第3回全国高校教育模擬国連大会

フロント(議長、会議監督、書記官)インタビュー

(2019年8月取材)

■議長インタビュー

100%正しい答えがない問いに対して考え続ける力が大事

浅野高等学校[神奈川県]2年 成相悠喬くん

■議長として、当日までどのような準備をしましたか。

 

議長としては、議題概説書(BG)を読み、議題把握に努めたことに加えて、プロシージャ(ルール)を理解したり、会議細則を読んだりして、会議のルールを把握するように努めました。とりわけ、私が担当した議場は、模擬国連が初めての人が多かったため、ルールを説明できるように読み込みました。

 

また、全国高校教育模擬国連大会では、参加する大使の方が全国から来られるだけではなく、実行委員も全国から集まります。当日に一丸となって会議運営ができるように、同じ議場を担当する人とコンタクトをとり、どのような会議にしたいか、どのようにしたら模擬国連を楽しんでもらえるかなどについても話し合いました。

 

■会議当日は、どのようなことに気を付けて行動しましたか。

 

私自身だけではなく、私が担当した議場では、多くの人に模擬国連を知ってもらって楽しんでもらいたい、そして何か得られるものがあればいいなと思っていました。その目標を達成するにあたり、初めての人が多い議場で、どのように会議を進めるかが難点でした。

 

しかし、「模擬国連を初めてする人」というのは、「初心者」という意味ではなく、あくまで「模擬国連のルールを知らない人」と意味であると思います。これはあくまで個人的な意見ですが、模擬国連が上手な人・下手な人は存在しないと思います。つまり、模擬国連に上下は存在せず、それぞれが一国を背負い会議に参加する同等の存在であるし、そうあるべきだと考えています。

 

また、今回参加した大使の皆さんが作成されたPosition and Policy Paper(PPP)見ても、枠がぎっしりと埋まるほど調べていて、非常な熱意を感じました。そのため、議論は活発に起こるだろうと予想し、会議のルールを丁寧に説明するように心掛けました。

 

例えば「会議のルールに不明点があれば、いつでも聞いてほしい」と折々に呼びかけ、実際に多くの大使さんがメモで質問を回したり、非着席討議(アンモデ)中に質問をしたりしてくださいました。会議に介入しすぎることなく、スムーズに会議を進行させ、また参加した大使の皆さんが「参加してよかった」と思えるように心掛けました。

 

 

■議長として会議の運営に関わることで、何か新たに気付いたことはありますか。 

 

議長として、また実行委員として、同じ高校生という立場で、全国規模の模擬国連大会に関わることで、様々なことを改めて考えさせられました。

 

まず議長としては、模擬国連が初めての人が多い議場を担当したこともあり、自分が初めて模擬国連に参加した時のことを思い出しました。模擬国連をやらないかと友達に誘われて、会議のルールを全く知らないまま練習会に行き、なんだかよくわからないことを議論して、途中でグループを乗っ取られた(その時はグループが乗っ取られたことの深刻さを認識していませんでした(笑))のが、私の初めての模擬国連でした。ただその悔しさとなんだかよくわからない楽しさに突き動かされて、今も続けています。ここは私の模擬国連デビューを語る場ではないですが(笑)、今回参加された皆さんにも、それぞれに何か特別な模擬国連デビューがあったのではないかなと思っています。

 

そして、実行委員としては、あくまで同じ高校生の立場から模擬国連大会を運営するということの意味を、私だけでなく、多くの実行委員が考えていたと思います。この点に関しては、多くの先生方も話されていましたが、「上から」ではなく、「ともに」作り上げていくことはとても重要だと思いました。また、様々な学校から実行委員が集まり、どのように運営していくか、どのように会議設計をしていくかなどを議論した時、実行委員たちから多くの刺激をもらいました。

 

■初めて模擬国連に参加した人の中には、議論の主導権が取れなくて、何をしたらよいかわからなくなった人もいたように見受けられました。国際大会を経験された立場から、「議場全体に貢献できる会議行動」とはどんなものか、これからのモギコッカーのためにアドバイスをください。

 

この質問に関しては、様々な意見がありますので、あくまで一つの意見として参考にしてくれれば幸いです。

 

まず、「議場全体に貢献できる会議行動」の「議場全体」が、いわゆる文字通りの議場全体を指すとするとします。そうすると、それを達成する方法は、ほんの少しの行動から大きな行動まで様々あると思います。例えば、周りに意識を向けるなどだけでも状況を変えられると思います。

 

しかし、「議場全体に貢献できる会議行動」の「議場全体」がさすものが、「国際益」という意味だとすると、話は複雑になります。ここからは、私の個人的な見解を多々含みますのでそんな考えもあるんだなと流してくれればと思います(笑)。

 

