自分らしく生きて、社会を変える

女子力アップセミナー

第3回

ウガンダで親を失った子どもたちをサポートするフリーアナウンサーの永谷裕香さんの「女子力」


[お話する人] 永谷裕香 (フリーアナウンサー、NPO「ムクワノ」代表)

[インタビュアー] 東京女子大学大学院文学研究科院生 松紀枝、橋本実季
         高校生 つじみき

2013年3月7日。3月15日に、永谷さんは2人目の子どもを出産されました。

(2)阪神大震災をきっかけにアナウンサーに。旅の経験も仕事に活きた

 

---以前はNGO活動とは全く違うアナウンサーというお仕事をされていたそうですが、大学卒業後にアナウンサーになられた理由を教えてください。


永谷:アナウンサーと限定していた訳ではなかったんです。高校3年生の1月に阪神大震災があって、その時、私は大学が推薦で決まっていて1月から3月が暇だったんですね。そんな時に長田区の方でボランティアを募集しているというお知らせを新聞で見つけて、何か私にできることがあればという思いで現地に行った時に、現場の状況を伝える仕事って大事だなと思ったんです。長田地区の中でも、ここは新聞とかが届いていて情報が豊富にあるけれども、こっちは全然情報が届いていないとか、避難所の人と話をした時に、「『頑張って』いう言葉にはすごく傷つくから、言わないでほしい」とか。そういう経験から、現場の人たちの生の声を伝える仕事がしたいと思っていました。なので、アナウンサーだけではなくて、例えば新聞記者とか、媒体はなんでもいいけれども、「伝えること」ができるマスメディアで働きたいと思っていたんです。

 

でも、就職活動の面接はアナウンサーが最初だったんですね。そこでテレビ西日本から結構早く内定をもらいました。福岡は住みやすいと聞いていたのと、試験の時に初めて行ってみて海と山が近いし食べ物が美味しいから一回住んでみるのもいいかなと思って決めたので、実は他の職種を受けていないんですね。もし、アナウンサーの面接が最初じゃなかったらアナウンサーじゃなかったかもしれないですね。


---就職活動中にアナウンサーになるための特別な勉強をしましたか?また、大学時代に体験したことの中でお仕事に役に立った経験などがあれば教えて下さい。
 

永谷:就活中は、アナウンサーになるための勉強は特にしていなかったです。でも、入ってから研修期間がみっちりあって、その時に発声練習や滑舌練習などでは苦労しましたね。大学時代に経験したことで仕事に役立ったのは、バックパッカーで世界を周っていた経験です。バイトでお金を貯めては、一人で25キロのバックパックを背負って、『地球の歩き方』を持って…。アフリカとか中南米、中東など21か国に行きました。英語はもともと話せたのではなくて、旅をしている時は全て自分でやらなくてはいけないので使えるようになったし、どんな状況でも物怖じしてはいられないので、そういう経験が仕事に生かされましたね。

 

インタビューを担当
インタビューを担当

---アナウンサーは人とお話しすることが多いと思いますが、初対面の人と話すコツはありますか?

 


永谷:1年目からインタビュー番組を持たされたのですが、最初はすごく戸惑いました。はじめは初対面の人とどのように話せばいいか分からなかったですが、上司に「とにかく聞き上手になりなさい」と言われました。「自分から話すよりも相手に興味を持って、相手に質問する」という方法を実践してからは徐々に慣れていきました。あとは、やはりまさに「一期一会」というか、相手の方にそれぞれ魅力があって、それを自分が聞きたいなと思うようになってから、インタビューや人と話すことが好きになりましたね。

 

これは学生時代にバックパッカーをしていたということともつながっていますね。海外に行ったら、その土地の言葉はなるべく学びたいなと思っているんですが、それは後で役に立つからとかいうことではなくて、その土地の言葉を学ぶことで、よりその国の人たちを深く知るきっかけになると思っています。あまり記憶力は良くないのですが、頑張って言葉の意味をノートに書き留めて覚えるようにしていましたね(笑)。

 

---報道アナウンサーとして一番印象に残っている事件は何ですか?
 

