第14回全日本高校模擬国連大会

コロナ禍の真っただ中、オンラインで開催された模擬国連全日本大会

~会議行動の新しい時代の扉を開いた2日間

写真提供 グローバル・クラスルーム日本委員会
写真提供 グローバル・クラスルーム日本委員会

 

2020年、まさに瞬く間に世界中を覆いつくした新型コロナウィルス禍は、未だ終息の兆しを見せていません。私たちの生活は大きな変化を余儀なくされ、日々の経済活動や教育活動の多くが、対面からオンラインへ移行されることになりました。予定されていたイベントは次々に中止や縮小が続き、通学や授業といった学校生活の基盤すらも制約を受けることになりました。

 

高校生活で特に大きな影響を受けたのが、学校間の交流でした。感染予防のために、移動を避け、「密」を回避することは、交流試合や大会、コンクール、合同イベントなど様々な貴重な機会を奪うことにつながり、くやしい思いをした皆さんも多かったことと思います。

 

でも、そんな状況に負けず、オンラインの様々なツールを駆使して交流を実現する試みが、高校生自身の手で次々に生み出されました。リアルに交流することはできなくても、移動の負担や先生方に引率していただく必要がなくなったことで、時間や距離の壁を越えた新たな出会い場を作り出し、「コロナ後」の交流のあり方にも一つの示唆を示すことになりました。

 

高校生が様々な国の大使になりきって、実際の国連で議論される国際問題について議論する模擬国連。毎年11月に開催される全日本高校模擬国連大会(グローバル・クラスルーム日本委員会・公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター共催:以下、全日本大会)も、第14回となる今年は、オンライン開催となりました。今回は書類審査で各校から1チームずつ、54チームが参加して11月14日(土)・15日(日)の2日間行われました。

 

毎年、まさに3密の空間で熱い議論が繰り広げられてきた全日本大会とはまったく異なる環境でしたが、大使たちは新しい環境のもとで、すばらしい議論を展開しました。

 

今回は2日間の会議レポートと、入賞校の大使の皆さん・全日本大会の会議監督と議長を務めたグローバル・クラスルームの大学生の皆さん、そして今回オンラインで開催された初心者向け体験会「MOGIMOGI」のスタッフの皆さんへのインタビューをお届けします。

 

会議レポートは、毎年全日本大会を取材している、みらいぶ特派員の猪股大輝さん(東京大学大学院教育学研究科)にお願いしました。

 

 

すべての国の利益のためだからこそ、コンセンサス(全会一致の採択)が必要

今回の議題は「宇宙利用(Uses of Outer Space)」。議場の設定は、第75会期国際連合総会特別政治問題・非植民地化委員会(第四委員会)です。

 

 

議題解説書はこちらから

※この議題解説書の著作権はJCGC(グローバルクラスルーム日本委員会)に属します

 

 

1961年、ソビエト連邦(当時)のユーリ・ガガーリンが初めて有人での宇宙飛行を成功させてから60年。数多くのヒトやモノが宇宙へ飛び立つようになって、宇宙は単なる冒険の舞台から、我々の日常生活を根底から変える技術革新の場となりました。例えば、スマートフォンの地図アプリで自分の現在地がわかること、飛行機の中や離島なども含めて世界中どこでもインターネットにつながること、リアルタイムで雨雲の動きがわかったり正確な天気予報が日々提供されたりすること、これらはすべて、宇宙空間を利用することによって得られた成果です。

 

一方で、宇宙利用には各国や企業の様々な利害が錯綜しています。即座に思いつくだけでも、自国でロケットを打ち上げて国益に沿った目的の衛星などを投入できる先進国と、そうでない途上国では、明らかに宇宙開発に対する立ち位置が異なります。あるいは、今回の議題ではテーマとして扱わないこと(アウトオブアジェンダ)になっていましたが、宇宙からは国境に制限されず様々な情報を取得できるため、安全保障や機密保持の観点から大きな対立が生まれ得ます。国連には、こうした対立を調停しつつ、より効率的に・公正に宇宙利用を推進していくための枠組みづくりが求められています。

