みやぎ総文2017 自然科学部門

水面を勢いよく踊る水切りの小石。その謎に迫る!

【物理】京都府立洛北高校 サイエンス部物理班

左から 中尾太樹くん(3年)、山下龍之介くん(3年)
左から 中尾太樹くん(3年)、山下龍之介くん(3年)

水切りの謎に迫る ~石の形状や回転数、質量による跳ねやすさの比較~

水切りとは、水面に向かって小石を投げ、石が水面を飛び跳ねて進むのを楽しむ遊びです。

 

実は、石が水面を飛び跳ねる仕組みはいまだ詳しくわかっていません。そこで、水切りの性質について調べ、その仕組みを解明することで挙動を予測するシミュレーターを作成しようと研究に取り組みました。

 

水切り装置の作成と実験 ~一回目の着水時モデル~

水切りを正確に再現するために、このような装置を作成しました。磁石によって回転させた円盤を、バネによって水槽に射出するものです。

 

円盤には平らなものと曲面のもの、二種類を使いました。水槽には両側に定規を設置し、カメラから見た時の定規の目盛と実際の位置のズレは補正しました。

 

これが装置による水切りの、実際の映像です。

記録した映像から、水切りの仕組みを図のようにモデル化しました。

 

(1)(2) まず円盤が水槽面に着水します。

 

(3) 着水の衝撃によって水面に波が生じ、円盤はその内側で滑ります。ここで円盤が、自身が作った波よりも速く滑っている場合、ある時点で波を追い越します。

 

(4) そこで円盤は波を乗り越え、離水すると考えました。

 

これを数式で表現し、着水した時の速さと滑る距離の関係式を導きました。

 

L:滑った距離 V:着水前の円盤速度 Vw:波の速度 r:円盤の直径 t:着水から離水までの時間

 

この理論式と実験で得た値を比べました。

 

円盤を射出するときの回転数を1000、2000、3000rpm(回転/分)それぞれについてグラフにまとめると、特に低速部について回転数が上がるにつれて、滑る距離が理論式よりも長くなっていました。

 

この理由として、円盤が着水時に生じるくぼみの坂を登りつつ、傾いて跳ねることが挙げられるではないかと考えました。

 

一般に、角運動量保存則によって回転している物体は、回転数に応じて傾きにくくなります。

 

したがって、高回転数の円盤は傾きにくく、波を乗り越えにくいために、回転数を考慮していないモデルで予測したよりも長い距離を滑ったのではないかと考えました。

 

二回目以降の水切りモデルは水からの抵抗が鍵

次に、2回目以降の水切りについてもモデル化しました。

 

2回目以降、円盤はすでに傾いていると考え、波を追い越せば跳ねると考えました。

 

ならば、着水前の速度が分かれば跳ねるまでの距離はこのように定まり、滑水中の水からの抵抗によるエネルギー損失が求められれば離水後の速度が定まるので、次の着水以降についても計算できます。

 

そこで、水からの抵抗を求める必要がありました。

 

着水時と離水時の運動エネルギーの変化はすべて水からの抵抗がした仕事として、この仕事を滑った距離で割ることによって抵抗力を求めました。

 

結果、得られた抵抗力とその時の着水速度の関係は、このようになりました。

 

さらに着水時の速度と抵抗力の関係を調べるために、結果を両対数グラフに記入しました。

 

このとき近似直線の傾きがもとの関係式の次数を、y切片が比例定数を表しています。

 

したがって近似直線によると水から円盤が受ける抵抗力は円盤速度の2.1乗に比例し、その比例定数は7.4×10-2であることが分かりました。

 

この実験式と実際の値を比較したグラフです。

 

2回目以降はこの式を用いてシミュレーターを作成しました。

 

 

これが実際のシミュレーターです。

 

離水に必要な角度θ、最初の飛距離と2度目の着水時速度を入力すると、滑水距離と離水時の速度が計算できるので、その離水時の速度を3度目の着水時速度として3度目の滑水距離が計算できます。

 

この計算を繰り返していくことで、最終到達地点と跳ねた回数が求められます。

 

このシミュレーターによる計算結果と実際に測定した値を比較すると、シミュレーターのほうが最終到達点、跳ねた回数ともにかなり大きくなってしまいました。

 

課題は2回目以降着水時の精緻化

今回、私たちは水切りのシミュレーターを作るため、1回目の着水時に円盤が傾いて、波を追い越した後に跳ね、2回目以降は波を追い越すだけというより簡単なモデルを作りました。

 

この際に水から受ける抵抗力は速度の2.1乗に比例し、その比例定数が7.4×10-2であると近似することができました。しかしこのモデルは過度に単純化されていたため、水切りの再現には至りませんでした。

 

今後の課題と展望として、2回目以降の着水の映像を撮影し、回転数の減衰、速さや傾きの変化などを測定し、より現実的なモデルを作成しようと思います。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

河原で遊んでいる時に、水切りが面白そうだと思ったからです。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

2015年から始めました。1日1時間半で2年半、長期休業中はもっとやりました。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

実験装置の制作です。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

実験装置の全てを見てほしいです。

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

この実験はこれで終わりです。違うテーマをするのであれば、ロケットの研究がやってみたいです。

 

■総文祭に参加して

 

いろいろな研究発表を見ることができて、面白かったです。仙台は非常に涼しかったことが印象に残っています。

 

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