第84回情報処理学会全国大会 第4回中高生情報学研究コンテスト

機械学習を使って病院内の転倒リスクを回避 ~9万人のデータから判断モデルのアルゴリズムを作る

チーム名:高槻高校情報班

 

柳沢 篤くん(高槻高校 2年)

 

機械学習を用いた電子カルテの解析による院内転倒予測アルゴリズムの作成

 

入院患者の転倒は、多くの医療機関が抱える患者安全上の大きな問題であり、骨折や、頭部外傷による致死的な障害を引き起こす危険がある。転倒を防止するため、大阪医科薬科大学病院では独自のアルゴリズムに基づき、患者一人一人の転倒するリスクを評価し、それに基づいて転倒防止策をとっている。一方で、転倒のリスクが低いと判断されたにもかかわらず転倒してしまう患者が多くいることがカルテの調査で分かった。本研究では、機械学習を用いて、医学と統計学からの視点を交えながら、患者の転倒リスクをより正確に判断できる新しいアルゴリズムの作成を試みた。

 

※クリックすると拡大します。

 

■今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。

 

転倒は、時には大きなケガにつながる恐れのある重大なインシデントです。転倒リスクが分かれば、そのリスクに応じて対応ができます。現在、大阪医科薬科大学病院では、看護師さんが作成された転倒リスクを予測するアルゴリズムが使用されているのですが、今回は機械学習を用いて転倒リスクの有無を判断するアルゴリズム(モデル)の作成をしようと思いました。

 

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。

 

大体去年の4月ぐらいから先生方からデータを頂き、様々な実験を行いました。ポスターに書かれている実験は12月ぐらいからしました。

 

 

■今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。

 

約300の項目を持つ、電子カルテ約9万人分のデータという膨大な量のデータは扱ったことがなかったので、その処理がとても大変でした。

 

また、これまで機械学習については、本で読んで少しプログラムを書いただけだったので、どうやってデータから転倒の有無を判断するモデルを作ればいいのかも分かりませんでした。

 

先生方のご助力のおかげで、何とかこれらを克服しました。

 

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。

 

自分が使用した機械学習の種類は、「決定木」といって過剰適合(モデルが使用するデータに合わせすぎて精度が低くなってしまう現象)になりやすいという弱点があるため、 EFSという手段を用いてから「決定木」を使用することで対処しました。

 

EFSは、使用するデータの種類を様々に変えてモデルを生成するものです。EFSを使用してこの弱点を対処したのは、めずらしいと思います。

 

 

■今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。

 

1つの病院の入院患者だけでなく、複数の病院の入院患者といった、もっと多くの人に対応できるアルゴリズムを作ったりしたいです。

 

また実験の手法自体も、もっと改善できることがあると思うので、アイデアさえ思いつけばやってみようと思います。

 

第84回情報処理学会全国大会中高生情報学研究コンテスト ポスター発表より

※高槻高校情報班 の研究は、中高生研究賞奨励賞を受賞しました。

 

 

 

 

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