしまいます。そこで、どうすれば、データの精度を上げられるのかを考えるのに苦労しました。

 

中学2年と高校1年の時は私一人で研究をしていたため、回転速度・回転方向を調べるためのハイスピードカメラと落下装置の操作、そしてボールの回収などを一人で行わなければならず、体力的にも大変でした。

 

また、1回の実験で得られた60本以上の動画から、回転速度、ボールの潰れた高さ、バンドする高さなどを解析し、データをまとめる作業にも苦労しました。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

落下装置を工夫しました。ボールを手で回転させて落としても実験は可能ですが、再現性がありません。そこで、できるだけ一定の速度で落とすことができるように、タイヤを使った落下装置を製作しました。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

・『ファインマン物理学 <1>力学』ファインマン、坪内忠二 訳 (岩波書店)

・『視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録」数研出版編集部(数研出版)

 

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

今年で高校を卒業するので、私自身がこの研究を継続することは難しいですが、後輩に引き継げるのであれば、ボールが落下・上昇しながら回転速度が変化しているか否か、ボールと落下地点の動摩擦係数と回転速度の関係など、私がやりきれなかった実験を行い、それぞれの関係性について解明してほしいと思っています。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

毎年秋に行われる県の自然科学部発表会出場に向けての研究を中心に、校内の文化部発表会で展示、実験ショーを行ったり、教科書に載っている実験を行ったりしています。

 

 

■総文祭に参加して

 

県大会などで何度か口頭発表はしていましたはが、全国大会での発表は初めてで、いつも通り発表できるか少し心配でしたが、わかりやすく丁寧に説明することができて、とても楽しめました。また、交流会では他県の人たちと交流ができ、とてもよい機会だったと思います。

 

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