 

このために、国連ではこれまで様々な取り決めが作られてきました。この取り決めのうち、最も参加国の多いものが、1967年に発行された「宇宙条約」です。宇宙条約は、その成立時期からも分かる通り、当時の二大勢力のアメリカとソ連の宇宙開発競争が熾烈さを増す中で、基本的な宇宙活動の枠組み定めたものです。この原則のうち最も根本的なものが、

 (1)宇宙利用は「すべての国の利益のために」行われる

 (2)宇宙空間は「国家による取得の対象にはならない」

の2点で、これらの原則は、現在も受け継がれ、議論の根本に据えられていますが、原則を実質化するための実効的な枠組みづくりは、いまだ完成を見ていません。

 

この「宇宙条約」発効から既に50年以上が経過し、冷戦の終結や発展途上国の台頭などの国際情勢の転換、あるいは宇宙開発の発展に伴う様々な問題の発生など、宇宙空間をめぐる環境は大きく変化しました。このために、「宇宙条約」の条文と対立する状況や、新たに枠組みを作らなければならない状況も生まれています。

 

具体的な課題を見てみましょう。

 

○宇宙開発を国家のみならず、民間企業も積極的に担うようになっていること

 

前述の宇宙条約で、「宇宙に関する活動は『政府機関によって行われるか非政府団体によって行われるかを問わず』国家が責任を負うこと」を規定しています。しかし、特に近年、スペースX社など、多くの民間企業が宇宙開発に参入してきており、こうした企業活動の成果を、前述の「すべての国の利益のために」の原則とどのように適合させるかが大きな問題となっています。

 

 

○宇宙開発の発展に伴って、宇宙の持続的開発に影響する大きな問題(具体的にはスペースデブリに関する問題)が喫緊のものとなっていること

 

宇宙空間の軌道上には、用済みとなった人工衛星やロケットの機体や、放出されたボルトやナットなどの部品など、多くの宇宙ゴミ、すなわちスペースデブリが漂う状況となっており、この数は年々増加しています。スペースデブリは、非常に高速で軌道上を周回しているため、活動中の衛星に衝突すると非常に危険であり、宇宙の今後の開発を持続的に進める上で大きな障壁となっています。これを誰が・いかなる方法で・どのように除去するのか、その費用や責任をどのように分担するのか、さらに今後の排出量をいかに低減していくかは、今後の宇宙利用の在り方を左右することになります。

 

○技術の発展に伴って宇宙空間に存在する資源(特に月に存在する資源)の活用が現実味を帯びてきたこと

 

前述の宇宙条約では、宇宙の領有禁止が定められているだけで、宇宙空間から取得される資源の活用については規定されていません。この点については、特に「月の天然資源の開発を律する国際レジームを設立する」ことを定めた「月協定」(1979年)も存在していますが、2019年段階で18か国しか批准しておらず、宇宙開発で主導的な立場にある国も参加していないため、実効性に乏しいものとなっています。

 

技術の発展に伴って、月などの資源開発がいよいよ現実味を帯びてきた中で、資源開発技術を積極的に開発する先進国と、「すべての国の利益のために」を原則とする宇宙利用の原則をいかにすり合わせるかが問題となっています。

 

このように、宇宙利用により我々は多くの便益を享受していますが、一方で、解決しなくてはならない多くの課題を抱え、新たな枠組みづくりが求められている状況です。今回模擬された国連総会第四委員会(特別政治問題・非植民地化委員会)では、毎年こうした問題について議論を重ね、多くの決議を積み上げてきました。

 

今大会では、こうした過去の取り組みをもとに、より実行的な枠組みづくりが求められました。なお、これまで第四委員会の決議を踏まえつつ、宇宙問題を取り扱ってきた政府間機関である国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)の意思決定は、すべてコンセンサス(全会一致)で行われてきた前例があります。第四委員会の決議自体は、出席国の過半数で行われますが、決議を実行化するにあたりCOPUOSでのさらなる議論が必要であるため、今回の決議もコンセンサスで行われることが強く望まれていました。

