2013年10月の世界体操選手権の床運動で金メダル。同時に、「シライ」という名前のついた技(わざ)が3つも認定された、高校2年生の白井健三君(神奈川県立岸根高等学校)。2020年の東京オリンピックで必ず活躍することになる、今いちばん注目の高校生です。そんな白井君に話を聞きました。
聞き手は、こちらもオリンピック体操金メダリストで、現在は指導者である、具志堅幸司さんです。
具志堅幸司氏 1984年のロサンゼルスオリンピック男子体操で、個人総合とつり輪で金メダル、跳馬で銀メダル、団体総合と鉄棒で銅メダルを獲得。指導者として、多くの優れた選手を育てている。神奈川県教育委員会委員長。
白井健三くん 1996年生まれ。兄2人に続いて、3歳から体操を始める。2011年、中学校3年の時全日本体操競技個人種目別選手権大会の床運動にて2位に入賞、注目を集める。2013年10月の世界体操選手権の床運動で優勝。日本人選手としては史上最年少の金メダルとなった。
具志堅さん)
実は、今日はこの会場に白井君のお父様がいらっしゃっています。白井君が小さい時のことを教えていただこうと思います。
お父様)
小さい頃から、観察して模倣する力はすごかったですね。健三が幼稚園の時に、小学生以上の大会に出たことがあります。試合には、あん馬(子ども用は「円馬(えんば)」)は5周以上回れないと出られないのですが、当時はまだ1周回るのがせいぜいでした。でも、本人がとてもやりたがったので、オープン参加で出してやってください、と頼んだのです。そうしたら、健三はほかの子がやっているところをじっと見ていて、練習では一度もできたことがなかったのに、自分の番になったらちゃんと5周回ってしまったんです。何なんだ?!と思いましたね。
具志堅さん)
それはすごい! 見ただけでできちゃうというのはちょっとないですよ。白井君はその時のことを覚えていますか。
白井君)
覚えています。その時はうれしかったですね。
具志堅さん)
これから白井君はますます期待されると思いますが、お父様としてはどんな選手、どんな大人になってほしいと思いますか。
お父様)
私は小さい会社を経営していますが、体操のように技ができさえすればいいというわけではなく、いちばん大切なのは信用だと思います。信用を得るのには時間がかかりますし、逆に失うのは一瞬です。将来みんなをひっぱっていく選手になりたいなら、今から意識して、日々責任を持って信用を勝ち得ていってほしいと思います。
具志堅さん)
最後に、白井君から、同世代の人たちに、メッセージをお願いします。
白井君)
東京オリンピックでは、チームをひっぱるエースになっていたいですね。ぼくもいろんなことで悩むことはあるけど、悩みは一人で抱え込んでいても解決できないと思います。仲間でもきょうだいでも先生でもいいから、誰かに相談して解決していくのがいいと思います。体操をしている高校生のみなさんには、若いのだから、大きくのびのびと演技してほしいと思います。
【連載】
第1回 世界選手権金メダルでも、体育はちょっと苦手?!
第2回 跳馬、床運動の技に「シライ」という名前が付いた。でも好きなのは、鉄棒
第3回 東京オリンピックでは、チームをひっぱるエースになっていたい
※神奈川の教育の未来を語り合う「かながわ人づくりコラボ2013」(2013年11月9日、神奈川県立神奈川総合高校にて)での座談会「明日の神奈川のアスリートをつくる」をまとめました。