みやぎ総文2017 自然科学部門

恒星なのに明るさが変化!? ~食変光星の光度変化を追え!

【地学】智辯和歌山高校 科学部

(2017年8月取材)

■部員数 74人(1年生35人・2年生22人・3年生17人)

■答えてくれた人 北村文里さん(2年)

 

食変光星アルゴルの観測データを用いた光度変化の分析

明るさが変化するメデューサの目「アルゴル」

私たちの研究テーマは「食変光星アルゴルの観測データを用いた光度変化の分析」です。

 

夜空には様々な明るさの恒星が光っていますが、その中には明るさが変化するものもあります。そのような星を変光星といいます。

 

今回私たちが取り上げたペルセウス座のアルゴルは有名な変光星の一つで、ギリシア神話でペルセウスが退治した怪物、メデューサの目の部分にあたります。肉眼でも見える、比較的観測しやすい変光星です。1つの星に見えますが、2つの星からなっており、片方の星がもう片方を隠す「食」によって、明るさが変化します。このような仕組みで等級が変わる星を食変光星といいます。

 


下図をご覧ください。黄色い星は明るい星、オレンジの星は暗い星を表しています。

 

グラフは明るさの変化を表しており、1番から5番の方向に時間が進んでいます。明るさが暗くなっているところを極小といい、特に1番や5番のように最も暗いところを主極小といいます。これは、暗い星が明るい星を隠すために起こります。2番や4番の時はどちらの星も見えるために最も明るく、3番では明るい星が暗い星を隠すために少し暗くなっています。これを副極小といいますが、副極小は等級の変化が小さいために今回は考えないことにします。

 

アルゴルはこの1番から5番のサイクルを繰り返しており、主極小はおよそ2.9日ごとに現れます。この周期はほぼ一定なので、主極小が現れる日を予測することができます。しかし、アルゴルの公転周期は不規則に変化することが知られています。2つの星から少し離れた、3つ目の星が影響していると考えられています。 

今回はアルゴルの明るさの変化のグラフを描くことを第一目標とし、グラフから極小時刻を求め、極小予報時刻とのずれを確認することを最終目標とします。

全天スカイモニターを利用して解析

次に、解析方法を述べます。

 

解析に用いる画像は、和歌山県紀美野町にあるみさと天文台から提供して頂きました。

 

みさと天文台には全天スカイモニターがあります。全天スカイモニターは24時間、1分ごとに全天の写真を撮り続けています。これは雲の様子を観察するために用いられていますが、夜の画像には綺麗に星が写っているので、解析に利用できると考えました。この写真はインターネット上で誰でも見ることができます(※)。

 

※ http://hot.obs.jp/skymonitor/experiment.jsp

 

解析に用いるデータは、公開されている写真から、解析に適していると思われるものを提供していただきました。条件としては、極小前後の天気が晴れであることと、月が明るくないということです。高感度撮影のため、月が明るいと写真のように昼間のような明るい画像になってしまうのです。

 


これらの気象条件を考慮して画像を選んでいくと、実は解析に適した画像は多くない、ということがわかりました。

 

画像の解析には、天体画像処理ソフトウェアの「ステライメージ」を用いました。明るさを測定すると、カウント値という値が得られます。これは露出時間や空の状態によって変化する、明るさの値です。これを等級に変換するには、等級があらかじめわかっている星のカウント値と比較する必要があります。

 

このような比較に用いる星を比較星といいます。今回は1.8等星のミルファクを用いました。

 


それぞれのカウント値がわかったら、見かけの明るさと等級の関係を算出するポグソンの式に代入して、アルゴルの等級を求めます。このような計算を画像ごとに行い、アルゴルの明るさのグラフを作成します。

 

下図がそのグラフです。アルゴルが見えている時間が限られているため断片的なグラフになっていますが、明るさの変化や差ははっきりとわかります。

 