 

 

そもそも「すべての国の利益」と自国の国益は両立するのか

今回の会議では、以下の2つの論点が設定されました。

 

論点(1):すべての国の利益のための宇宙利用

 

宇宙条約において、宇宙利用は「すべての国の利益のために」行われると規定されています。しかし、実際には各国の宇宙開発能力に大きな差異があり、宇宙開発の先進国が利用によって得た情報や資源など様々な利益をいかに途上国に対して分配していくかが課題となります。

 

この「分配」について、大きく2つの方法が考えられます。一つが、先進国が途上国に対して技術移転や情報共有を行って、長期的に途上国の宇宙利用能力向上を助ける方法。もう一つが、宇宙利用によって得られた情報(例えば、気象衛星によって提供された気象予報情報、地球観測衛星によって観測された地上の画像データなど)を直接途上国に提供することで、短期的に利益の分配を図る方法です。

 

今回の会議では、この2つの方法を念頭に置きつつ、特に先進国が途上国に対してどのような義務を負うのか、また近年宇宙利用に対して存在感を強めつつある民間企業を、この枠組みに対してどのように組み込んでいくのかが争点となりました。

 

論点(2):持続可能な開発と宇宙

 

この論点の主眼は、前述したスペースデブリの問題にあります。現在も増加し続けており、衛星の運行を含む宇宙利用の持続的な開発のために支障となっているスペースデブリを、誰が・どの程度費用を負担して宇宙空間から除去するのか、また今後の排出量を抑制するのかが争点となります。

 

今回の会議では、これまで宇宙利用を推進してきた先進国の責任を強調したい途上国と、スペースデブリの除去・排出抑制の必要は認めつつ、すべての国の費用負担のもとに、民間企業の技術なども活用しながら効率的に事業を進めていきたい先進国との間で議論が交わされました。

 

 

 

論点ごとに意見や立場が食い違うために、合意形成はいつにも増して難しい

今回の全日本大会では、1日目に論点1と論点2でそれぞれWP(Working Paper:作業文書)を作成し、2日目にDR(Draft Resolution:決議案)を作成し、決議するという流れで議論が進みました。

会議は27か国ずつ議場A・Bの2つの会場に分かれて行われました。このレポートは議場Bを中心としたものです。

 


1日目は、各国大使が行うスピーチ(公式討議)の順番決めなど一通りの進行がなされた後に、議長提案で着席討議(Moderated Caucus:着席討議(モデ))の時間が長めに取られ、特に論点1に関する各国の意見や立ち位置を議場で共有しました。ここで浮き彫りになったのが、今回の議題を巡ってどのような国家グループでまとまり意見を集約するかについて様々な立場があると、いうことでした。

 

前述のように、宇宙利用を巡っては、これまで宇宙利用を進めてきた開発先進国と、そのような手段を持たないその他の国との間に明確な対立構図があります。しかし、国ごとの状況をさらに詳しく見ると、他国の技術協力を得つつ、徐々に宇宙開発能力を高めている新興国(中間国)のグループも存在します。

 

さらに、この先進国/新興国/途上国、という枠組みも確固たるものではなく、例えば、新興国の中には、宇宙利用については途上国に情報供与を求められる立場であることから先進国よりの立場を取るものの、スペースデブリの除去・削減については、これまでの排出量が少ないことからむしろ途上国よりの立場を取り、従来スペースデブリの問題解決に積極的でなかった先進国へ要求する立場に回る、という立ち位置が考えられます。

 

 

このように、論点ごとに細かい意見の相違が見られる中で、議場でどのような国家間グループを形成し、論点に関する意見集約を図るかが、議論全体を通じて大きな課題となりました。結果的に、グルーピングの課題を明確化するために相当の時間を要したため、論点1に関するWPの提出期限までに内容に関する議論時間が足りなくなり、宇宙資源利用など、論点1に含まれる重要な問題の議論が棚上げされたり、グループとしてWP(Working Paper:作業文書)を提出できなかったり、といった事態が生じました。一方、論点2のWP提出に向けては、一応のグループとして先進国/新興国/途上国の3つのグループが確定し、複数のWP提出がなされました。

