世界へ”FLY”する東大生

~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ

登阪亮哉くん(東京大学)

第16回 ニューヨークの幼稚園から高校までの一貫校・Riverdale Country School訪問記 その1

~人格教育を重視。Adventurousness(冒険心)からZest(熱意)まで写真や絵で提示

 

今回は、ニューヨークにあるRiverdale Country Schoolを訪問しました。アメリカでもっとも授業料が高い幼稚園の一つであり、先生全員分のノートPCが用意されていたり、多くの教室に電子黒板が付いていたりと、最新の設備が整っています。また、各クラス20名に対し担任と副担任がそれぞれ配属され、さらに課外活動や音楽の時間には専任の先生がそこに加わるなど、先生の人数も充実しています。

 

幼稚園から高校までの一貫校であり、人格教育(Character Education)を重視した独自のカリキュラムのもと、学力だけではない子どもたちの様々な側面を成長させようとしています。Adventurousness(冒険心)からZest(熱意)まで、重要な能力・態度をアルファベットごとに写真や絵や文章とともに提示したものが、校内のいたるところに貼られています。特に重視しているのはEmpathy(共感)で、学力が高いだけではない“Good person”を育てることを目標としています。

 

学習面については“Learning through doing”を標語としており、子どもたちが実際に何かをすることを通して学ぶ機会を与えています。また、Countryの名前通り周囲には自然が多く、敷地内でもたくさんの植物を育てており、日常的に自然の観察を行っています。

 

はじめに、各教室を見学しました。

 

本校舎
本校舎

Riverdale County Schoolの幼稚園と小学校低学年を擁するRiverdale campusには、4つの建物と、広い園庭とテニスコートがあります。4つの建物はそれぞれ、食堂がある建物、図工及び音楽に特化した建物、高度な学習を行うための建物群であるLearning Complex、そして授業を行う本校舎です。

 

子どもたちはスクールバスか自家用車で登校し、まず先生に挨拶して本校舎へ向かいます。挨拶担当の先生の話では、一日の始まりである挨拶はとても重要だそうです。この時に子どもたちの様子をチェックし、元気がなさそうな子には声をかけていました。特に変わった点があれば担任の先生に報告します。そのため、挨拶担当の先生は子どもたち全員の名前を覚えていました。

 

グループワークのため色分けされたホイール付きの椅子
グループワークのため色分けされたホイール付きの椅子

挨拶の後、Learning Complexを見学しました。ある教室には、全員分のMac bookと4色にわかれたホイール付きの椅子がありました。色が分かれており、かつ移動しやすいため、グループワークに用いるそうです。また、先生のパソコンの画面を映すプロジェクタは最新のもので、スクリーンにタッチすることでパソコンを操作することができます。

 

別の教室には、中世の海戦を模したジオラマがありました。小学生はこのジオラマを用いて、歴史や地理や物理や数学などを複合的に学ぶそうです。船同士の距離を計算する過程で根号を扱った形跡もありました。この教室はMAKE SPACEと呼ばれ、専門的な工具なども置いてありました。

中世の海戦を模したジオラマ
中世の海戦を模したジオラマ
“Social justice”をテーマに、児童労働やセグリゲーションについて調べて描いた絵
“Social justice”をテーマに、児童労働やセグリゲーションについて調べて描いた絵

次に、図工や音楽のための建物を見学しました。音楽の教室には、ピアノやステージだけでなく、ドラムセットまでありました。図工の教室には様々な画材があり、個人の作品や共同制作の作品が展示されていました。複数人で作る作品が多かった印象です。その中には、Project Based Learningの一環として“social justice”を表現する絵を描いているものもありました。

 

最後に、本校舎を見学しました。校舎の中を歩いていて目につくのは、文字の多さです。廊下にも、教室にも、体育館にさえ様々な文字が書かれてあります。例えば体育館には、前述のCharacter Educationのための問いかけが書かれてありました。また、廊下の掲示物で特に面白かったのは、昨年の入学生が今年の入学生に対して「私たちが学んだこと」というテーマで絵や文章を描いたものです。「本の読み方を学んだ」「6+6=12で、6+6+6=18だと学んだ」「チューリップの植え方を学んだ」など、それぞれが自分の学びを振り返っていました。

 

 

体育館に貼られていた、子どもたちへの問いかけ
体育館に貼られていた、子どもたちへの問いかけ

本はとても多く、図書館に加えて各教室に必ず本を置くスペースがありました。“1 book+1 mind leads an adventure”と書かれているなど、読書を重視する姿勢が見られました。教室では様々な種類の授業が行われていました。算数の授業では、一人の子どもが問題を解いているのをみんなで見ていました。先生は様子を見つつ、子どもの手が止まるとヒントになるような問いかけを与えていました。別のクラスでは、スペイン語で絵本を読み聞かせていました。4歳からスペイン語の授業があるそうです。

 

授業についての話を聞く中で特に印象的だったのは、各クラスが一日のどこかのタイミングで必ず瞑想の時間を取っていることです。Stillness(沈黙)と呼ばれており、セルフコントロールを身に付けるために最も重要なことの一つだそうです。

 

次回は、実際の授業の様子についてレポートします。

 

※東京大学初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/fly/

前回の記事を読む

第1回 「飛び込め、躊躇なく」 世界一周を実現するチャンス
~FLY Program参加を決意したわけ

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第5回 なぜ幼児教育を取材テーマにしたか

第6回 休学経験者インタビュー:
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~生ぬるい自分を変え、同世代にいろいろな選択肢を示したい

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