みやぎ総文2017 自然科学部門

流星がより明るく輝くのは いつ? ~輝きのパターン分析から見えてきたこと

【物理】宮崎県立都農高校 天文科学部

左から椎葉成美さん(2年)、津留まほさん(2年)
左から椎葉成美さん(2年)、津留まほさん(2年)

■部員数 5人(1年生2人・2年生3人)

■答えてくれた人 津留まほさん(2年)

 

都農高校から見た流れ星2 ~光度曲線から迫る流星の性質~

高感度カメラで流星を毎晩観測、輝きのパターンを調べる

流星とは、地球の大気に衝突した氷や塵が輝く現象です。私たちはこの流星を観測し、軌道や明るさなどを調べることによって流星の性質を明らかにしようと研究をしています。

 

具体的には、その軌道を観測することで、母彗星の経路を調べ、どこからきた物質なのかを特定しようとしています。また、流星の観測データから様々な光度曲線を作成し、流星自体の性質を詳しく調べています。最終的には、流星の観測から太陽系の起源を探るという、大きなテーマにつなげたいと考えています。

 

これらのことを調べるために、私たちは高感度CCDカメラによる流星の自動観測(TV同時観測)を行っています。

 

昨年は、日本流星研究会の前田幸治先生と共同で、宮崎市と都農高校での流星の同時観測を行いました。2014年12月から2015年9月までの約183日間に395個もの流星経路を確定し、解析によって、流星群の元となる彗星の軌道との関係も知ることができました。

 

今年度はこの観測データを使い各流星ごとに、光り始めてからの時間と、その時の流星の明るさ(絶対等級)をグラフにし、光度曲線を作成しました。

 

光度曲線の5つのパターンと、流星の明るさや速度の関係を調べる

今回はビデオの画面内に終始収まっている227個の光度曲線を、見た目の印象で5つの形に分類し、明るさや速さごとにどの形状が多いかを調べました。

 

まず明るさによって分類しました。暗い流星にはギザギザ型が多いように見えました。

 

次に対地速度による分類を行いました。観測した母数が多い速度では、丸形、山形、増光型の比率が似ていることがわかりました。

 

見た目での分類だけでは正確性に欠けるので、光度曲線の性質を何らかの形で数値化しようと試みました。しかし流星の継続時間がばらばらなこともあり、比較をするのは難航しました。そこで、継続時間に対する明るさのピーク時間の比を求めることにしました。

 

この比であれば、継続時間の違う光度曲線も比較可能です。したがって、先ほどの227個の光度曲線に対して継続時間と明るさのピーク時間の比を求めました。

 

結果、0.70~0.75が27個と最多でしたが、全体の平均値と標準偏差をとると0.66±0.20の範囲にピークがありました。

 

さらに観測数の多かった双子座流星群とペルセウス座流星群で比較してみたところ、ピークの平均値と標準偏差に差はありませんでした。

 

明るい流星ほど明るさのピークは遅くなる

次に星の明るさごとにピークの位置を分類すると、明るい流星ほどピークが遅い傾向にあることがわかります。

 

さらに流星の速さごとにピーク位置を比較していくと、速さによるばらつきはほとんど確認できませんでした。

ここまでは継続時間に対する流星の明るさの光度曲線を分析し、その明るさのピーク位置とその他の性質の関係を調べました。私たちはこの他に、流星の高度と明るさの光度曲線も作成しました。

 

その光度曲線から一番明るく輝いた高度を調べ、それを分類ごとに分布表にまとめました。

結果、双子座流星群は上空90㎞、ペルセウス座流星群は100㎞に集中していました

 

全体を一つの表にまとめたのがこちらです。ペルセウス座流星群の対地速度は約60㎞/sであるのに対し双子座流星群は約35㎞/sであるので、速い流星ほど上空で輝くようです。

 

双子座とペルセウス座の流星群は似ている?!

以上の研究から、今回の観測した流星についてわかったことをまとめます。

 

双子座流星群とペルセウス座流星群を比較したときに、輝きのピークの時間に大きなばらつきはありませんでした。また、明るい流星ほどピークの時間が遅くなっていました。さらに、速度によってピークに大きなばらつきはありませんでした。

 

したがって昨年度の研究と合わせると、2つの流星群は別の場所から来ていますが、輝き方などの性質は似ていると結論付けました。これは流星体が同じような物質である証拠の一部になるかもしれません。また流星の輝き方が変化する様々な要因のうち、今研究により流星の速度によってピークのばらつきは変わらず、また明るい流星ほどピークの時間が遅くなっていることがわかりました。さらに、流星の速度によって最も明るく輝くときの流星の高度は変化することもわかりました。今後はさらにデータ数を増やして解析し、様々な条件から流星について調査したいと思います。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

部活動で星空観望会を行い、何か天体に関する研究ができないか探していたときに、先生から勧めていただきました。しばらくはカメラで流れ星を撮影するだけでしたが、データの活用を考えるうちに研究発表になっていきました。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

全国大会の時点で約2年です。週3日、1回約2時間のペースです。プレゼンの練習も含めると、大会前はもっと長くなります。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

流星のデータをエクセルにまとめるところです。単純な作業ですが、量が多いので疲れました。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

データの処理方法です。最初は、見た目だけで分類していましたが、ピークの時間を取ることを学びました。少し複雑ですが、良いデータになったと思います。また、流れ星の光度曲線については、どの数字を抜き出してグラフを作っているのかを丁寧に話す必要がありました。特に、分布表や明るさのピークについては、ゆっくり伝えないと複雑で誤解されやすいのです。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

「天体観測の教科書 流星編」Martin Beech 著/長谷川一郎、十三塾 訳(誠文堂新光社)

  

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

後輩が今後も続けていきます。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

夜に集まって天体望遠鏡で星空を観察したり、地域の方を招いた星空観望会などを行ったりしています。

 

■総文祭に参加して

 

初めてあのような大きな場所で発表するので、とても緊張して、前日は寝られませんでした。発表の時間をオーバーし、受賞もできなかったので悔しかったです。練習不足だったことを実感しました。どの高校もしっかり研究していて、その成果も出ており、レベルの高い研究ばかりで、圧倒されました。

 

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