永谷:大きいところでいうと、アメリカの9.11がありますね。あとは、ちょうど私が報道にいた時、少年が路線バスをバスジャックした事件がありました。その2つは、大きな事件として非常に印象に残っています。ただいつも思っていたのは、こういう死亡事故や事件の報道が少ない番組にしたいな、ということ。福岡は、他の県よりも事件や事故が比較的多く起こっている所なので、明るいニュースを伝えたいなと思いつつも、人の命に係わる深刻なニュースが多かったなという印象ですね。

 

一度きりの人生、やりたいと思った時が「その時」

---お仕事を辞めるというのは難しい決断ではないかと思うのですが、どの様に決断されたのですか?
 

永谷:5年半、福岡の放送局でアナウンサーをしている時に、南アフリカで活動をされている方とか、アフガニスタンと日本を結ぶ活動をされている方にインタビューする機会があったんですね。それで私の中でのアフリカへの思いがまたふつふつとと湧き上がってきて(笑)。「もう一度、今度は旅行者じゃなくって、地に足を付けて少し長く現地を見たい」と思ったのが、辞めるきっかけです。でもその時は、NPOを自分で作るとは思っていませんでした。私は「人生は一度きりだから、自分がやりたいと思ったら行動する」タイプなので、「大決意をしたね!」と、当時は周囲に言われましたけれども、自分ではそうは思っていなくて(笑)。


自分が今やりたいと思ったのならやろうと。それでも、1年くらいは考えましたけどね。結局、「20代のうちにどうしてももう1回ウガンダに行きたい!」っていう思いがあったから、辞めました。ただ、実は今も声の仕事をさせていただいています。自分がやりたいと思ったらアフリカに戻ることもできるし、声の仕事もできるのではないかと思っています。


---その決断力は天性のものですか?それとも、旅などの経験からですか?

 

永谷:私はこれを決断力とも思っていなくて。その場でこうかなと思ったら決めるのは早いタイプなので。あまりリスクを考えていないのかもしれない。だからぱっと決めちゃっているのかもしれない。これかな、と思って。逆にタイミングを「延ばしちゃいけないぞ!」くらいに思っています。

 

---私は今年の春に大学に入るのですが、何かしなきゃなと思いつつも、例えば留学をしたいと思っても目的がはっきりしなかったり、「何かはしたいけど、でも何をすればいいのかな?」と考えてしまうのですが、どうすればいいかアドバイスいただけないでしょうか。

 

永谷:もし留学に興味があるのなら、やっぱり行ってみるのがいいなと思います。行ってみたらまた違う興味が出てきたりとか、これを勉強したいという思いがわくこともあるかもしれないし、もしかしたら、その国にもっと住みたいと思うかもしれないし。結局、思っていても行動しないと何も生まれてこないから、何か思ったことは行動に移して、ぜひいろいろなことを経験してもらいたいなと思います。
それに、今は私の頃よりももっと世界は近いし、学生はやりたいと思ったことはやれる環境にあると思うので、いろいろやってみるといいと思います。学生時代は、社会人になってからはない自由な時間があると思うので、それを最大限に使って、いろんなことを吸収してほしいと思います。あと、旅行はおススメです。私なんかずっと東京で育ってきて世界の事なんて何も知らなかったけれど、いろんな国のいろんな人に触れることで、見えてくることとかがあったので、ぜひ行ってみてください。

 

プロフィール

永谷裕香(ながたに ゆか)
フリーアナウンサー、NPO「ムクワノ」代表

 

1977年東京都出身。東京女子大学現代文化学部言語文化学科(当時)卒業後、テレビ西日本に入社し「TNCスーパーニュース」や「ももち浜ストア」のキャスターを務める。退社後、約1年間にわたって東アフリカ・ウガンダ共和国の小学校で教壇に立つ。その後、TBS「ニュースバード」などでキャスターとして活躍。フリーになってからアフリカのエイズ孤児支援の活動を開始し、 一方、東京大学大学院総合文化研究科で人間の安全保障修士号、ブラッドフォード大学(イギリス)でアフリカの平和と紛争学修士号を取得。2006年、友人と共にNPO MUKWANO(ムクワノ)を発足。ウガンダで親を失った子どもたちの安全と生活を守り、自立をサポートしている。

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