第2回全国高校教育模擬国連大会に参加して

議長

渋谷教育学園渋谷高校[東京都] 石川満留さん、E・Hさん(2年)

 

議長として、当日までどのような準備をしましたか。

 

会議本番で議長としての責務を全うすべく、主にプロシージャ(議事進行)の確認、議題に関するリサーチ、予測される対立軸やグルーピングの把握を行いました。実際会議に大使としては参加しないものの、議長というのは会議を作るだけでなく、まとめる役目を持った重要な参加者の一人であるため、会議の成功に向けて抜け目なく準備をしました。(Hさん)

 

私は副議長、通常の会議の会議監督の役割を務めていて、提出された決議案などの文書のディレクチェックを行う重要な場面があったので、論点整理と対立軸の確認は慎重に行いました。 また特に今回の議題「サイバーセキュリティ」は、国によって立場や重んじてくる論点が非常に異なるので、予めどんなグルーピング構成ができるのかなど、議場予測もしていました。必ずしも当たるわけではありませんでしたが、本番に向けてのトレーニングになるだけでなく、フロントが思う構成の仕方と大使の動き方の違いを後々知ることができ、新鮮みや気付きを得ることができたので大いに意味のある準備だったと思います。(石川さん)

 

会議当日は、どのようなことに気を付けて行動しましたか。

 

模擬国連において、議長はあくまでも会議のファシリテーターであるため、必要な場面では助言を行ったり、議長裁量という議長が持つ権限を行使したりしましたが、逆に介入しすぎないように、常に議場の様子を伺い、他のフロントメンバーと相談しながら取るべき行動を見極めました。(Hさん)

 

会議の運営を円滑に行うために、プロシージャの確認はもちろん、議長提案/催促の説明やフロントに送られてくる質問への返答はなるべく丁寧に行いました。会議を作り上げるのは大使ですが、フロントはそのサポートをするので、参加者全員が納得のいく形で進めていくことに努めました。

 

また、高校教育模擬国連大会は日本語で会議を行うことが最大の特徴であり、参加者も議論を活発化させやすく、書ける文書量が増えていましたが、その分、文書に書かれた文言あるいはその意図を読み解くことが複雑になってしまっていたことが多かったです。フロントは対立するDRが出されたかの判断や、提出された文書に矛盾が生じていないかを素早く判断することが求められているため、参加者がどのような会議行動をとりその文書に至ったのかを、アンモデレート・コーカス中などで常に各大使の様子を見ていました。(石川さん)

 

大使として参加した皆さんが、実行委員として運営に関わることで、何か新たに気付いたことはありますか。 

 

実行委員という、常に会議を俯瞰できる立場として参加することで、今までの自分の大使としての行動を振り返り、見つめなおすことができました。例えば、多くの国をまとめるリーダー国になると、どうしても仕事量が多くなり、周りについていけていない大使がいてもそれに気付くことができないという、視野狭窄に陥る危険が高まります。今回も議場が大きな2つの立場に分かれたため、そういった大使が多く見受けられ、会議全体を把握した上でどういった役割を与えられるか、また、どのようにアプローチをかければよいかと考えるきっかけになりました。(Hさん)

 

いかに議論の核心を理解し意識できているかで、発言する内容や方針、会議行動の質が変わってくることを明確に知ることができました。自分自身が大使として会議に参加していた時も、議論の方向性を一貫させようと努力しましたが、フロント側から見ると、終始議論の核心を意識して会議行動を取ることはやはり難しいのだと、再度痛感しました。

 

例えば会議で話し合う論点が3点あり、重要そうなものを1からまとめ、多数の国の意見を盛り込めていそうなありがちな文言を成果文書の中に記入しても、効力はありません。議論の内容を十分にリサーチし、問題点がどこにあるのかを理解した上で、なぜ何点かある論点のうち自国はある分野から話し始めたいのか、なぜ自国はある文言を提案しているのかを説明できるほど、行動の一つ一つに意義を持たせなければなりません。

 

もちろんどの大使も意識していると思いますが、成果文書の提出までの制限時間があるため焦った中でグループをまとめていたり、違う会議行動をとっているペアと随時会議情報を交換していたりすると、頭に入る情報がキャパオーバーになってしまい、話の本筋から逸れてしまうことが多くあります。そんな中でも問題点がどこにあるのかを見失わない行動をすると、提出される文書の質も上がります。フロント側から見たら当たり前のようなことであっても、それを実現するのは非常に難しいことであり、いかに会議中、俯瞰的に物事を考えられるのかが重要になるのだなと改めて感じることができました。自分は何をその瞬間で話し、今後にどう話し合った内容が影響を及ぼすのか、解決策につながるかをふと思い出し振り返ることは、慎重でより実効性のある決議案提出につながるのだと、目で見て学ぶことができました。(石川さん)

 

初めて模擬国連に参加した人の中には、議論の主導権が取れなくて、何をしたらよいかわからなくなった人もいたように見受けられました。国際大会を経験した皆さんの立場から、「議場全体に貢献できる会議行動」とはどんなものか、これからのモギコッカーのためにアドバイスをください。

 

グループリーダーになることが、議場に貢献するベストな方法であると一概には言えません。おそらく模擬国連において、ほとんどの大使は成果文書の提出国を目指すと思いますが、当然ながら、誰もがただリーダーを目指して覇権争いを繰り広げてしまえば、そもそも会議が機能しません。そのため、主導権を取れなかった時は決してめげず、自国がグループ、さらに議場に必要だと考える主張を行い、議論をしかるべき方向に進める発言をすることで、議場に貢献できます。そうしていると、気が付けば自分たちがリーダーのような立場になっていることがあると思います。

 

最終的に議論を主導し、会議の成果に貢献するために必要なのは、より多くの人の共感を集めることのできる発言や行動です。そのためには、徹底したリサーチと議題の分析、そしてそれらに裏打ちされた自分の主張への自信が欠かせません。(Hさん)

 

「議場全体」に貢献できる会議行動は、実現するのが大変難しいものです。会議が始まると、どうしてもグループに分かれてしまい、「議場全体」よりも自国が属しているグループの意見をまとめることに集中してしまう傾向にあります。もちろん、いわゆるボトムラインを定めることも必要ですが、国際社会が何を求め議題を投げかけているのか、その広い国際社会の中で自国がどういった位置付けなのかを意識しなければなりません。グループなど小さい単位でなく、「全体」を見ることができる視野を持つ必要があります。そのためには、まず自国の状況と会議行動をしっかりと決める必要があります。なぜその行動を取るのかの根本的な理由を持つことで一貫した姿勢を保つことができ、意見が異なる国際社会でも一貫した考えを持つ国なのだと理解されやすくなり「議場全体」に利益をもたらします。

 

また、個人的には、ペアとの連携は特に力を注いでもらいたいと思います。グループの内容を聞いて固める人と、議場把握や他のグループと早い段階で交渉を始めコンセンサスを目指す人のように、役割分担を上手に行うことでコンセンサスを目指しやすくなるのではないかと思います。主導権を握れるかの有無はあまり問題点ではなく、模擬国連ですので、いかにその国の大使を模擬することができるのかを意識することが一番重要なところだと思います。

 

初めて模擬国連に参加した方や、これからする方は、まず今の自分に何ができるのかを考えてみて、一回一回の練習会議ごとに達成する課題を定めることが、「議場全体」を見渡すことができる行動を取るために必要なステップだと思います。まずは、国益を守ろう、次はペア間の連携を強めていこう、というように一段一段達成し、徐々に行動範囲や視野を広げていくことが効果的なのではないかと思います。(石川さん)

  

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