Global Office Hour ~世界の大学の名教授を訪ねてみました!

第1回 アジアでいちばん「熱い」学びを繰り広げるのはココ! シンガポール国立大学(NUS)

Elaine Tan Shek Yan(エレイン・タン・シェク・ヤン)先生に聞きました [専門:国際関係、アフリカ政治]

 

インタビュアー:茅根里紗さん(東京大学 教養学部教養学科総合社会科学分科国際関係論コース3年)

■シンガポール国立大学(NUS) ってどんなところ?

 

シンガポール国立大学(National University of Singapore :NUS)は1905年に作られた医学校がもととなり、1980年に誕生しました。3つのキャンパス、13の学部を持ち、100か国以上からの留学生を迎える国際色豊かな大学です。約4万人の学生が通うためキャンパスは非常に広く、その中には寮や図書館、スポーツセンターなど充実した設備が備えられています。都心へのアクセスもよく、最寄りの駅からは地下鉄を使って30分ほどでビジネス街に行くこともできます。

 

世界大学ランキングでは、東大や京大を抑え2016年から3年連続でアジア1位に選ばれるなど、高い評価を得ています。NUSの学生は非常に勤勉で、学内の24時間営業のカフェや寮で夜中まで勉強する学生が多く見られます。

 

NUSは特にビジネスやファイナンスなどの分野に強く、卒業後は官僚や金融セクター、グローバル企業などの道を選ぶ学生が多い印象です。

 

大学のホームページのURLはこちらから

 

 

お話を聞いた先生

Elaine Tan Shek Yan(エレイン・タン・シェク・ヤン)先生

■先生のプロフィール

 

所属:Faculty of Arts and Social Sciences

専門分野:International relations, African Politics(国際関係、アフリカ政治)

 

担当授業

・Theory of International relations(国際関係論)

  アナーキーな国際関係の中でどのような国家が協力し共通の目的を達成することができるか

・Contemporary African Politics(現代アフリカ政治)

  アフリカ政治について民主化、開発などのテーマを扱った授業

・The Region in the Postcolonial World(ポストコロニアル地域)

  アジア、アフリカ、中東などの地域が植民地支配を経てどのように現れたのか。

 

■先生が国際関係論とアフリカ政治を専攻とした理由は何ですか。これらの分野の魅力を教えてください。

 

国際関係論の概念に非常に興味があり、国際社会がどのように協力し戦争を防ごうとするか、国際関係における正義をどう達成するかなど国際社会の問題に対する集団としての解決策に関心があります。アフリカ政治を専攻としたのは、そこから学べるものが非常に多かったためであり、アフリカ政治とその国際関係は地域主義の発展など面白い点が多く、これらの点は国際関係論にも役立つものだと考えています。

 

■教授が教育者として意識していることを教えてください。

 

何点かありますが、まず学生の好奇心を育てることを意識しています。一般的なトピックだけでなく、個別の概念などについて、それまで学生が考えてきたことと衝突することが起こり得ます。アフリカ政治の授業に関して言えば、多くの学生はアフリカについてそこまでよく知らないため、彼らがこの地域や新たに学んだ政治のダイナミクス、異なる理論的アプローチなどについてより知りたいと思えるように心がけています。

 

他に生徒と接するときに意識していることは、彼らの時間の使い方はそれぞれで学校が全てではないということです。授業外のことを優先する生徒もいることは理解できることで、生徒それぞれの授業との関わり方をなるべく理解するよう心がけています。

 

■学生はどうやって勉強するべきと思いますか。

 

これについては分野や教授によってかなり異なると思うので、勉強のコツを知る具体的な方法としては、自分が習っている教授に積極的にアプローチするのがオススメです。もう一つ一般的なことで言えば、常にその授業の包括的な目的を意識しておくことです。コースが始まるときに、教授がその大きな目的について話すことがあると思うので、その後の各レクチャーやリーディングをするときなどに、それらを常にその目的と繋げるように意識してください。そうするとなぜ自分が今それを学んでいるのか、なぜその文献を読んでいるのかを理解しやすくなると思います。またもちろん、難しい内容や、これまで自分が知らなかったことに挑戦することをためらわないようにしましょう。

 

■特に英語の壁を感じることの多い日本人学生へのアドバイスをお願いします。

 

自分の第一言語でない言語で勉強することはもちろん大変なことです。そのため、まずはそのような挑戦をすすんで行った自分を褒めましょう。現実的なアドバイスを言うと、何か授業で難しい点があったら教授にアプローチしてみるといいと思います。教授はそのような問題に親身になってくれるはずですし、別で議論する場を設けてくれたり、授業で十分に考える時間をくれたりコツを教えたりすることもあると思います。

 

他に言えることとしては、授業で発言するときにちょっとメモを取っておくとよいと思います。この経験は第2言語を練習するのにいい機会ですし、たとえ発言に時間がかかったりしても教授も他の生徒ちゃんと聞いてくれると思います。

 

 

■Elaine先生の思うNUSの特徴を教えてください。

 

NUSが持つ最も良い特徴は、教育やその質を非常に重要視している点です。教授の採用において、NUSはその人の研究だけでなく、個人としての経験や教育者としての質をよく見ています。NUSがこのように教育を重要視するため、教授たちも授業のやり方や内容を考えるのにかなり時間を取っていて、新しい教育方法なども積極的に取り入れています。

 

また、NUSの学生も勉強に対して非常に真面目です。学生は、課題や文献にかなり時間をかけて議論したり、新しい考えを生んだりすることに真剣に取り組んでいます。一方で、学生がそれだけ勉強に対して真剣なため、不安とかプレッシャーを生んでしまうという面もあります。それはNUSに限られたことだけでなくほとんどの大学が抱えている問題で、NUSはこの問題に対してきちんと取り組んでいると思います。

 

この問題の情報を集めるだけではなく、どうやって解決するかの方法を見つけていて、何か問題があったときに、学生が話せる場を作り、なるべくストレスを減らせるように取り組んでいます。

 

■なぜNUSの教授はこれだけ学生に対してオープンなのでしょうか。

 

NUSの教授たちは、教育を重視していて、学生に対してそうあろうと心がけているためです。また、これは私自身の考えですが、大学教育の最も価値ある点の一つは、ある学問分野に対して何年間も取り組み、専門的な知識を持っている人と交流できる場所であるということだと思っています。

 

そのため、大学教育は講義に出て課題をしてテキストを読むだけではなく、学者に会いに行って議論することでもあると思います。そうすることで、その分野についてより理解できるだけではなく、良い議論をどう組み立てるかを学んだり、インターンやボランティアなど教室以外の場所での学びを知ったりすることができると思います。

 

■最後に日本の高校生にメッセージをお願いします!

 

実際的なアドバイスとして、どこで・どの大学で勉強するかを考えるときに、大学の評判だけではなく、大学の環境や使用言語なども考えることが大切です。

 

また、私は学生たちよりも少し年を取っているので、これから新しい世界を発見していく学生のことを羨ましく感じることがあります。これからみなさんは、たくさんの道を選ぶことができるため、好奇心を持てるもの、ワクワクできる感覚を大切にしてほしいです。そういった道を選ぶことや挑戦することを恐れずに、自分の可能性を広げて新しく世界を拓いていってください。

 

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