2019さが総文

地道な作業の積み重ねで究めた! 効率よいウレアーゼ活性の条件

【ポスター/生物】富山県立富山中部高校 スーパーサイエンス部

(2019年7月取材)

左から 春若純菜さん、瀬口薫さん、三輪珠嶺くん、松森友宏くん(全員3年)
左から 春若純菜さん、瀬口薫さん、三輪珠嶺くん、松森友宏くん(全員3年)

■部員数 18人(うち1年生9人・3年生9人)

■答えてくれた人 春若純菜さん(3年)

 

ナタマメとダイズ粉末のウレアーゼ活性 ~高い酵素活性をもつ種子粉末の活用を目指して~

ナタマメとダイズのウレアーゼのウレアーゼ活性

私たちが研究しているのは、ウレアーゼという酵素です。ウレアーゼは、1926年にサムナーによってナタマメから初めて結晶化された分子量約48万のタンパク質で、尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する働きがあります。ウレアーゼはナタマメやダイズに多く含まれており、近年はバイオリアクターとして用いることができる反応素子として様々な活用の可能性があることから、注目されています。

 

 

私たちは、ウレアーゼ活性が高く、入手しやすくて安価なナタマメやダイズ種子の粉末を用いて、尿素からアンモニアや二酸化炭素を効率よく生じさせ、それらを有効活用したいと考えました。

 

私たちの昨年度までの研究で、ナタマメ属では白ナタマメと赤ナタマメ、ダイズ属ではダイズと、学校裏の神通川河川敷に自生するツルマメのウレアーゼ活性が高いことがわかりかした。また、ナタマメ種子を煮るとウレアーゼは直ちに失活しますが、5℃以下の水に浸けておくとすぐには失活せず、100℃の乾燥器内に1時間入れておいても失活しませんでした。つまり、ナタマメ粉末は、乾燥状態ならば長期間常温保存が可能であるということです。pH変化よる活性の変化では、pH3以下の強酸性下では失活することもわかりました。

 

ウレアーゼ活性の有無は、尿素水溶液にマメ科種子粉末とフェノールフタレイン溶液を入れ、尿素の分解によって生じたアンモニアが水に溶けることで塩基性を示した場合を活性有りとしました。つまり、フェノールフタレインが赤く呈色した場合、活性有りと判定しました。

 

 

今回の実験ではまず、ナタマメを栽培し、成長段階によってウレアーゼ活性に変化があるかを調べました。マメ科種子は無胚乳種子なので、発芽時点の子葉には活性がありましたが、初生葉では活性がないことがわかりました。初夏に花が咲き、莢の中の種子が硬い種子と同じ程度大きくなると、軟らかい未熟種子でもウレアーゼ活性がみられるようになりました。

 

 

また、ナタマメは高校の屋上でプランター栽培しているのですが、2018年の猛暑においても枯れることなく、施肥しなくても結実し、栽培しやすい植物であることがわかりました。

 

 

次に、ナタマメよりも広く販売されているダイズ種子のウレアーゼ活性を調べました。ダイズは品種も多いので、ウレアーゼ供給体として有効だと考えたからです。ここでは、同じ濃度の尿素の溶液に同じ質量のマメ粉末(白ナタマメ・青ダイズ・黒ダイズ・黄ダイズ)を入れ、フェノールフタレインが呈色するのに要した時間を比較しました。短時間で呈色するほど、活性が高いと考えたためです。

 

この結果から、ウレアーゼ活性は白ナタマメ>青ダイズ>黒ダイズ>黄ダイズの順に高いと考えられます。

 

 

ナタマメやダイズの種子粉末をウレアーゼ供給体として活用するに当たっては、保存方法が重要になります。そこで、ウレアーゼの熱安定性を調べました。結果は表のとおりです。

 

フライパンで煎ったりお湯で煮たりしなければ、100℃の高温下でも酵素活性がありました。煮るとウレアーゼ活性がなくなったのは、高温のH2O分子の作用によってタンパク質の高次構造が変化して、失活したためだと考えられます。

 

 

ごく微量のナタマメ粉末で大きな活性を得ることができる

 

次に、アンモニア生成量を酸塩基逆滴定によって算出しました。昨年は速く進むこの反応をできるだけ遅くして、発生するアンモニアを定量できるように低温(5℃)、低基質濃度(0.017mol/L)で実験したのですが、これは最適な活性温度ではありません。そこで今回は常温に近い21℃での反応速度を求めることにしました。今回は反応を遅くするために酵素量を減らす方法を考えました。生分解プラスチック粉末と白ナタマメ粉末を混合して希釈粉末にしました。そして、ごく微量の白ナタマメ粉末を含むこの混合粉末を用いて実験を行いました。