 

 

2日目は、非着席討議(Unmoderated Caucus:非着席討議(アンモデ))の時間が長く取られ、前日に提出されたWPの内容を足がかりとしながら、議場に形成されたグループ間でのコンバイン(統合)交渉と、論題として残されていた宇宙資源利用をめぐる意見集約が図られました。しかし、交渉の中で再び浮き彫りになったのが、今回の議題をめぐるグルーピングの難しさでした。

前日までに一度形成したグループであっても、議論するテーマによっては他のグループの意見に引き寄せられる国も多く、議場は一見3つのグループ分けを基盤として徐々に一つにまとまっていくように見えても、内情は極めて流動的でした。

 

また、論点が広範に渡ったことから、特に宇宙資源利用に関しては内部の意見集約が終わらないグループもあり、具体策までは踏み込みきれないところもありました。結果的に、両議場とも2本のDR(Draft Resolution:決議案)がフロントに提出されましたが、提出直前でスポンサー国の移動が相次いだため、スポンサー数不足のために不受理となるものが発生し、最終的にはそれぞれ1本ずつのDRが受理され、決議にかけられました。

 

受理されたDRは両議場とも参加国の過半数をもって決議されましたが、コンセンサスには至ることは出来ず、課題も残った会議となりました。しかし、可決されたDRの中には、スペースデブリの排出量削減に対して、京都議定書に見られるCO2排出量規制の方法を参考にした制度が提案されるなど、独自で新たな視点に立った見方を盛り込んだものもあり、一定の成果を残すことができました。

 

 

 

オンライン会議でのリーダーシップのあり方が浮き彫りに

今大会では、オンラインという環境のもとで、これまで対面で行われてきた模擬国連の議論の進め方が通用しない場面が見受けられました。

 

これまでの大会であれば、あるリーダーは、事前の調査データなどをもとに、自グループに集った各国の利益が最大化するようなDR案を予め用意してきて、グループ内の各国にその案の意義を説明したり、説得したりすることで、理想的な議論を実現しようとするような、いわばトップダウンの方法をとるのに対し、他のリーダーは、自分たちのDR案自体は用意して来ていても、各国大使の意見を傾聴し、合意を重ねて案を組み上げていく、いわばボトムアップの方法を取る、といった、タイプの異なるリーダーシップの方法がとられてきました。

 

もちろん、トップダウンを強調しすぎると、高圧的に見えて他の国はついて来なくなってしまいます。一方で、ボトムアップを重視しすぎても議論が拡散してまとまらなくなってしまうので、これまでは、この2つの方法のバランスをどのようにとるかで、各国大使の個性が光ってきました。

 

しかし今大会では、トップダウン的な方法よりも、ボトムアップ的な方法を重視するほうがうまくいく傾向が、例年に増して強かったように感じました。これは、オンライン開催の特性に因るところが大きかったと思います。

 

まずオンライン会議では、現在のテレビ会議システムの機能では、同時に複数の人が話すことができず、結果的に多くの大使が発言する時間を割り当てる必要があります。ふだんの会議であれば、リーダー的に引っ張っていく大使が話している間にも、議題の内容を調整したり、あるいは外交役の大使の報告を聞いたり、といった活動を同時並行して行うことができます。

しかし、オンラインでは、一つのブレイクアウトルームでも一人ずつしか話すことができません。そのため、リーダー役の大使が話を続けようとしても、様々な要因でさえぎられてしまうことも多く、結果的に全体に話を回しながら意見をまとめていくようなリーダーシップのほうが有効であった印象がありました。

 

 

