進路の選択肢を広げて!

東京の大学生が自分の経験を高校生へ伝えるイベントを沖縄で

笹森宥穂さん(東京大学2年)                       

笹森さん
笹森さん

高校生の悩み事、不安なことって何でしょうか。部活、恋愛など様々ですが、「進路選択」も多いのではないでしょうか。

 

部活や勉強と同時に志望校選びや将来設計をするのは簡単ではありません。特に首都圏や近畿以外の、いわゆる「地方」と呼ばれる、地元に大学が多くない地域に住む高校生は、地元以外からの情報が手に入りにくく、狭い選択肢の中で「何となく」でいろいろな決断をしてしまうことも多いかもしれません。

 

そんな地方在住の高校生の助けになりたいとの思いから始まった、「僕らはもっとぶっ飛べる」というイベントについてご紹介します。

 

「僕らはもっとぶっ飛べる」とは?

 

「僕らはもっとぶっ飛べる」は、東京の大学に進学した大学生が、「地方」と呼ばれる地域に赴き、そこに住む中高生に自分たちの経験を還元して、中高生が視野を広げられる機会を作ろう、というイベントです。大学生が自分の大学生活について、またこれまでの経験や学んだことを中高生に伝えるプレゼンテーションや、中高生の質問に答え相談に乗る座談会から構成されています。

 

このイベントは、ただの進路相談や都会への進学を勧めるためのものではありません。伝えたいのは、「自分の将来をどのように捉えたらよいのか」「どうやって自分の可能性を広げていけばよいのか」といった、「視点」「考え方」など、これからどのように生きていくのかを考えるにあたって汎用性のあるノウハウです。参加する大学生は東京生まれ・東京育ちの人や地方の高校出身者、帰国子女など多様なバックグラウンドを持っています。彼らがそれぞれの立場から、自分の経験上役に立った考え方を伝えていきます。

 

このイベントは、これまでは岐阜県の高山で実施していましたが、2016年に初めて沖縄で開催しました。この記事では、この沖縄でのイベントについてご紹介します。

 

沖縄でイベントを開いたわけ

 

そもそも、なぜ開催地に沖縄を選んだのか。きっかけは、沖縄の人たちとお話をしたことでした。

 

私が2016年夏にたまたま沖縄を訪れた時に、地元の高校生や大学生、社会人の皆さんと何度かお話をする機会がありました。その中で、沖縄という地域の独特な文化や環境を知ったのです。

 

それによると、沖縄では地元に大学が少ないため、高3の夏に部活を引退してからは、「とりあえず琉球大学を目指す」という高校生が一定数いると知りました。大学生や社会人の方からは、「アメリカに派遣するプログラムがあったり、プログラミングを勉強できたりといった、自分が高校生の頃から知っていればよかったと思うチャンスはたくさんある」という話も聞きました。

 

私自身は北海道の出身で、大学から東京に進学しました。地元にいた頃は、「留学や学生会議など様々な経験をするチャンスの多い東京の大学に行きたい」と考えていたのですが、東京に出て来てから改めて調べてみると、地元にも魅力的な機会がたくさんあったことに気がつきました。足りなかったのはチャンスではなく、チャンスを見つける視野の広さだったのです。そこで「沖縄の中高生にも、もっと広い視野を持って将来のことを考える時間や機会を増やしたい」と考え、沖縄でのイベント開催を決めました。

 

沖縄の高校生との交流
沖縄の高校生との交流

勉強する意味、挑戦する価値を考えてみよう~大学生からのメッセージ

 

イベントを開催するためには会場の予約や参加者募集などをしなければいけません。私は普段東京に住んでいるため、沖縄の大学生の知り合いや、先輩の知り合いである沖縄の企業様の協力のもとでなんとか準備を進めていきました。また、参加する大学生を団体内で募り、当日どのようなプレゼンをするのかなど調整を進めました。

 

迎えたイベント当日、会場には高校生だけでなく、小学生のお子さんを持つ保護者の方々や、部活動のコーチにもお越しいただきました。

 

大学生のプレゼンの1人目は、「点描法としての人生」というタイトルでした。「人生は点描のようなものと考えてみると面白い。今はわからなくても、すべての経験は将来何かに生きてくるはず。今は、どんなことにでも勇気を持って挑戦し、自分の人生という絵画を完成させるために経験という点を打っていこう」という、今挑戦することの大切さを説くものでした。

