全日本高校模擬国連大会2017

複雑に対立し合う主張の中で、抽象的な言葉の微妙なズレを議論することでグループ内の認識を共有

頌栄女子学院高校Aチーム[東京都]

橋本京さん(2年)、元田有香さん(2年)

担当国:ポーランド 

左から 元田有香さん、橋本京さん

写真提供 グローバル・クラスルーム日本委員会

 

1.担当国を希望した理由をお教えください。

 

昨年も全日本大会に出場したのですが、そのときは中東の国を担当したので、今年は地域を変えてEUの国を担当したいと思っていました。EUの国々を希望に挙げ、第三希望のポーランドを担当することとなりました。事前に調べた際に、ポーランドは女性の大学進学率が男性よりも高いなど、女性の社会進出が進んでいて関心を持った国だったので、担当国に決まったときには、この国で頑張りたいと気持ちが固まりました。

 

2.担当国のジェンダー平等に対する姿勢と、国際社会で問題になる(と考えられる)点を教えてください。

 

ポーランドは、女性の社会進出にはとても積極的です。また、LGBTQ+(性的少数者)の存在を認めたり、安全を確保したりすることは法的に保障しています。しかし、国民の多くがカトリックであるため、同性婚は法的には認めていません。EUでは婚姻も人権のうちに含まれるという考え方が広まっており、EU内ではポーランドの姿勢は問題にされる可能性があります。ただ、私たちはそれをプラスに捉えました。性的指向や性自認の人権保障を推進したい立場と、それに慎重な立場との間に立って、交渉を仲介する役割ができると考えたからです。

 

3.準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

 

今回の議題は、過去の大会と比べて価値観や文化が前面に出ていたと思います。援助国と被援助国がはっきりしていて立場を調べやすい議題とは異なり、背景に隠れている価値観や歴史を踏まえて、しっかり自分で考えて担当国の立場について結論を出すよう求められたことが、特に難しく感じられました。工夫した点は、私たちの交渉結果がポーランド国民にどう受けとられるかを強く意識して、事前のリサーチを行ったことです。(橋本さん)

 

目指すべき方向性について、コンセンサスが得られていない議題であることに苦労しました。ポーランドの情報を収集するだけでなく、これまでの国際社会の議論の流れを調べ、過去の決議などを読み込んで、考え方を理解するよう心がけました。また、自国の情報を探し出すことにも苦労しました。例えば、同性婚についての法律の文言は見つけられても、それが実際にどのように運用されているかは調べ切れませんでした。(元田さん)

 

4.大会当日は、どのようなことに気をつけながら会議に臨みましたか。

 

2人とも共通して当日に意識したことは、自信を持つ、焦らない、役割分担の3つです。議場の動きが速くても、また所属するグループがまとまらなくても、動揺せずに落ち着いて対応しようと心がけました。同じグループの大使の意見を聴くことを大切にしたいと思っていました。意見を言える雰囲気を作らなければ始まらないので、まず聴くことが大切だと思っています。グループ内に取り残される大使がいないようにしたいとも思っていました。

特に、抽象的な言葉の微妙なズレを皆が理解して議論したかったので、2日目の朝に模造紙にグループ内で出た意見をリストアップして見せました。模造紙に対して「ちょっと違う」などと皆が意見を言い合ってくれたおかげで、認識を共有することに貢献できたと思っています。(橋本さん)

 

ポーランドの立場からは賛成できないとしても、他の宗教や文化を全否定しないように気をつけました。相違点に注目するのではなく、共通点に目を向けて、合意できる内容を積み上げていくことを重視しました。私は、他のグループとの交渉を主に担当したので、どこかで動きがあったと感じたときには、積極的に話を聴きにいきました。そして、自分のグループの情報を他のグループに紹介するときには、個人的な見解は交えずに、事実に徹するように心がけました。

また、立ち居振る舞いにも気をつけたつもりです。大使としてふさわしいよう、声をやや低めに、ゆっくりと、伝わりやすく話したいと思いました。実は、これについては自宅で何度も練習をしました。

(元田さん)

 

写真提供 グローバル・クラスルーム日本委員会
写真提供 グローバル・クラスルーム日本委員会

 

5.会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。

 

タイムマネジメントに最も苦労しました。1日目は時間の管理が甘かったこともあり、文書の体裁が整わないまま提出することになってしまいました。2日目は、失敗を繰り返さないようにと早くから文書作成にとりかかったのですが、スポンサー国の数を把握し切れておらず、文書を提出できない結果となりました。グループに一緒にいた大使の意見を議場に伝えるチャンスを失わせてしまい、本当に申し訳なく思っています。落ち込んでいたのですが、パートナーから「あきらめないで、頑張ろう」というメッセージをもらい、頑張れました。ちょうど次にスピーチをする順番だったので、会議に貢献できることは何かを考えて、発言しました。(橋本さん)

 

各国の主張の背景に、宗教が大きく関係していることに苦労しました。歴史や文化、宗教が複雑に絡み合っていて、軽々しく踏み込んではいけないと感じていました。しかし、合意も目指したいと思っていました。宗教を尊重した上で、各大使の主張に耳を傾けることで、少しでも価値観を理解しようと努めましたが、とても難しかったです。(元田さん)

 

6.皆さん自身はジェンダーの平等についてどのような考えを持っていますか。また、それは今回の担当国の立場とどのような点が同じ(あるいは違う)でしたか。

 

触発されて考えたことはたくさんありますが、担当国の大使に成りきろうと努めてきたので、個人的な考えを述べることは控えたいと思っています。

 

7.世界大会に向けての抱負を教えてください。

 

初対面の人ばかりの環境で、どれだけ臨機応変に動くことができるか、自分の可能性を試すチャンスだと思っています。悔いのないように、精一杯、準備をします。(橋本さん)

 

私は、英会話に苦手意識を持っています。渡米までの間に英会話をどれだけ頑張れるか、またどんな雰囲気の場でも英語で交渉できるか、私にとって挑戦です。全力で頑張ります。(元田さん)

 

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