全国の高校生徒会役員が大集合、「生徒会って何のためにあるのか」をとことん考えた3日間

第4回全国高校生徒会大会

インタビューvol.4

理想の生徒会像は、「生徒が奇跡を信じられる生徒会」

メインディスカッションを担当した2人の議長、長谷川剛志くん(灘高校2年)、川越華佳さん(横浜雙葉高校2年)にインタビューを行いました。

 

■長谷川剛志くん(1班議長/灘高校1年[兵庫県])

 

――ふだん学校ではどのような生徒会活動をしていますか。

 

現在、東北企画、交流委員会の副代表を務めています。東北企画とは、灘校における東北関連の活動(ex.東北合宿)の統括をしている団体です。交流委員会は、他の学校でいう外務に当てはまる委員会で、関西生徒会連盟やNSCCへの参加、地元の芦屋市のサマーカーニバルの学生ボランティアの派遣等が主な活動です。

 

――1班は東北交流(=東日本大震災の被災地との交流・支援)について議論していましたが、まずどのような問題点が挙げられましたか。

 

質問をはなから否定するようで申し訳ないですが、今回の議論では、問題点は極力出さないように心がけました。

 

それは、「継続してできるプランを作成してほしい」という思いからです。仮に、問題点から解決策を考え、実行に移すとなった場合、問題点から考えている以上、どうしてもそのプランが自分たち生徒会にとって無理なく、そして本当にしたいと思える活動であるかが不確定であるわけです。ですから、今回は問題点から考えるのではなく、自分たちが現在している活動から派生して行える、余裕のある持続可能なプランを作ってもらいたくて、問題点を考えずに議論を進めました。

 

――ディスカッションをする上で大変だったことは何ですか。

 

まず、アクションプランを作成するための共通のコンセプトを決める、というセクションを事前に与えられていました。しかし、私が灘校という自由な校風の学校で育ったためか、各校の生徒の活動に対する縛りがそんなに強いとは思っておらず、議論の流れの中でうまくコンセプトを引き出せると思っていたら、「その方針だとうちではできない可能性がある」「学校が厳しいから東北に行けない」という学校があり、その辺りから議論が行き詰まり出しました。

また、「東北関連の活動をしたことがないから、そもそもどうすればいいのかわからない」という参加者もいたので、コンセプトを統一することは困難を極めました。

 

――最終的にどのような解決策、または結論に達しましたか。

 

僕たちの班の最終案は、簡潔に言うと『全国東北関連交流連盟(仮)』を創設する、というものです。

 

そこに至った経緯は、先ほどの質問でお話ししたように、一つのコンセプトを立ててそれに基づいたアクションプランを作成するのは非常に困難で、議論が行き詰っている中で、連盟を作ってみたらこの問題が解決するかもしれないとふと考えたことです。

 

「現在、東北に実際に行って活動している!」「学校が厳しくて東北には行けないけど、何か貢献したい!」「何かしたいけど、何をしたらいいのかわからない」。

 

おそらく東北の問題に何らかの関心を持っている生徒会、学校はこの3種類に分かれるはずで、またその中でも各生徒会の強み、もしくはできないことはそれぞれに持っているはずです。

 

そこで、現在バラバラで活動している生徒会を一つの団体に所属させ、各校の東北に対する活動を共有するための交流の場を提供すれば、その3種類の学校間でノウハウの共有ができるのではないか、また連盟に入っている生徒会同士で企画を立ち上げ活動することができれば、それぞれが余裕を持ってしたいことをできるのではと考え、現在設立に向けて詳細まで詰めている段階です。

 

まだ企画段階ではありますが、近いうちに発足させ、まずは小規模で実験的に行おうと考えております。

 

――今回の生徒会大会を経て得られたものは何ですか。

 

大きく2つあると思います。

 

1つ目は、自校の生徒会、またそれに付随した活動を見つめ直すキッカケです。全国の学校の生徒会はもちろん千差万別なので、「この学校のここがいいから、うちのこの部分を修正したらもっと良くなるな!」という機会が多くあったことが今回の一つの収穫であると思います。

そして、2つ目は横の繋がりです。

 

先ほどの質問でも述べたような企画を立ち上げたり何かしたりするにあたって、全国の生徒会につながりを持てたことで、相互に助け合いアドバイスできる関係を持てたことは、今後生徒会活動をしていく中で、大変貴重であるなと感じました。

 

少し質問の意図とはズレるかもしれませんが、個人的には深いところまで話せる同級生、先輩後輩が様々な地域に持てたことも今後の人生において大きな収穫かなと思います。

 

■川越華佳さん(13班議長/横浜雙葉高校1年[神奈川県])

――ふだん学校生活ではどのような生徒会活動をしていますか。

 

本校で行っている生徒会活動には、大きく分けて3つの種類があります。1つ目は“生徒の望んだ企画を具現する活動”、2つ目は“学校・生徒をより良くするための活動”、そして3つ目は“社会に貢献するための活動”です。

 

ありきたりではありますが、多くの他校と同様に本校の生徒会もまた、「生徒と教職員」「地域と学校」の架け橋となるため、そして学校を客観視し改善に尽力するために設置されました。そのことを念頭に置いた上で、上記3つの活動を行っているわけです。