次に、オンライン会議では、場の雰囲気を感じ取りづらく、多くの大使が本当に理解しているのか、あるいは賛同しているのか掴みきれない一方で、資料が常に共有されるため、今何を議論しているのか、複数グループの議論の状況を誰でも把握できようになったことは大きな変化でした。

 

これらの特性ゆえに、ある大使がグループをリードし、一見まとまったように見えても、WPやDRの提出直前にスポンサー国の離脱が起きたり、文言の表現レベルの指摘が相次いで時間が足りなくなったり、といったことも多く発生していました。

 

ふだんの会議であれば、議場全体の大きな流れが合意形成を生み出すこともありますが、オンライン会議では、良くも悪くも細かな違いが可視化され、些細な議論に時間がかかる場面が散見されました。

 

こうした場面では、各国の希望を先回りして対応するトップダウンの方法よりも、他の大使の意見を傾聴するボトムアップの方法のほうが有効だったのかもしれません。しかし一方で、話を聞くことに時間をかけ過ぎて時間配分に失敗する場面もあり、オンライン独特の課題も浮き彫りになっていました。

 

 

 

 2日間の会議終了後の閉会式で、議場ごとに最優秀賞1チーム、優秀賞2チーム、地域特別賞1チーム、ベストポジションペーパー賞1チームが発表されました。

 

[最優秀賞]

A議場:灘高校 日本大使

B議場:渋谷教育学園渋谷高校 ナイジェリア大使

 

[優秀賞]

A議場:開智高校 チリ大使

A議場:駒場東邦高校 ドイツ大使

B議場:大妻高校 大韓民国大使

B議場:桐蔭学園中等教育学校 ルクセンブルグ大使

 

[地域特別賞 (※)]

A議場:高水高校 イラン大使

B議場:宮城県仙台二華高校 チリ大使

 

[ベスト・ポジションペーパー賞]

A議場:聖心女子学院高等科 インドネシア大使

B議場:大阪府立天王寺高等学校 ドイツ大使

 

※地域特別賞は第12回大会より3年間にわたり設置。過去に高校模擬国連国際大会に派遣された学校のない都道府県から参加した、各議場最大1チームに授与されます。

 

 

入賞校の大使に聞きました

「ニューノーマル」の環境の中で、他の大使から信頼を置いてもらえる行動を心掛けた

 伊丹裕貴くん(2年)、一高学仁くん(1年)

 灘高校(兵庫県) 担当国:日本              

 

オンラインの特徴を活かして、一緒にDRを出したいと思えるグループにすることを目指す

 江口花音さん(1年)、高槻俊輔くん(1年)

 渋谷教育学園渋谷高校(東京都) 担当国:ナイジェリア

 

途上国と先進国の橋渡しを目指し、常に全体を「俯瞰」する目を持つことを心掛けた

 福井達於都くん(2年)、高橋侑里さん(2年)

 開智高校(埼玉県) 担当国:チリ

 

良い政策を共同で作成する努力を続けた結果、グループ外でも賛同の輪が広がった

  伊藤 碩くん(2年)、坂崎遼太郎くん(1年)

 駒場東邦高校(東京都) 担当国:ドイツ

 

「目立つ交渉」よりも「柔軟な交渉」を目指し、コミュニケーションの輪を広げて各国の意見を調整

 根岸里帆さん(2年)、蜷川和夏さん(2年)

 大妻高校(東京都)  担当国:大韓民国          

 

希薄になりがちなコミュニケーションの密度を上げる工夫で、ペアや他国の大使との連携を図った

 青木研人くん(5年)、田端 開くん(4年)

 桐蔭学園中等教育学校(神奈川県) 担当国:ルクセンブルク  

 

担当国の独特な「国益」を全面に押し出し、毅然とした姿勢を貫いた

 森脇 優くん(2年)、丸小野成輝くん(2年)

 高水高校(山口県) 担当国:イラン           

 

初出場の全日本大会がオンライン! ワクワクしながら達成感を得た、刺激的な2日間

 田中愛莉さん(2 年)、三浦花梨さん(2年)

