沸騰しながら凍る水?! 三態変化のメカニズムを追いかける


【物理】長野県野沢北高校 理数科物理部

左から秋山柚貴くん、岩下宏紀くん、真下広輝くん(3年)
左から秋山柚貴くん、岩下宏紀くん、真下広輝くん(3年)

◆部員数 3年3人
◆書いてくれた人 真下広輝くん(3年)

■発表内容「沸騰しながら凍る水」

水を真空容器に入れて減圧することで、室温でも沸騰(※1)させることができます。これは、水の三態(氷・水・水蒸気)が温度と気圧によって決まるためです。

※1 液体の内部から気化がおこり、気泡が上る現象。
 


この時、沸騰している水の水温を測定すると、温度が低下していることがわかりました。

これは水分子が液体から気体に変わるときに周りから気化熱(※2)を奪うためです。


この現象は、身近な所では打ち水などに応用されています。ここで実験結果を整理してみると、減圧下では水が室温下でも沸騰し、かつ水温が下がっています。そこで私たちは、「水を沸騰させながら氷結させることも可能なのではないか?」という仮説を立てました。


※2  気化するのに必要な熱量。 

[実験]
室温下の水を真空容器にいれて減圧し、先ほどと同じように水温を測定しました。


結果、水温は凝固点に達する前に一定温度に保たれてしまいました。そこで、様々な水温で実験を繰り返してみました。


しかしいずれも凍結しませんでした。その後、水の体積やビーカーの種類など多くの条件を変えたものの水温の変化は凍結するには小さすぎました。

 

そもそも真空状態において液体を凝固させるのは可能なのか疑問に思い、凝固点が水よりも高い酢酸(凝固点16.6℃)を先ほどと同じ条件下で実験してみました。その結果、酢酸はみごとに沸騰しながら凝固しました。このことから、理論的には水も凝固させることが可能であることがわかりました。

 

では、なぜ先ほどの実験は失敗したのか、その原因は私たちが使用している学校の真空装置の精度ではないかと考えました。私たちが使っている真空装置は、構造上どうしても空気が若干入ってしまうからです。

そこで、さらに精度の高い装置でより低圧な状態を実現できたら実験は成功するのではないかと考え、信州大学に真空装置をお借りしました。

今回は、凍る際の核となる氷を入れて実験しました。その結果、水は見事に沸騰しながら凍結しました。


ただし、少しでも条件が違うと凍結せず、多数回の試行のうち水が凍結したのは1回のみでした。今後、水が確実に凍結するために満たすべき条件を探してみたいと思います。そのために、どのような条件下で水は凝固するのかを調べていきたいです。


■研究を始めた理由・経緯は?

物理の授業で「真空」ついて学び、興味を持ちました。真空の研究を進めるうち、水を真空状態下に置くと、沸騰し始め、水温が低下するという事実を知り、詳しく調べました。

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

着想から1年半、多くの実験をした月やあまり出来なかった月もありましたが、いろいろな実験をしながら、少しずつ研究を進めてきました。

■今回の研究で苦労したことは?

冬場の研究では凝固点の高い酢酸やドデカノールが室温ですでに凍ってしまうこと。肝心の水がなかなか凍らなかったこと。

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

物理の知識がない方でも理解できるように、なるべくわかりやすく発表しました。研究タイトルにもある、実際に「液体が沸騰しながら凍る」ところをその原理も理解しながら見てほしいと思います。

■次はどのようなことを目指していきますか?

今回の活動をそれぞれの進学先で活かしたいと思います。

■ふだんの活動では何をしていますか?

研究の初めの頃は、水以外にも色々なもの(扇風機、ベビースターラーメンの袋、電波ポケベルなど)も真空装置に入れて観察しました。物理の教科書に出てくる事柄の実験をしていました。

■総文祭に参加して

自分たちの研究をより多くの方にお見せできたことに加え、全国から集まった同じ高校生たちのとてもハイレベルな研究を聞くことができ、大変貴重な経験になりました。この大会に出場するまでに自分たちを支えてくださったすべての方々に感謝したいと思います。


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