2019さが総文

初の国産グレープフルーツ「さがんルビー」のさわやかな香りの秘密をさぐる

【ポスター/化学】佐賀県立唐津東高校 科学部

左から 森永さや香さん、浜浦愛佳さん、吉松拓也くん
左から 森永さや香さん、浜浦愛佳さん、吉松拓也くん

さがんルビー果皮の精油成分の分析~外国産グレープフルーツとの比較~

グレープフルーツの果皮を使った商品開発を目指す!

さがんルビーは、佐賀大学農学部が研究開発した初の国産グレープフルーツです。私たちは、このさがんルビーの知名度を上げたいと思い、それを活用した商品の開発に取り組んでいます。

 

ここでは、本来捨てられてしまうはずの果皮の部分を使った商品開発を提案します。その前段階として、果皮の香りの特徴を明確にするために水蒸気蒸留で香りを抽出しました。また、その要因を詳しく調べるために有機溶媒で化合物を抽出しました。

 


 

今回さがんルビーと比較するのは、南アフリカ産ルビーとマレーシア産ルビーです。

 

まず、精油の香りについて比較します。水蒸気蒸留でそれぞれの果皮から精油を抽出しました。その方法がこちらです。

 


 

それを高校生76名が嗅いだ際のアンケートによって香りの特徴を比較しました。

 

アンケートの妥当性を担保するため、採点法と3点識別法を応用した手法をとりました。採点法とは、香りのそれぞれの特徴について0点(非常に当てはまらない)から6点(非常に当てはまる)の点数をつけてもらうものです。また、3点識別法では、3種類の香りに対してサンプルを4つ用意します。サンプルA,B,C,DのうちBとDは同じ香りです。この香りを採点した際に、BとDの点数のずれが2以上あるデータは外れ値として除外しました。

 


その結果、男女それぞれ17名ずつ、計34名のデータを用いて比較することになりました。

 


各項目の最頻値がこちらです。

 

このことから、男女ともにさがんルビーを「酸っぱい」香りが特徴的であるととらえていることがわかりました。そのため、さがんルビーの特徴を生かすには、高校生向けの「酸っぱい」香りの商品が向いていると考えられます。 

 


 

さわやかで、甘くスパイシーでレモンに似た香りの成分が含まれる

続いて精油の化合物の分析を行いました。化合物の含有量の差異による香りの違いを調べるためです。化合物の抽出には有機溶媒であるヘキサンを用いました。詳しい実験の方法がこちらです。

 

各産地について3つずつサンプルを用意し、計9個のデータを得ました。

 


分析の結果、さがんルビーに特徴的な化合物が判明しました。

 

シネオールはユーカリに多く含まれるさわやかな香りです。カルベオールはスペアミントやキャラウェイなどの香草に含まれ、甘くスパイシーな香りがします。シトラールは強いレモンの香りが特徴的です。

 


グレープフルーツは寒さに弱く、日本での栽培には適しません。それを品種改良し、さがんルビーを開発した過程で、さがんルビー特有の化合物が生成されるようになったと考えられます。

 

また、これら3つの化合物は酸味がある香りという点で、先ほどのアンケートの結果と一致しています。

 


以上の研究から、グレープフルーツの精油の香りは地域によって異なり、さがんルビーは酸味のある香りが特徴であると言えます。今後は、この香りを生かせるような、制汗剤やスポーツドリンクの商品開発を提案していけたらと考えています。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

さがんルビーが佐賀県発のものであり、全国に紹介したいと思ったからです。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

1年間です。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

人の感覚をアンケート調査していたので、個人差を考えて結果を出すことに苦労しました。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

2つの方向性でさがんルビーの特徴をとらえたことで、良い結果が得られたと思います。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

先輩たちが行ってきた先行研究を参考にしました。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

テーマに沿った研究はもちろん、後輩の指導や科学実験教室などのボランティアにも行っています。

 

■総文祭に参加して

 

7月29日をもって、高校1年生のころから、およそ3年間かけて準備してきた「2019 さが総文」のすべての活動が終わりました。これまでの活動を振り返ると、たくさんの経験と思い出があります。その中でも最も鮮明に覚えていることは、生徒交流会についての準備です。これは、さが総文の中でも特に生徒主体となった活動です。全国の高校生参加者に楽しんでもらえるようにという思いのもと、準備してきました。参加者の共通の話題となり、楽しい交流ができるような内容を決めることが大変でした。

 

自分たちの理想に近づけるように、全国大会に向けて会議とリハーサルを重ね、内容を推敲し、ディスカッションとフェルミ推定に決定しました。そして、当日、われわれ生徒実行委員のみならず、佐賀県じゅうの自然科学部系の部員に協力してもらい、成功することができました。参加者は心からの笑顔を浮かべ、お互い楽しみ、それぞれにとって素敵な思い出になったと確信しています。

 

副実行委員長としては、会議の進行を行い、全体に指示を出し、さが総文を良いものにするために考えて行動をしてきました。私は、この生徒実行委員会に参加して、自分自身の能力を高めることができたと感じています。どんな場面であっても自分の力を出せるパフォーマンス力や、プレゼンテーション能力、全体をまとめる調整力や構成力、問題解決力です。高校時代に自分を高める貴重な経験をすることができました。この成功経験を糧に、今後も様々なことに挑戦し、さらに視野を広げていきたいと思います。

 

⇒他の高校の研究もみてみよう

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