 

2人目は「その思考、エビありますか?」というタイトルで話しました。「エビ」とはエビデンス=根拠のことで、「なんとなくではなく、根拠をもとに将来のことを考えていこう。進路選択などの際、『どうせ無理だろう』と諦めるのではなく、できない根拠は何なのかを考え、本当に無理だという根拠があるまで諦めるべきではない。今は選択肢に入っていない沖縄以外への進学や海外進学も、奨学金や制度などをよく調べれば十分選択肢に入ってくるはずだよ」という、力強いメッセージでした。

 

さらに、経験豊富な大学院生からは、これまでの体験から「勉強は何のためにするのか」を解説してもらいました。高校で学習する各科目について、将来どのように生きてくるのかという解説もあり、「なぜ勉強しなければいけないのか?」という中高生の疑問に答える説得力抜群のトークでした。

 

その後は参加者・大学生が輪になって座り、和気藹々と座談会が行われました。苦手科目をどうやって勉強したら良いかという高校生からの質問や、大学生に将来の夢を尋ねる質問まで、様々な角度から「物事の捉え方」をシェアする時間となりました。

 

今回訪問した大学生は広島、愛知、埼玉、北海道など東京以外の出身者が多く、「なぜ関西ではなく東京に進学したか」「今思えば、高校生のうちに何をしておけばよかったか」など地方出身者ならではのテーマで、参加者の方々と意見を交わすことができました。

 

参加者からは、「話を聞いて、何事にも挑戦してみようかなと思った」「親として、もっと子どもに挑戦を促したいと思った」といった意見をいただきました。一方で、メインターゲットであった中高生を当初予定していたほどは集められず、「もっと中高生が参加しやすいように工夫してほしい」といった感想も見られるなど、これからこのようなイベントを広げていくにあたっての集客・広報の面で課題も残りました。 

 

参加者との記念撮影
参加者との記念撮影

運営団体Bizjapanとは

 

「僕らはもっとぶっ飛べる」を運営しているのは、Bizjpanという学生が主体の特定非営利活動法人です。このイベントの他にも、地方創生のため東北や北陸で外国人向けツアーを開催したり、アメリカやシンガポールなど世界中の学生を招致するカンファレンスの運営をするなど、様々な活動を行っています。グローバルで大掛かりなプロジェクトも多く、内容は一見バラバラに見えますが、全てに共通するのは「メンバー個人の問題意識から始まっている」ということです。所属しているメンバーたちが、日々の生活や勉強の中で様々な社会問題を発見し、「それを解決するにはどうすれば良いのだろう?」と考え始めたところから全てが始まっているのです。

 

私は大学1年生の春からBizjapanに加入しました。高校時代に東京の大学生に接する機会がなかったこともあり、最初はアクティブに活動する先輩方と地方から上京してきたばかりの自分との間に大きな差を感じていました。しかしやがて、先輩の中にも地方出身で自分とさほど変わらない高校時代を過ごしていた人も多かったり、高校を中退した後に大学入試にチャレンジした人もいることがわかってきました。それからは、先輩方がどのようにして今のような大規模な活動をするまでになったのかを学び、自分でも、地方出身という経験を生かした、先に紹介したようなイベントを開催することができるようになりました。

 

その点では、私は東京の大学に進学してからようやく「自分でもいろいろなことができるかもしれない」という可能性を知り、視野を広げることができたと言えます。「僕らはもっとぶっ飛べる」というイベントを通じ、多くの高校生に、もっと早くこのような体験をしてもらえたらと思い、さらにこのイベントを拡大していきたいと思っています。

 

自分の地域でもイベントを開催してほしい、将来や進路についての「考え方」や「視点」を、大学生という視点から知りたいという方がいらっしゃいましたら、ご連絡をいただければと思います。

 

Bizjapanのホームページはこちら

http://bizjapan.org/

 

わくわくキャッチ!
今こそ学問の話をしよう
河合塾
ポスト3.11 変わる学問
キミのミライ発見
わかる!学問 環境・バイオの最前線
学問前線
学問の達人
14歳と17歳のガイド
社会人基礎力 育成の手引き
社会人基礎力の育成と評価