つくばサイエンスエッジ2018

緑茶、ウーロン茶、ほうじ茶からポリフェノールをさがせ!  ~一重項酸素の発光を利用した飲料物中のポリフェノール検出【化学】

市川高校[千葉] 渡辺結子さん 新貝玲音さん

左から、渡辺結子さん 新貝玲音さん
左から、渡辺結子さん 新貝玲音さん

 

はじめの一歩 ~ポリフェノールは検出できるか?

私たちの研究は、一重項酸素の発光を利用した、飲料物中のポリフェノール類の検出という実験です。一重項酸素とはわかりやすく言うと活性酸素の1つです。一重項酸素は二色発光時計反応で知られています。二色発光時計反応というのは、ビーカーに過酸化水素やポリフェノールを含んだ試薬を入れると、まず赤い発光が起きたあとに、時間差を置いて青の発光が起きることを言います。

 

実験は2段階に分けて行いました。1つ目の実験目的は、一重項酸素が原因と考えられる赤の発光の反応機構を解明することです。通常、大気中に存在する酸素は三重項酸素の状態で、これにエネルギーが与えられると一重項酸素になり、赤く発光します。

 

2つ目の目的は、1つ目の実験を応用して食品中のポリフェノール類の検出することです。ポリフェノールは植物に含まれ、抗酸化物質として健康に欠かせない物質です。身近な健康にかかわることだから調べてみたいと思いました。

 

一重項酸素が赤く光った! 実験1

まず、ピロガロール、過酸化水素などをそれぞれビーカーに入れ、発光実験を行いました。ピロガロールは、ポロフェノールを含んだ有機化合物です。ピロガロールの濃度が高い方が、発光強度のピークが時間とともに大きくなるということがわかりました。

 

ピロガロールの濃度と発光強度の関係
ピロガロールの濃度と発光強度の関係

 

次に、赤い発光の正体は、本当に一重項酸素なのかということを検証をしました。一重項酸素のみを消去するLリボフラミンという生理活性物質を注入する実験を行ったのです。Lリボフラミンを注入すると、少し時間が経つと発光強度は少し落ちました。また、その濃度をもう少し大きくしたLリボフラミンを入れたところ、発光強度が大きく落ちていることがわかりました。

 

それによって赤い発光の発生源は確かに一重項酸素だということが言えます。

 

カテキンは赤く発光するか?~市販の飲料物からカテキンを取り出した実験2

2つ目の実験では、市販の飲料である「伊右衛門」と「ヘルシア緑茶」を使って、カテキン類の検出を行いました。実験の目的は、ポリフェノールの一種であるカテキンで赤い発光が起こるかどうか調べることで、いろいろなポリフェノール類の検出に応用できるか確かめるためです。

 

これまでの実験から試薬の濃度を上げないと発光しないとわかっていたので、それぞれの飲料物を濃縮し実験しました。結果は、カテキン量の含有量の多いヘルシア緑茶のほうが、発光強度は高くなることがわかりました。

 

 

緑茶、ウーロン茶、紅茶、ほうじ茶ではどうだったか?

緑茶、ウーロン茶、紅茶、ほうじ茶などに対しても実験を行いました。その結果、カテキン類の含有量の多い緑茶のほうが発光強度は高く、ウーロン茶、紅茶、ほうじ茶など、カテキン類の含有量が低い茶葉の発光強度は小さいことがわかりました。

 

考察のために、これらの茶葉の比較を行うと、カテキンの含有量と発光強度はほぼ比例することも確認できました。このことから、赤の発光強度からカテキン類の含有量を予測できると言えます。

 

次はワインからポリフェノールを検出したい!

私たちの検出法を用いると、大がかりで高性能な装置を使ってカテキン類などポリフェノールを検出していたこれまでの方法に比べて、簡単な発光実験を行うだけで検出できることがわかりました。

 

今後は、その他のポリフェノールについても調べていきたいです。例えば白ワインと赤ワインでが、どちらがピロガロール骨格を持つポリフェノールが多いか、濃縮した液を使った一重項酸素の発光実験によって調べたいと考えています。

 

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