  

――「生徒会の組織論」について議論していましたが、どのような問題点が挙げられましたか。

 

生徒会の組織論における議論では、まず初めに「生徒会の存在意義とは何なのか」「生徒会は何をするための組織なのか」を考えるところから始めました。そして浮かび上がったのは、「生徒と教職員の橋渡しをする組織が生徒会である」「全校生徒の信託に基づき選出された生徒が、皆の意向を汲み企画として実現させることで、社会の縮図としての役割を担っている」「学校を動かす生徒会員を全校生徒が選出することで、生徒が学校を変革できるのだという自信が生まれ、環境改善に向けた意欲がわく」といった意見でした。

 

しかし、次に「では今日の生徒会活動において抱えている問題点は?」と問うと、「生徒会活動に対する生徒の関心・意欲がない」「先生との軋轢等で企画が前進しない」「生徒から改善や要望の意見が集まらない」等の声が上がり、先に述べた生徒会の存在意義を全く果たせていない状況であるということが浮き彫りになりました。

 

これらが、今日の生徒会組織についての議論で挙げられた問題点です。

 

――ディスカッションをする上で大変だったことは何ですか。

 

今回の議長を務めて何よりも大変だったのは、「論題が理解できなかったこと」です。

 

私の班の議題は「自治集団としての生徒会」であり、今回の議論の最終ゴールは「一人ひとりの生徒会における哲学を形成する」というものでした。「数々の経験をしてきた人たちが最後にたどり着く、最も奥深い問いです」という発議者の話通り、情けない話ですが、最初にこの打ち合わせをした瞬間から私は困惑状態に陥り、どのような形で議論を進めて、最終的にどのような形に落とし込めばいいのか、明確なイメージを描くことができませんでした。一見単純明快に見えるこの議題ですが、そもそも生徒会のどのような点において自治集団といえるのか、生徒会が自治集団としての役割を果たしていくために求められることは何なのか、そして自治集団である生徒会の一役員として私たちが胸に刻むべき哲学とは何なのか・・・。溢れ出す問いはとどまることを知らず、答えは迷走の中に終わったまま、会議の時を迎えてしまいました。

 

幸い班員にも恵まれ、議長でありながら議論を進めて他者との意見交換をする中でやっと本質を理解し進行できましたが、こんなにも根源的に難しい問いと向き合ったのは初めてのことだったように思います。ゆとりある時間の中で多彩な経験を積んだ仲間とともに、深く難しい問いの本質に向き合える。これこそが、まさに私にとってNSCCにおける至上の学びであり、同時に最も苦労した経験でした。

 

――最終的にどのような結論に達しましたか? また、理想の生徒会とはどのようなものだと思いますか。

 

理想の生徒会とはどのような形なのか、この問いに対する答えは決して容易にまとめられるものではありません。事実私の班の議論でも、一つの同じ議論を通じて最終的に導き出した班員の答えは、十人十色でした。ここでは、私自身が今回の生徒会大会を通じて至った結論を述べたいと思います。

 

私が理想だと考える生徒会像は、「生徒が奇跡を信じられる生徒会」です。今回のNSCCは、「皆さんは奇跡を信じますか」という実行委員長の一言で始まりました。これを聞いた参加者は、少なからず心中で「はい」と答えたでしょう。私たちはその奇跡を起こす糸口を探るために、3日間熱く語り合ったのです。このように高い志と希望を、全校生徒の皆にも持ってほしい。立ちはだかる壁は果てしなく大きく先が見えないかもしれないけれど、生徒がその奇跡を信じられたとき、それが理想の生徒会の姿だと思います。

 

生徒会は社会の縮図です。社会というのは上層部の数人が勇み立っていても多くの大衆が絶望していればなにも成し遂げられません。制度上の名義だけでなく、名実ともに全校生徒が生徒会員となったとき、初めて生徒会のあるべき姿になるのだと私は思います。

 

――今回の大会を経て得られたものは何ですか。

 

今回の大会を経て得たもの、これもなかなか筆舌に尽くし難いものです。しかし強いて言うならば、これもまた前述した「奇跡」の一言に尽きると思います。

 

私は今回の3日間を経て、「奇跡を信じる心」を得ました。暮らす場所や環境は全く違っても、それぞれの場所で同じ生徒会役員として、日々頑張っている仲間がこんなにもたくさんいる、そのような仲間が集まれば自分には到底思いつかなかったような意見がたくさん出てくる、そしてそんな仲間たちと絆で結ばれた今、何かあればいつでも互いに助け合うことができる。この安心感とぬくもりによって私にとっての「奇跡」は、「信じたい」ものから「信じられる」ものへと変わりました。

 

今から5年もすれば、あの日あの会議室に集った私たちはれっきとした大人となって、それぞれの道を歩んでいることでしょう。社会の担い手として活動する中で大きな壁に直面したとき、私たちはかつて生徒会活動を通して得た数々の学びを糧に前進するのだと思います。そして何かあればいつでもまた集まって、熱く意見を交わし、日本社会に、そして世界に必ずや「奇跡」を起こせるはずです。私はそう信じて前を向き進んでいく、奇跡を信じる心を得ることができました。

 

第4回全国高校生徒会大会レポート

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