2016ひろしま総文 自然科学部門

鹿児島の象徴 桜島の「火山雷」の発生メカニズムを火山灰から解き明かす

【地学】鹿児島県立錦江湾高校天文物理部

左(旗側)から、前畑圭佑くん(3年)、山本翼くん(3年)
左(旗側)から、前畑圭佑くん(3年)、山本翼くん(3年)

■部員数

6人(うち1年生1人・2年生2人・3年生3人)

■答えてくれた人

山本翼くん(3年)

 

火山灰の帯電状態に起因する火山雷

観測に必要な装置を、自分たちで作ってしまった!

私たちは2009年から、桜島火山の火山雷について継続的な観測を行ってきました。火山雷とは火山の噴煙中で発生する放電現象であり、火山灰などの火山噴出物が摩擦し帯電することで起こると考えられています。

しかし2014年以降噴火回数が減少し、さらに生徒のみでの夜間の観測も行えなくなったため、火山雷の観測が困難になりました。そこで、少ない観測回数を活かし、かつ空が明るく火山雷の光学的観測が困難な昼間でも何らかの観測を行いたいと考えました。その結果、降下火山灰の電荷を直接測定する「降下火山灰電荷量測定器」を開発するに至りました。これにより、噴煙中の電荷分布を調べることができるようになりました。

 

降下火山灰電荷量測定器の仕組みを説明します。

 

図のように、測定器の中には正負それぞれの電極があり、高圧電流が流れています。火山雷が発生し、静電気力によって帯電した火山灰が測定機上部中心の穴に入ると、正に帯電した火山灰は負の電極に、負に帯電した火山灰は正の電極に引き寄せられながら降下します。

受け皿は写真のようになっており、これにより火山灰が電極に引き寄せられて中心から移動した距離を求めることができます。

こうして得られた中心からの距離を下図の比電荷を求める式に代入し、それを質量で割ることで電荷量を求めました。

以上の装置で電荷量を求め、火山灰の帯電状況と火山雷の関係性を調べました。

 

降灰開始直後と終了後では、火山灰の帯電状態が明らかに違う

その結果、下図の通り、降灰開始直後(左のグラフ)は大きな粒径の火山灰が多く、負に帯電したものが多かった一方で、降灰終了後(右のグラフ)は小さな粒径の火山灰が多く、正に帯電したものが多くなりました。

総電荷量については(下のグラフ)、降灰開始時の火山灰は負の総電荷量が多く、降灰終了後は正の総電荷量が多くなりました。また、平均粒径については、降灰開始時と降灰終了後で、特徴的な差は見られませんでした。

さらに、密度について調べると、降灰開始時よりも終了時の方が比重は平均的に1.3倍重いことがわかりました。また、組成については、降灰開始時の方が終了時よりも磁鉄鉱を含む安山岩基質の岩片が多く含まれていました。

 

火山雷の起きやすい条件を帯電という観点から考える

以上の結果をもとに考察をまとめます。

 

噴煙下部の火山灰が先に降り、上部の火山灰が後から降ると仮定すると、噴煙は下図のように下部は負に帯電しており、上に行くほど正に帯電しているものが多くなり、噴煙上部・中部・下部で火山灰の帯電状態が異なっていると考えられます。

また、火山灰中の黒岩片(磁鉄鉱を含む)の割合と電荷量の関係性を比較したところ、下図のようになりました。経験的に、火山雷は黒い灰の時に起きやすいですが、降下火山灰の降り始めは降り終わりよりも黒岩片の割合が高くなっています。黒岩片は比重が重く、また帯電しやすい磁鉄鉱が多く含まれています。このため、火山雷は黒い噴煙の時に発生しやすいのではないかと考えました。

今後の課題としては、

・上部の火山ガスの帯電状態を調べること、火山灰の組成をより詳しく調べること

・火山雷の有無と降下火山灰の帯電状態の関係性を解明すること

・2点間で同時に降下してくる火山灰の帯電状態の関係性を明らかにすること

・雨の時でも観測できるような観測装置の工夫・改善を行い、雨が降って濡れて降下した火山灰が帯電して火山雷が発生することがあるのかを調べること

・火山灰の摩擦実験を行い、火山灰どうしで電荷を帯びるか確認すること

などを考えています。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

先輩が火山雷について研究をしていた時、火山雷が何によって発生するのかよくわかっていなかったので、その発生原因の一部と考えられる火山灰を研究してみよう、ということになりました。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

火山雷の研究は4年前から、火山灰の研究は1年前から。1日あたり4時間で12カ月。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

・火山灰を袋に回収して分析しないといけないので、袋に火山灰を回収するのが大変でした。

・研究が天候や気象条件に左右されて大変でした。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

実験装置の受け皿を火山灰が回収しやすいように1レーンごとに取り外しにしたことや、電源の電圧を調整するために安くで仕上げるために紙で抵抗器を作ったことです。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

『桜島火山の集中総合観測. 第8回(平成3年10月~平成4年3月)』京都大学防災研究所附属桜島火山観測所 編

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

今回はデータが少なかったので、今後も続けてデータを増やしていきたいです。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

休日は火山灰の回収に行ったり、平日は回収した火山灰の質量や長径などを測ってパソコンでデータ処理をしたりしています。

 

■総文祭に参加して

 

全国に様々な研究を見ることができ参考になりました。大会で学んだことを今後の研究に生かしていきたいです。

 

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