学習を楽しく

21世紀の「学問の鉄人」シリーズ

受験勉強は、実はけっこう役に立つ~本気で勉強したからこそ見えてきたこと

中野 剛志(評論家)

2012819日  河合塾津田沼校で講演 


(1)自分が何に向いているかは、振り返ってみないとわからないけれど

只今、ご紹介にあずかりました中野剛志です。みなさんにお話をするといっても、いきなり誰だお前、ということかと思いますので、私自身の紹介も含めながら色々とお話をしていきたいと思います。私も大学で教えていた経験はあり、講演する機会もあったのですが、今回は聞き手である皆さんが若すぎるな、と思っています。そこで、自分がみなさんと同じような年代の時のお話を―といってもあまり思い出したくないんですが(笑)―していきたいと思います。

 

私が話をさせていただく経緯から話すと、私は2010年から2012年の間、京都大学で教えていました。その前は経済産業省にいて、役人をやっていて、そこから出向という形で、大学で教えていました。教えている時にいろいろあったんですけどね(笑)。まあそれはいいや。その時に、河合塾が、みなさんのような年代に若い研究者の研究内容を紹介をするという企画があるという話をいただきました。私が受験生の時は、大学にどんな学問があるということには、関心が及んでいませんでした。なぜかというと、そんなこと考える余裕がなかったわけで、まずは大学に入らなきゃいけなかったから。まあでも、私が学生の頃を思い返しても、そのようなことを考えて勉強しているすごいやつらもいたので、そういうすごい人たちのために、大学の学問はどういったものかということを紹介するという企画だったんですね。


その中で、私の研究というものは特異だったので、けっこう関心を持たれたのかと思います。で、河合塾と聞いて、「ああ、そう言えばオレ河合塾に通っていたな」と思い出して、なんか懐かしくて、河合塾の横浜校で1年間お世話になりましたというお話をしたところ、ぜひ学生さんたちにお話をして下さいということになりました。お役に立てるかどうか分かりませんが、いくつかお話をしていきたいと思います。

 

受験や就職であがいても、その後一生懸命やればなんとかなる


多分、私が受験生だった時のことも踏まえると、みなさんの関心ごとは大まかに分けて二つくらいかな。大学、学部を選ぶことは、その後就職するという中で、仕事に大きく関わってきます。けっこう、大きな決断ですよね。人生の中の最初の大きな岐路だと思います。だけど、何が自分に向いているのか、大学で何を勉強すればいいのか、というのは、高校生くらいでは、よっぽどすごい子じゃない限り分からないと思います。しかし、私自身の経験を含め、受験生をやって大学に入って、一緒に役所に入った友人と昔の話をすると、だいたい大学に入る前に不安に思っていたことは、その後一生懸命やれば何とかなるのかなという感じで一致しています。もちろん大学受験に失敗したやつもいますけど、そんなに大きな問題ではない場合もあれば、決定的だった場合もある(笑)。こうしゃべっていると人生ってやはり後から振り返らないと分からないところってあるんですよね。

 

私はこう見えても、今年で41歳になります。20代の時に40の時の姿なんて想像つかないですよね。私は30になっても分からなかった。でも、後から振り返ってみると、大学や就職で一生懸命あがいていると、こうなるのは最初から決まっていたのかなと思うところもあります。これは不思議なもので、私のような小者ではなく、偉い人の回想録を読んでも同じようなことが書いてあるんです。ですから、今日は私なりに41になった今から、これまでの事を振り返って、お役に立てることを話したいと思います。予め言っておきますが、決して成功した人間の人生とは言えません(笑)。かなり試行錯誤をしていました。でも、やはり将来自分がどうなるのかというのは、みなさんの一つ関心ごとだと思います。

プロフィール

中野 剛志(なかの たけし)

評論家

 

2010年~2012年京都大学准教授。 1971年生まれ。高校時代に円高不況で、実家の家業が打撃を受けたことから世の中の仕組みの解明に目覚め、そのためには正しいことを教えてくれる立派な先生がいる大学へ、と東大を目指す。浪人中に河合塾の小論文指導で出会った、当時東大院生の松浦正孝先生(現 立教大学法学部教授)に学問の真髄を教えられ、東大教養学部を勧められたことが現在につながる。「TPP亡国論」(集英社新書)等の著書やテレビの解説で、明快なTPP批判を展開する。西部邁先生の私塾に通っていた時は、「社会に出たら上司とケンカするな」と口酸っぱく言われたという逸話も。

 


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