第84回情報処理学会全国大会 第4回中高生情報学研究コンテスト

この白杖1本で視覚障害者の安全な歩行を実現!

チーム名:高々1619@物理部

 

高田悠希くん(群馬県立高崎高校 1年)

 

スマート盲導杖「道しる兵衛」〜AI搭載白杖による視覚障害者歩行支援〜

 

視覚障害者の歩行時の危険を回避する目的で、画像認識AIを搭載した白杖を小型コンピュータ「RaspberryPi」を用いて開発した。

 

従来の白杖は、触れることにより障害物を検知し歩行時の視覚障害者を危険から護る道具だが、そのアナログな仕組みでは、視覚障害者を歩行中の重大事故、例えば駅ホームからの転落事故や歩行者や自転車との衝突事故から護ることは困難である。そこで白杖に測距センサーを取り付けた「電子白杖」の開発がこれまでにも行われてきたが、それも上記のような重大事故を防ぐには不十分である。

 

ここで、画像認識Alを用いて視覚障害者の「目」の代わりとなる機能を白杖に持たせることを考えた。

 

この白杖は、線路や横断歩道などの画像を学習させた独自のAlと搭載したカメラにより、その有無を使用者に伝え、転落事故や交通事故の防止に繋げることができる。

 

また、センサーではなく、カメラ画像から前方の歩行者や自転車を検知することで、より早くそれらの存在を伝え、衝突事故を回避することが可能となる。

 

※クリックすると拡大します。

 

■今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。

 

視覚障害者の方々が移動中、駅のホームからの転落事故や道路横断中の交通事故、歩行者や自転車との接触事故が多く発生しており、それを何とか解決したいと思ったからです。

 

もちろん、同じことを思っている人は多く、既に視覚障害者の事故を防ぐ目的の取り組みは多くなされています。その代表例が「駅のホームドア設置」や「音響式信号の設置」です。

 

確かにこれらの設置によって、ホームからの転落や道路横断時に横断歩道を見失うといったことは、かなり少なくなるに違いありません。確実に事故が減ることはデータから見ても明らかです。しかし、僕の住む群馬県ではほとんど設置されていないのが現実なのです。実際、ホームドアの設置率は全国でも1割未満であり、群馬県への普及はまだまだ先の話になってしまいそうです。

 

そこで、そのような環境側の整備を待たずとも白杖1本あればそのまま事故を防げる、そんな製品が必要であると考え、この研究を始めました。

 

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。

 

カメラと画像認識 AI を使おうと思い立ったのが 5月のGW前あたりで、そのために必要なプログラミング技術などを、その場その場で学びつつ(プログラミングは完全に初心者だったので)、作品として形になったのが7月くらいです。製作自体は2か月で終わりましたが、その後、群馬県視覚障害者福祉協会様での試用・インタビューなどを行って改良を重ねていき、まだまだその途中です。

 

 

■今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。

 

最も苦労したのは、発熱問題です。ファンなどを取り付けていなかったので、基盤の入っているボックスを空気穴だらけにするなど、多くの工夫を施しましたが、それでも夏場での長時間使用は無理があるレベルでした。現在は新しく筐体を開発し、ファンの取り付けなどを行うことを計画しています。

 

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。

 

特に工夫したのは、線路や横断歩道の検出に「その『見た目』そのもの」を利用したことです。『見た目』という視覚情報そのものを使うことによって、普段我々が線路や横断歩道を判別しているのと同じ方法で判別するので、当然線路や駅のホームなどに何の細工をする必要もないわけです。

 

また、センサーの取り付ける位置・角度も調整しました。小さな段差にも気づけるよう、センサーを杖の先端付近の位置に取り付け、また、持った時に地面と平行になるよう、実際の視覚障害者の方がどのような角度・位置で白杖を持っているのかを調べ、地面に対して平行になる角度を計算して取り付け角度を決めました。

 

 

■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。

 

この「みちしる兵衛」は先に挙げた発熱問題しかり、まだまだ課題もあるのでこれからも継続して研究を行っていきたいです。

 

実際の視覚障害者の方に意見を聞いたことで、音声認識やナビゲーションなど、必要とされている機能について多く挙がってきました。そのなかで本当に必要とされているものは何か、またそれをいかに最適な形で実装するか、これからも試行錯誤を続けていきたいと思います。

 

 

第84回情報処理学会全国大会中高生情報学研究コンテスト ポスター発表より

 

※ 高々1619@物理部の研究は、中高生研究賞最優秀賞・文部科学大臣賞を受賞しました。

 

 

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