世界へ”FLY”する東大生

~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ

登阪亮哉くん(東京大学)

(2017年2月掲載)

第42回 FLY Programに参加するために東大を目指す、という選択 ~1年間やりたいことに全力で取り組む経験から得られるもの

FLY Programが終わって1年生に復学し、8か月になります。僕と一緒に休学した仲間たちも、それぞれ休学期間に得したものを発展させ始めています。中には、追加で1年休学した人もいます。今回は、彼らがFLY Programで取り組んだことと、それを通して得たものを話してもらいました。

 

ロンドンの演劇学校で経験した挫折と出会いがもたらしてくれたもの

吉武沙織さん(文科III類 1年生)

私はもともと京大志望だったのですが、高3の夏に東大のオープンキャンパスに行き、FLY Programのブースで話を聞いたことで東大志望に変わりました。「東大生はみんな挫折をしらない。FLY Programに参加すれば、挫折も主体性も得られる」と語る先輩がとてもかっこよく見えたのです。

 

東大に合格するまでは、FLY Programで何をするか未定でした。合格してFLY Programに申し込む、という段階で、海外に行きたいということと好きなこと、すなわち高校時代にやっていた演劇に関する活動をしたいということが決まりました。

 

はじめはあまり具体性もなかったのですが、計画を立てていく中で主に3つの活動に定まりました。1つは高校生の演劇祭のお手伝い、もう1つは自主公演、そして最後に、ロンドンの演劇学校への通学と観劇です。

 

特に印象的だったのは、やはりロンドンでの活動でした。自分の計画性のなさや卑小さを思い知らされる経験も多々ありました。例えば、現地で宿を探してやっと見つけたと思ったら勝手に別の入居者が決められてしまったことなどもあります。そのような理不尽に対しても、自分では何もできませんでした。

 

一方で、演劇学校では様々な良い出会いがありました。学校では最初にルールが決められたのですが、その中で特に印象的だったものに、「どんなことでも否定しない」というものがありました。様々なバックグラウンドの人々が集まる学校であったため、このルールはとても重要でした。また、演劇ワークショップの中でも、私が委縮してしまっていると「どんなことでもいいからやってみるといいよ」とみんなが言ってくれました。このように背中を押してくれたことが、今の自分の前向きさや積極性につながっていると思います。

 

最後に、FLY Programはやりたいことを何でもできるプログラムです。そのため、「これをやりたい」という明確な目的は必須ではありませんし、何をやっても、1年間頑張って取り組めば達成感は得られると思います。しかし、やはり何らかの軸を見つけたほうがより価値ある1年を過ごせるとも感じています。

 

第二次世界大戦の記憶を後世に残すために

横字史年さん(文科III類 1年生)

僕は昨年度FLY Programを用いて休学し、第二次世界大戦に関する学習・調査を行っていました。現在はその活動を続けるためにもう1年休学しており、執筆活動なども行っています。

 

僕はかつて東北大学に通っていたのですが、在学中に東京大学のサイトでFLY Programの存在を知り、非常に魅力的だと思って東京大学に入学しました。東北大学での生活を通して、勉強だけでなくそれ以上の個性も必要だと感じたため、吸収力が高いこの年代に好きなことをできるFLY Programにとても惹かれました。

 

第二次世界大戦について調べようと思ったのは、浪人中に実家で家族から戦時中の話を聞き、戦時中の日記なども読む中で、このようなエピソードを後世に残せるのは横字家で自分しかいないと感じたためです。

 

活動中は戦争に関する資料を読み、その後実際に現地へ行って、当時の人々の生活や受けてきた教育まで思いを馳せつつ、追体験しました。また、現地の人々がどのように当時の状況を語り継いできたのか取材し、最終的には自分たちの世代がいかに後世に伝えるかを考えていました。取材を通して、当時の人々の記憶が薄れていることや、当時と現在の常識が大きく異なることによる理解の困難などが浮かび上がってきました。

 

一方で、沖縄で琉球大学の学生に沖縄の戦争に関する資料館などを案内してもらっていた時には、希望も見出すことができました。彼らは幼いころから戦争についての話を聞かされ続けて多少食傷気味であり、あまり強い興味も持っていなかったそうなのですが、数日間僕と戦争についての話をしながら沖縄をめぐる中で、戦争に対して強い興味をいだくようになってくれたのです。

 

このような経験を通して、学問的探究心がとても高まり、現在の休学に至ります。僕の好きな言葉に「ときには踏みならされた道を離れ、森の中へ入ってみなさい。そこではきっと、あなたがこれまでに見たことがない、何か新しいものを見出すに違いありません」(グラハム・ベル)という言葉があります。みなさんも、最短距離ではなく、あなたのオンリーワンの道を歩んでください。

 

「自分がやりたいこと」につながる学びを再発見

藤吉浩平さん(理科II類 1年生)

FLY Programに参加したきっかけは、浪人中に東大受験生向けのポータルサイトを見ていて、たまたまFLY Programの記事を見つけたことです。もともと、勉強ばかりし続けることに疑問を持っていて、いつか休学はしたいなと思っていたので、うってつけでした。

 

活動中はエストニア・ベルギー・ドイツで計4つのボランティアをしつつ、ヨーロッパとアメリカを旅しながら、農業ボランティアや地元の音楽祭の設営などの仕事をしました。これらはインターネットのマッチングサイトで探して見つけました。また、各NPOの日本事務所に行ってボランティア経験者にお話を伺ったりもしました。

 

旅で印象的だった出会いは、クロアチアで出会った日本人の庭師でした。ちょうど旅の真ん中頃だったので、彼と話す中で自分の旅を振り返りながら、その後どのように進めるかを考えることができるようになりました。もともと、自分が何をしたいのかを見つけるために旅しており、帰国までには答えを見つけなければと焦っていたのですが、彼と話す中で一つひとつをゆっくり真剣に考えるべきだ、と考えるようになりました。

 

FLY Programを通して、真摯に学ぶようになりました。安易に単位取得を考えた履修を組むのではなく、「この分野がもしかしたら自分の本当にやりたいことにつながるかもしれない」と思えるような授業を取るようになりました。その中で、帰国直後に考えていた文系的な分野ではなく、理系的な分野、特に化学が自分の本質的な興味なのだとわかりました。

 

東京大学は真剣に学んでいる人が多く、それゆえに自分を見つめられる場所だと思います。大学で思いっきり学びたい方は、ぜひ東大に来てください。

 

※東京大学初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/fly/

前回の記事を読む

第41回 旅を終えて~日本と途上国について考えた

第40回 世界の幼児教育の現場から日本へのフィードバックを目指して

 

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~よい先生とは「子どもに学ばせる」先生 

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第36回 シンガポールの幼児教育ワークショップ体験記 その4

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第35回 シンガポールの幼児教育ワークショップ体験記 その3

教育評価法「Learning Story」を学ぶ ~Learning Storyの書き方 

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第31回 発展途上国の子どもたちに、実践を通した学びの機会を与えるEQLの試み  ~マレーシアの事例紹介 その1

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