2019さが総文

日本三大悪風の一つ「清川だし」の発生原因を40年分の気象データから解明

【地学】山形県立鶴岡南高校 科学部

左から 齋藤美尚くん、田中颯真くん、佐々木快くん(全員3年)
左から 齋藤美尚くん、田中颯真くん、佐々木快くん(全員3年)

■部員数 28人(うち1年生20人・2年生2人・3年生6人)

■記入者 齋藤美尚くん(3年)

 

清川だしとフェーン現象の関係

災害を招くフェーン現象

日本海側では、たびたびフェーン現象が原因と考えられる大火が発生しています。2016年12月22日に発生した糸魚川大規模火災でも、フェーン現象がもたらしたとみられる最大瞬間風速24.2メートルの強風が観測されており、火災の規模を拡大させたと考えられています。

 

フェーン現象は、山の斜面に当たった風が山を越えることで暖かく乾いた下降気流となり、風下の地域の気温を上昇させる現象です。風上側の湿度が風下側よりも高いため、風が山を昇る際の気温上昇率が山を下る際の気温下降率よりも小さくなり、このような現象が生じます。

 

 

私たちが住む庄内地方では、狩川に吹く局地風として「清川だし」が知られています。近年では風力発電にも利用される一方で、農作物に大きな被害を与えることもあり、岡山県の広戸風、愛媛県のやまじ風と共に日本三大悪風の一つに数えられています。

 

 

私たちは、清川だしとフェーン現象の関連性の解明によって、防災に役立つ知見が得られるのではないかと考えて、研究目的としました。

 

清川だしの気象条件を徹底調査!

清川だしが吹く日は、風上よりも風下の気温が高くなり、湿度は低くなる

 

私たちは、過去41年間(1977年~2018年)について、清川だしが吹くとされる4~10月の期間で、狩川での最大風速が10m/s以上、風向が北東~南東という条件を満たす日を抽出して、データを整理しました。これは、清川だしが発生した日に当たると推測されます。

 

まず、酒田、新庄、石巻を主要観測地点として、抽出した日の平均気温と平均湿度を調べました。そして、各地点間での気温差と湿度差を求め、グラフにしました。

 

平均気温については、風下側の酒田の気温は、風上側の石巻よりも2.6℃高いことがわかりました。

 

 

比較のために、清川だしとは逆方向の西向きの風が吹いた日についても、同様の調査をしたところ、酒田・石巻間ではほぼ気温差が生じていませんでした。ここから、東向きの風について観測された気温差は、有意な差であると言えます。

 

 

平均湿度については、風下側の酒田の湿度は、風上側の石巻よりも12.3%低いことがわかりました。

 

 

最上川が出羽山脈を貫く地形のため、風向きが一定の方向に絞られる

 

次に、酒田、狩川、新庄、石巻の各地点での、抽出した日の風向について調べました。石巻では、東からの広範囲からの風が見られる一方、酒田では、南東や東南東の風向に絞られていることがわかります。

 

 

これは、新庄盆地と庄内平野の間には最上川が出羽山脈を貫く地形があり、ここを通過することで風が一定の方向に集中しやすくなるためだと考えられます。

 

 

清川だしが吹く日はフェーン現象と同様の気象条件

 

さらに、狩川での最大風速が特に大きい日については、当日の気圧配置についても調べました。共通して、日本海側に低気圧、太平洋側で高気圧が位置する傾向が見られました。これは、フェーン現象に特徴的な気圧配置です。清川だしが吹く日には、フェーン現象と同様の気象条件が整っている可能性が高いと言えます。

 

 

まとめと考察

 

清川だしが吹く日には、風下側では、気温が上がり、空気が乾燥することがわかりました。

 

これは、当日の気圧配置も踏まえると、太平洋側から発する東向きの風が奥羽山脈を越える際に、フェーン現象が生じたことによるものと考えられます。

 

清川だしは、この奥羽山脈を越えた東向きの風が、さらに日本海側に抜けるまでに集まってより強く吹き降ろしたものと言うことができます。したがって、清川だしが強く吹く日には、風下の酒田では、乾燥した強風によって火災が発生・拡大する危険があります。

 

以上から、清川だしとフェーン現象には関連性があると言え、この知見は、今後気象予報などに応用できるのではないかと思います。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

私たちの住む庄内地方には、日本三大悪風の一つである「清川だし」という風が吹いています。この風が農作物に対し被害を与えたり、火災の損害を大きくすることを知り、「清川だし」がどのような気候条件で吹くのかを調べれば、災害の対策に役立つのではないかと考えたからです。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

1週間あたり4時間で半年です。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

41年間の膨大なデータ処理に時間を割かれました。しかし、そういう地道な解析があって新たな発見があるので、大切な過程だったと振り返ることができます。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

フェーン現象の定義や、山形県の地形をよりわかりやすく説明することを心掛けました。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

冬季、山形県庄内平野における強風の解析

気象庁ホームページ

・「山形庄内平野の強風「清川だし」の発生機構について」力石國男ら(第19回 風工学シンポジウム論文集)

日本気象協会実況天気図

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

この発表で一区切りと考えています。清川だしと農業関係で研究できることがあれば、探究していきたいと考えています。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

最初にその日に行う実験の内容を簡単に説明し、そこからグループに分かれて分担作業を行っています。また、不定期ではありますがミーティングを行い、部員全員が意見を出し合って研究の進め方を決めています。この研究以外では、山形大学農学部や慶應義塾大学先端生命科学研究所と連携して行っている研究もあります。

 

■総文祭に参加して

 

私たちは全国高等学校総合文化祭自然科学部門に参加して、全国の仲間とのふれあい、大学研究施設の見学、そして全国の高校生たちのレベルの高い研究を肌で感じ、とても良い刺激になりました。また、自分たちでは気づくことができなかった足りない点を指摘していただき、これからの研究をより発展していくことができる良い機会になったと思いました。

 

⇒他の高校の研究もみてみよう

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