大使というのは、一般的に国益を最大化させることが使命だといわれます。そこで問題になるのが、「国益」と「国際益」をどのように達成するかということだと思います。「国益」とは自国の利益であり、「国際益」とは国際的な世界全体の利益という意味です。この二つは、二兎追うものは一兎も得ずといわれるように、一見どちらも追求できるものではないかと思いますが、実は二兎ではない、つまりどちらも追求可能であると私は思います。

 

というのも、自分でこの二つのタームを持ち出しておきながら、ですが、私は「国益」と「国際益」をどのようにバランスをとるかという議論自体が不要であると感じているからです。すなわち、私の意見としては、「国益」は、「国際益の中で達成するもの」であり、「国益」と「国際益」はそれぞれ独立した二つの存在(二兎)ではなく、国際益の中に国益が存在するものであると感じています。このように、「国際益」の中に「国益」を見出すという考えを持ってみると、少し見方が変わってくるのではないでしょうか。

 

上で述べたことは、あくまで私個人の意見ですので、このような質問を自分で考えてみるといいと思います。私はこの質問に対して上のような回答をしましたが、違う人に同じ質問をしてみると、また違った答えが返ってくると思います。つまり、100%正しい答えは存在しないかもしれません。多分、何年後かにこの質問を自分がもう一度された時には、答えが変わっているかもしれません(笑)。重要なのは、答えがないかもしれないものに対して、自分なりに考えてみるというプロセス自体なのではないかと思います。

 

模擬国連に参加すると、様々なこと―どうしたらもっとうまく説明できるだろうか、どうしたら議論の本質をつけるだろうかなど―を考えされられると思います。それらの自分が感じた疑問に向き合い、思考してみると、模擬国連がもっと楽しいものになるのではないでしょうか。

最後になりますが、私がこの全国高校教育模擬国連大会に議長として関わり、一議場を担当することができたのは、決して私個人の力ではありません。同じ議場を担当した会議監督・秘書官、実行委員のみんな、適切なアドバイスをくださった先生方、そして何より今大会に参加してくださった大使の皆さんがいなければ、成功させることはできませんでした。本当にありがとうございました。

 

■会議監督インタビュー

議場全体を見渡すことで、新たな視点と工夫を再発見できた

豊島岡女子学園高校[東京都]2年 勝田真由さん

■教育模擬国連に実行委員として参加を決めたのはいつ頃ですか。また、会議監督になることはどのように決められましたか。

 

最終的には実行委員の募集がかかった時に、自分が本当にやりたいのか、またできるのかどうかをよく考えて、参加を決めました。最初に実行委員になりたいと思ったきっかけは、高校1年生の夏、第2回大会に大使として出場した時です。その大会で実行委員をしていた先輩を見て、憧れを持ったからです。

 

結局は会議監督になったわけですが、会議監督だけを志望していたわけではなく、議長・会議監督・書記官のどれもいいと思っていました。私が実行委員になってやりたかったのは「大使の皆さんが心地よく会議に臨めるように、直接的にサポートをすること」という、何とも漠然としたものだったので、フロントであれば三役どれであったとしても達成できたからです。ただ、フロント経験のある同級生に聞いたときに、一番魅力を感じたのは会議監督でした。三役の中で一番会議を把握していないといけないという反面、しっかりと観察して会議を整えていくという仕事内容にとてもやりがいを感じました。

 

■フロントの中で会議監督の仕事の内容を教えてください。また、当日までにどのような準備をしましたか。 

 

会議監督の仕事は、会議が円滑に進んでいるのか確認したり、提出された文書の間違いを指摘したり、議長の補助をしたりと様々です。しかし、一番重要な仕事は、文書のディレクチェックだと思っています。また今回は、会議に参加される大使の方々が会議の進行の流れを理解し、「議論」に集中していただけるように、議事進行の説明を行いましたが、その仕事も請け負いました。

 

事前の準備としては、まず私が担当したのは初級者向けの議場だったので、先ほども言及したように、会議全体の流れを説明するパワーポイントを作りました。

 

また、大使の方々の提出してくださったPPP(Position and Policy Paper)を読み込みました。特に、あまりインターネット上での情報の記載が少ない国については、政策にその大使自身のバイアスがかかっていることがあるので、より慎重に読み進めました。

 

■会議当日は、どのようなことに気を付けて行動しましたか。

 

パワーポイントを説明する際には、模擬国連にはわかりにくい用語がたくさんあるので、その一つひとつをゆっくり丁寧に説明することを心掛けました。

 

また、この模擬国連大会の「教育」というコンセプトに基づき、最初の非着席討議(アンモデ)で、会議にうまく参加できていなさそうな人に直接的な働きかけを行ったのですが、その時には、議論の内容のような具体的な内容を言わないようにして、大使自身の国としての考え方には絶対に影響しないように、細心の注意を払いました。

 

■2日間の大会で、一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。

 

