カメラマンがみた被災地・東北

お知らせ

平林カメラマンによる東北の被災地各地に昇る希望の陽の写真展が開かれます。
●平林克己写真展「陽」- HARU - (~9/22)。→詳細はこちら
●9/20(金)19時からは宮城県石巻市雄勝町の漁師・末永陽市さんを招いたセミナーも実施。 →詳細はこちら


vol.2 被災地の日の丸

被災してしまった東北各地を回っていると、どこの街でも、必ずと言っていいほど日の丸の旗を目にしました。


東京で写真展を開催したときに、通りがかりの人がこの写真を見て「戦時中の写真かな?」と言っていたのですが、しかし、これは今の時代の東北の写真です。


この写真は、2011年5月に石巻市で撮ったものです。自衛隊がようやく道路を整備して、なんとか車両が通行できるようになったころでした。ここは海岸から1.5キロほども離れているにもかかわらず、周囲にはいまだ瓦礫が散乱し、原型をとどめている建物はほとんどありません。すぐ近くにある中学校は火災で真っ黒こげになっていました。


この日の丸は、津波と火災で一面焼け野原のようになってしまった場所に立っていました。誰が立てたかわからない。僕はこれを立てた人には会えませんでしたが、このボロボロになった日の丸には、この場所に居た人達の、悔しさ、悲しさ、怒り、復興への決意、様々な気持ちが込められているのを感じました。


このような日の丸が、石巻、東松島、気仙沼、南三陸等、東北の被災地あちこちで見られます。

 

 

日本のレジリエンスを世界に

 

2013年3月、僕は日本政府主催のJapanese Weekというイベントの一環で、ベルギーのブリュッセルで写真展を開催しました。このJapanese Weekには、日-EU間により進んだ関係を築くために、がんばっている日本の姿をEU諸国に伝える、という目的がありました。


写真展にはたくさんのEU諸国の方々が来てくださいましたが、特にこの写真に対する反応が大きく、言葉、文化は違うけれど、皆、この日の丸に込められた意味を深く理解してくれていたことが印象に残っています。

 

レジリエンス( = resilience)という言葉を聞いた事はありますか?これは、ひと言で日本語にできないのですが、「外部からの衝撃に立ち向かう強靭性」という意味だそうです。最近、この言葉を、防災や支援をテーマとした国際的な場で多く耳にします。東日本大震災の際、あの過酷な状況の中、東北の人々が強い団結力で互いに助け合い、そして復興に向けて努力している姿に世界中が感動し、この「レジリエンス」という言葉が頻繁に使われはじめました。


Japanese Weekの期間中、ブリュッセルでは、防災をテーマとしたセミナーがいくつか開催されました。そこでは、今世界のあちこちで起こっている災害に対する日本の関わり方が議題の一つになっていました。


今、世界では、多くの人々が自然の脅威からくる困難に直面しています。日本も、自然災害を幾度となく経験し、その度ごとに再生と復興に取り組み、今日の豊かな社会を築いてきました。日本の復興経験は世界からも大きく注目されており、災害対策や復興における強いリーダーシップが世界から期待されています。

 

世界が東北に期待し、大きな動きが東北から始まろうとしています。東日本大震災で見せた日本のレジリエンスを世界に広めるときが来ています。

 


+++

 

ブリュッセルと同じ内容の展示会が、JICA(国際協力機構)とのコラボレーション(協力・協働)のもと、東京の市ヶ谷で開催されます。


この写真展は、東北の被災地各地に昇る朝陽の写真で構成されています。それらの写真で僕が伝えたいことは、あれほどの状況にあってもまた希望の陽は昇ってくるということ、そして、その「陽」自体が、今東北に生き、一所懸命生きている人達であるということです。

 

この震災では、2万人近くの方が亡くなってしまいました。突然押し寄せて来た天災になすすべもなく、自分の人生が突然終わってしまうとは、誰も考えることなどできなかったでしょう。3人の子供を残して亡くなってしまったお父さんがいます。大学進学を目前にして津波にさらわれてしまった高校生もいます。その無念さは推し量ることすらできません。


生き残った我々が、精一杯生きて行くことが、亡くなられた方達に対しての餞(はなむけ)だと僕は考えています。

 

今を精いっぱいいきること。妥協せず、流されず、自分の道を自分で作ること。

 

そのヒントが、写真展の会場にあるかもしれません。

 

入場は無料ですので、ぜひお越し下さい。

平林克己写真展「陽」- HARU -
Emerging Resilience from North East of Japan
9/9(月)ー9/22(日) 9時から21時30分
JICA市ヶ谷ビル 2Fイベントホール
(9/20(金)にはセミナーも実施されます)
詳細:JICA地球ひろばホームページ
http://www.jica.go.jp/hiroba/about/experience/exhibition/hall/2013/130909_01.html
 

 

また、9/20(金)19時からは宮城県石巻市雄勝町の漁師・末永陽市さんを招いてのセミナーがあります。

 

末永さんは、東日本大震災の津波で、家や漁に必要な設備全てを失ってしまいましたが、現在、風評被害と戦いながら、地元雄勝町での雇用の確保、そして町全体の復興をも視野に入れながら、事業の再生を進めています。


先祖代々引き継いできた漁業を何としてもで絶やしてはならないという責任感と漁師としてのプライド。僕は、これほど前向きな人に会ったことがありません。


セミナーでは、津波からの生還、避難所生活を経ての事業の再生、そして雄勝の将来について話をしていただきます。また、後半には、誰もが参加できるフリートークの場を設けています。

 

このセミナーには、事前申し込みが必要となりますが、ここにも、自分で自分の人生を構築する上でとても大きなヒントが隠されています。

 

強く生きる東北の姿を生で感じて下さい。


写真展関連セミナー「陽」:漁師・末永 陽市、新たなるチャレンジ-震災前よりも1歩も2歩も進んだ漁業を-
2013年9月20日(金曜日)19時から20時30分
JICA市ヶ谷ビル 6階 セミナールーム600
JICA経済基盤開発部東日本大震災復興支援室、地球ひろば
詳細:JICA地球ひろばホームページ
http://www.jica.go.jp/hiroba/event/201309.html#a01-0920-02

プロフィール

平林克己(ひらばやし・かつみ)

カメラマン

 

東京生まれ。大学在学中より撮影を始め、卒業後に渡欧。オーストリアの首都ウィーンを拠点に、冷戦後のルーマニア、ブルガリア、チェコ、ポーランド、ユーゴスラヴィア等の東ヨーロッパ諸国を駆けまわる。その後パリに拠点を移し、20世紀末まで活動。 帰国後、外資系の商社勤務を経て、カメラマン再始動。2007年、Studio KTM設立。東京都内を中心に、商業分野での写真撮影に携わっている。


2011年3月の東日本大震災後、石巻、仙台を中心としたボランティア活動に尽力するかたわら、被災地に昇る太陽をテーマとした写真を撮り続け、写真集「陽(HARU)」(河出書房・2012年)を出版。 写真展は、震災1周年の2012年3月の東京を皮切りに、神戸、岡山、パリ、ブリュッセル、ベルリンと世界各地で開催されている。

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