グラフを見ると、明るさのばらつきがやや気になります。誤差が出た原因として考えられるのは、撮影時の様々な状況や、全天画像であるために暗い星が埋もれてしまうこと、カメラのセンサーが暗い星の光をとらえきれないことなどが考えられます。また、比較星を一つしか用いなかったために、比較星を解析した際の誤差が反映されやすくなってしまったことも挙げられます。 

※クリックすると拡大します

そこで次に、比較星を複数用いて解析を行いました。

 

比較星にはペルセウス座の中から4等星以上の星7つを選びました。

 


これらを測定して得られたカウント値のグラフが下図です。 

その結果からグラフを作成し、比較星が1個の時と比べてみました。

 

図 解析結果(極小付近)
図 解析結果(極小付近)

※クリックすると拡大します。

 

グラフから、比較星を7個にしたときは極小予報時刻で暗くなっているのがよりはっきりしました。

 

次に、光度変化がないときのグラフを比較してみました。すると、比較星が1個の時はグラフがある程度まっすぐになりましたが、比較星7個の時はばらつきがでてしまいました。これは私たちの予想と異なります。また、アルゴルの等級変化の幅から考えるとグラフはだいたい2等級あたりに分布するはずですが、このグラフでは3等級前後に分布しており、1等級ほど暗くなってしまっています。

 

この原因は検討中ですが、7個の比較星の中に比較に適さない星が含まれていたのではないか、と考えています。そのため、比較星どうしで等級を解析し、適したものを絞り込む必要があります。

 

今回の研究では、予報時刻と実際の極小時刻のずれを求めるという最終目標には到達していません。これからグラフの精度を上げるとともに、データ数を増やしていきたいです。

 

また、今回の研究のように、全天画像を用いてきれいなグラフを描くことができると示せれば、私たちのような学生でも多くのデータが利用できるため、研究の幅が広がっていくのではないかと考えています。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

宇宙の研究がしたくて、はじめは自分でいろいろテーマを考えましたが、費用やかかる時間の問題でなかなか決まりませんでした。最終的には、和歌山大学の尾久土正己先生に相談する中で、みさと天文台のカメラを利用できると聞き、研究テーマを決めました。調べてみると、変光星は比較的明るくて観測しやすいものもあると知り、興味を持ちました。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

1週間あたり4、5時間で1年くらいです。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

この研究では主に画像解析が中心ですが、私はもともと機械操作に慣れていなかったので、まず画像解析ソフトを使えるようになるのに苦労しました。たくさんの画層を解析するので、同じ作業をミスなく何度も繰り返すことも大変でした。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

「全天画像を用いて光度曲線が描けた」というところです。誤差はあるものの、きれいな曲線が現れているのはいい結果だと思います。

2つ目の解析で、一般的には比較星を増やすと精度が上がるのに誤差が大きくなってしまったのは、予想外でしたがとても興味深い結果です。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

・「食変光星キャンペーン2002 アルゴルの食を見よう」

http://meineko.sakura.ne.jp/algol.html

・『あなたもできるデジカメ天文学』 鈴木文二、洞口俊博(恒星社厚生閣)

・『宇宙ウォッチング』沼澤茂美、脇屋奈々代(新星出版社)

・「Astro Arts『秋の食変光星を観測しよう』

https://www.astroarts.co.jp/news/2008/10/15variables/index-j.shtml

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

この研究は、来年の春頃まで続けたいと考えています。まず、誤差をできるだけ小さくしてグラフにエラーバーをつけ、精度を明らかにしたいです、その上で、複数の光度曲線を重ねて周期を求めるというところまでできればと考えています。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

私はこの研究に取り組んでいますが、科学オリンピックや、その他の大会に出場するために準備をしている部員が多いです。

 

■総文祭に参加して

 

総文祭では、準備過程で研究の進歩を感じられたと同時に、多くの課題を見つけることができました。また、他の学校のハイレベルな発表を見ることができ、とても刺激を受けました。そこで感じたこと、気づいたことを、これからの研究に生かしていきたいです。自然科学部門のみなさん、ありがとうございました!

 

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