1日目が終わった時点で、2日目の展望があまり見えなかったことです。国際社会にとって意味のある会議、文書になるのか、心配に思っていました。そこでその日の夜に、同議場のフロントの2人と、翌日にどのような呼びかけを行っていくのか、意味のある文書にするにはどうすれば良いのかを話し合いました。最終的には、会議を意義のあるものにしてほしいことを説明し、文書についても書式をそろえることよりも、議論の内容を盛り込むことを大切にしてほしいことを呼びかけるなどしました。その結果、会議を有意義なものにできたと思っています。

 

■最後に、教育模擬国連に参加した感想をお話しください。

 

この大会でフロントという貴重な体験をしたことを通して、自分自身のフロントとしての成長だけでなく、大使としての成長も感じました。

 

うまくいかないことも多くありましたが、初めてのフロントでは、多くの学びがありました。

今まで大使として何度も参加してきた模擬国連でしたが、その時は、議場全体を落ち着いて見渡せていませんでした。しかし今回は、フロントとして全体を見ることが仕事でしたので、しっかり見ることができました。そこで、大使の方々の工夫している点が発見できたり、どんな時に周りを見る必要があるのか客観的にわかったりして、自分の次の大会の糧になりました。

 

そして、何よりも楽しかったです。大会中、様々な意見を見聞きする上で、自分が考えもつかないような斬新で魅力的な政策を考えている大使がたくさんいらっしゃり、新たな視点を得られたような感覚は感動でした。これも、普段は全国津々浦々でお互い交流することもなく過ごしている高校生が、一ところに集まってこそなんだなと感じ、この大会はほんとに意義のある素晴らしい大会だと思いました。

 

■書記官インタビュー

会議終了後の、議場からの拍手が忘れられない!

昭和女子大学附属昭和高校[東京都]2年 森桃子さん

■実行委員として参加を決めたのはいつ頃ですか。また、書記になることはどのように決められましたか。

 

私は中学3年生から現在まで、学生団体「もぎコミュ」で模擬国連初心者を助けるための活動をしています。そこで活動しているうちに、AJEMUNの実行委員として初心者の役に立ちたいと思うようになりました。そし、今年の4月に書類選考を経て、正式にAJEMUNの実行委員になることが決まりました。

 

高校1年生の8月から2年生の6月までチェコに留学していたため、日本の模擬国連に関しては約1年のブランクがありました。そのため、議長や会議監督を補佐する側の人間になりたいと思い、書記官を希望しました。

 

■フロントの中で、書記官の仕事を簡単に教えてください。また、そのためにどのような準備をしましたか。

 

書記官の仕事は、簡単に言うと議長の補佐と時間管理です。スピーチの順番や動議をPCに記録し、タイマーを設置します。残り時間がどれくらいかを議長に伝え、会議がスムーズに進むように心がけました。また1日目のWP、2日目のDRの体裁のチェックやアドバイスをすることも、書記官の大事な仕事です。

 

そのために、事前にExcelで会議に必要なシートを作りました。また、会議当日困ることがないように、PCやタイマーを使って当日のシミュレーションをしました。

 

■会議当日は、どのようなことに気を付けて行動しましたか。

 

会議中は時間管理を徹底し、常に議長と確認を取り合っていました。また、全大使が取り残されることなく、会議に参加できるように働きかけました。非公式討議(アンモデ)の際は、議場で何が起こっているかをフロントで確認し、議論に入ることができない大使に参加を促しました。各大使がこの大会のために準備したことを活かせるように会議を進行することが、フロントの大事な役目であるということを心に留めて行動できたと思います。

 

■2日間の大会で、一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。

 

大会1日目は、大使同士の議論が深まっていませんでした。また議論に参加できていない大使も多く、その方たちをどう議論に巻き込んでいくかが課題でした。1日目終了後に、顧問の先生とE議場のフロントで集まって次の日の議論の改善点について話し合いました。そこでお互いが意見を出し合い、まとめられたのが良かった点だと思います。そしてE議場は初級者向けの議場なので、高い議論のレベルを求めるのではなく、各大使が発言できるようにフロントが働きかけることが大事であるという結論に至りました。

 

■最後に、教育模擬国連に参加した感想をお話しください。

 

とても楽しかったです。特に、会議が終わって拍手が飛び交った時の光景は忘れられません。2年前に参加した本大会では大使として参加し、今回は異なる立場から会議を経験しました。全国最大規模の大会でフロントを務めることができたという経験は、私の模擬国連活動の中で集大成になったと思います。

 

一方で、今大会は自分の力試しでもありました。知識不足のために議長や会議監督に頼ってしまい、後悔も多く残りました。残りの高校生活の中で、今回得た課題を次にどう生かすかが大切だと思います。そしてそれを力に変え、今後も邁進していきたいと思います。

 

今大会の顧問の先生方をはじめとする実行委員の皆さん、短い期間ありがとうございました。

 

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