それぞれの放課後

漢字狂いが「漢字上達ソフト」開発! 学会発表を梃子(てこ)に推薦入学の道を開いた

間辺美樹(よしき)くん(元神奈川県立平塚中等教育学校)

間辺美樹くんは、高1のとき漢検1級に合格。どんな難漢字も熟知する間辺くんは、漢字を使える力が身につく、まったく新しい「熟語マニア」という漢字上達ソフトを高2で開発しました。その開発研究を論文にまとめ、大学や企業の研究者の学会の場で大人に交じり発表、最優秀発表賞を受賞。さらにこの春、東大推薦入試で工学部へ進学しました。

 

「自分の好きなことだけ、のめり込んだ」という間辺くんが、漢字ソフト開発と、それが拓いた学会発表や東大入試を語りました。

第1章:どこにもないから作ってみた ~漢検1級合格を経て、ソフト開発へ

趣味は漢字。5歳のころから、寝ても覚めても漢字、漢字、漢字。最初に覚えた漢字は「間」です。訓読みで「あいだ」と読むので教育漢字ドリルでも、あいうえお順の最初に出てくるから。

 

小学校1、2年の担任が国語の先生で、いろいろ見たこともない漢字を教えてもらって、だんぜん漢字が好きになりました。

 

何を血迷ったか、小1~小3までの教育漢字を1字1字ノートに写しました。それを終えると、すぐに小4~小6の漢字に取り掛かり、マスターしました。そのくせ、ただ読み書きするだけの漢字ドリルの宿題は大嫌い。人から強制されるのはイヤだったから。

 

小学校高学年の頃、他の高校で漢検のテストが実施されていたので、先生に「今から漢検に行ってきま~す」と言って、授業を抜け出して受けたこともあります。先生も「そうか行ってこい」(笑)。

 

しかしこんなに自分の好き勝手ばかりをやって、どうしてここまでやってこられたのやら。うまくやるコツをつかんだ最初のきっかけは、高1の2月。念願だった漢検1級に合格したことです。その1つ下のランクの準1級取得が中2だから丸2年かかる苦労をしました。1級の難問の漢字を調べるために漢和辞書を何度も何度も引いて、その漢字の意味や成り立ちを覚えていきました。それから意味を理解することが漢字上達に一番大事と思うようになりました。

 

漢字のネットワークが大事!
漢字のネットワークが大事!

僕が考えたのは、今まで誰も作ったことのない漢字上達ソフトでした。ソフトを作る前に現在出回っている漢字学習ソフトを調べたら67種類ありました。しかし「読み書き」を反復させるだけのソフトが圧倒的に多くて、意味を理解させて漢字を上達させるソフトはまったくありません。

 

高2になって、自分の考えを一人でも多くの人に知ってもらいたい、それなら、だれも作ったことがないソフトを作ってみようと、「熟語マニア」開発は始まり、半年かけて完成しました。

 

 

秘訣は「熟語」。漢字上達ソフトができた!

 

漢字上達ソフト「熟語マニア」は、こんなソフトです。画面に、禍という漢字がお題として表示され、下の段に「禍」を含む熟語の禍中、禍福、戦禍、惨禍が4択問題として表示されます。そのうち1つは誤りで、正しい3つの答を選んでいくというクイズ形式です。

 

「禍」の漢字の横には、「禍」は「わざわいや災難」の意味だよ」というヒント欄を設けています。4択のうちの1つで誤りの「禍中」は、正しくは「渦中」と書きます。「渦中」は、「水のうずまく中」という意味だから、「わざわいや災難」を意味する「禍」は使わないだろうと推測できます。これに対して他の正しい3つの熟語は、「禍」の正しい意味で使われているから正解と理解できます。

 

このようにして、漢字1字と熟語とを対応づけることで、漢字の意味を理解し漢字を使える力が身につくんじゃないかと考えたのです。漢字ソフトの問題の難易度は、普通の高校生でも解けるように、漢検2級~3級レベルとしました。

 

できあがった「熟語マニア」の画面
できあがった「熟語マニア」の画面

 

ソフトに使うコンピュータ言語は、「フラッシュ」というプログラミング言語を選びました。実はプログラミングは苦手でしたが、この言語を選んだのは、双方向性のある処理ができるとのことで、こちらから画面を見ながら、後から修正や変更がしやすかったんです。

 

ただしフラッシュはパソコンで使えてもスマホでは使えません。次は「熟語マニア」をスマホでも使えるようにすること。さらにバージョンアップした「熟語マニア」を作りたいと思っています。

 

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