 宮城県仙台二華高校(宮城県) 担当国:チリ              

 

■会議を運営したグローバル・クラスルームの大学生の皆さんに聞きました。 

会議監督インタビュー

現代の情勢を踏まえて既存の枠組みを考え直すための議論の難しさと可能性

井原 渉さん

東京大学工学部航空宇宙工学科3年

 


議長インタビュー

こんな状況の中でも全国から集まって議論できたことの意味を考えよう

議場B 議長 常世田将史さん

東京外国語大学国際社会学部3年

 

■今回はオンラインで行われた初心者向けの会議「MIGIMOGI」を運営したスタッフの皆さんに聞きました。 

MOGIMOGI実行委員インタビュー

地域という「壁」を超えて模擬国連のすばらしさを体験できる場を実現

渡邊玲央さん

東京大学教養学部2年 

 

会議を終えて

全日本大会がオンライン開催になると聞いた時、「オンラインであの熱い、濃密な議論ができるのだろうか」というのが、正直な印象でした。議場のスペースを目いっぱい使ってきめ細かな交渉を行い、合意形成を組み立てていく文字通りの「知の格闘技」がオンラインでできるのだろうか。場数を踏んだモギコッカーが多数参加する全日本大会では、むしろ当惑する人が多いのではないか、と。

 

しかし、全国の学校や自宅から参加した大使の皆さんは、粘り強い努力と機敏な対応能力をもって臨み、新たな模擬国連の形を見せてくれました。

 


大使の皆さんへのインタビューでも挙げられていたように、オンライン会議の大きな特徴は、

「今何を議論しているのか」が全ての参加者に共有されることです。リアルの会議では、グループの中にいても、何が問題になっているのかがつかみきれない場面もありますが、オンラインでは画面共有をすることで、参加者が平等に議論に参加することができます。特にその特徴が活かされたのが、WPやDRなどの文書の作成でした。

 

リアルの会議では、数人で作ったものをグループ内でUSBで共有して確認するしかなかったのが(※)、画面共有で皆で相談し、確認しながら文章を練り上げていくことができます。自国の利益がきちんと反映されているか、どういった表現にすれば対立する意見を合意に導くことができるか、といったプロセスも全員が共有することが可能になりました。

  ※全日本大会の会場では、インターネットの使用は禁止されています

 

その一方で、やはり難しかったのはペア同士、あるいは大使同士の意思疎通でした。特に今回は、ハウリング防止と参加条件の統一のため、ペアで同じ部屋からの参加が禁止されていたため、ペア同士の連絡もSNSや電話で行わざるを得ず、困難を感じたペアも多かったようでした。

 

また、オンライン会議はギャラリービューにすると一人ひとりの画面が小さくなるため、身振り手振りなどのノンバーバルコミュニケーションがやりにくいこともあります。ホワイトボードや付箋などのツールも使いにくいため、相手に自分の意見を伝えることの難しさとともに、相手にきちんと伝わっているかを知ること自体の難しさもあるのです。

 

 

そんな中で、今回先に述べたようなボトムアップ的な方法で会議をリードした大使たちは、現在問題になっていることは何かをわかり易く伝えたり、相手がどこまで自分たちの意見に合意しているかを確認しながら交渉を進めたり、という工夫が終始優れていました。これはオンライン会議に関わらず、リアルの会議行動でも非常に重要です。しかし、それをオンラインという環境の中で実際どのように行えばよいか、ということは、リアルの会議以上に工夫が必要であることがよくわかりました。

 

たとえこのコロナ禍が終息しても、私たちは今まで以上に、「なぜこのイベントを対面で(あるいはオンラインで)行うのか」、ということを常に意識させられることになるでしょう。こうした中で、オンラインを対面の補完として見るのではなく、新たな様式としてとらえ、対面では為し得ないような創造性が見出されていくのではないでしょうか。

 

今回の全国大会は、いくつかの課題も示された一方で、こうした新たな会議行動のあり方への道標を見せてくれました。

 

 

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