 

 

その結果、正味0.001gの白ナタマメ粉末でも、20〜30分間で尿素の約10%が加水分解され、ごく微量の白ナタマメ粉末でも反応が進むことがわかりました。

 

 

反応によって生じるアンモニアを集めることはできるか

 

そこで、この反応により生じるアンモニアを利用できないかと考えました。近年、アンモニアを直接燃料とする燃料電池を開発する研究が行われています。尿素溶液中に生じるアンモニウムイオンNH4+を気体のアンモニアにして燃料に活用しようと考えました。

 

尿素の加水分解ではCO2も発生します。そこで、半透膜を利用してアンモニアとCO2を分離させるべく、図のような装置を作りました。

 

 

半透膜として陽イオン交換膜を用いれば、CO2から生じる炭酸水素イオンや炭酸イオンなどの陰イオンが移動せず、分離できると考えました。これにより、左側での尿素の加水分解で生じたイオンのうちアンモニウムイオンだけが右側へ移動し、NaOH溶液と反応して気体のアンモニアが発生するはずです。

 

 

装置のリトマス紙が青色に変われば、気体のアンモニアが生じたことになります。また、反応後の溶液のpHも測定しました。そして、炭酸水素イオンや炭酸イオンが右側に移動していないことを確かめるため、塩化バリウム水溶液をすべての反応溶液に加えました。すると、両側に白色沈殿が生じました。左側の白色沈殿は炭酸バリウムと考えられますが、陰イオンが移動しない陽イオン交換膜を使用したことから、右側の白色沈殿は水酸化バリウムではないかと考え、さらに塩酸を加えました。すると、左側からだけ気体(CO2)が発生したので、炭酸水素イオンや炭酸イオンは右側に移動していないとわかりました。そして、リトマス紙の変色と強いアンモニア臭を両側から確認することができました。

 

右側のNaOHの濃度を10倍高くしたところ、両側ともウレアーゼの失活に近い強さの塩基性になったことから、この装置においてNaOHの濃度が高すぎてはいけないことがわかりました。

 


 

また、同じ手順で青ダイズ粉末を用いて実験を行ったところ、ナタマメ粉末と同様に、炭酸水素イオンや炭酸イオンが右側に移動していないことと、両側でのアンモニアの発生が確認できました。

 


 

より高純度のアンモニアを取り出すために

 

こちらが、陽イオン交換膜を用いたときの反応をモデル化したものです。

 

一方、陰イオン交換膜を用いたときはこの図とは逆に、アンモニウムイオンが移動できないので、左側からのみアンモニアが発生すると考えていたのですが、実際には両側から気体のアンモニアが発生しました。このことから、陰イオン交換膜はアンモニア分子を通すのではないかと考えました。すると同様に、このモデル化した図中に示さなかった極微量のCO2分子も、陽イオン交換膜を通過している可能性があります。

 

 

そこで、二酸化炭素を全く含まない高純度のアンモニアを得るために、ソーダ石灰を通すことを考えました。次の図にあるように、まず、陽イオン交換膜を用いない簡易装置を作製しました。

 

この装置では、上の丸底フラスコにアンモニアが溜まるはずです。しかし実験の結果、アンモニア臭もリトマス紙の変色も見られず、多量のアンモニアが集められませんでした。

 

 

そこで、溶液中のアンモニウムイオンを気体にするためにNaOHを加えて混ぜたところ、ソーダ石灰の上部でアンモニアが検出されました。

 

しかしこの操作を行うと、NaOHによって高いpHになり、ウレアーゼは失活してしまいます。ウレアーゼを失活させず継続的にアンモニアを発生させるには、陽イオン交換膜を用いた装置にソーダ石灰を接続する方法が有効であると考えられます。

 

 

今後は、生じる炭酸イオンの活用も考慮しつつ、より効率の良い装置や条件を研究していきたいと考えています。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

私たちの研究は、先輩方から引き継いだものです。先輩方はどのマメ科種子粉末にウレアーゼが含まれているのかということや、それらのウレアーゼが失活する条件、熱安定性などを調べ、逆適応によって低基質濃度ではどれくらいの量のアンモニアが生成されるかを考察してきました。

 

私たちはその研究をさらに発展させ、生じたアンモニアを有効利用することを目標に研究を進めました。また、ダイズ属の品種による活性の高さの違いを調べることで、白ナタマメの代用が可能かを検討したいと考えました。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

昨年から始まった研究で、今年で2年目です。私たちの班のメンバーは全員、化学部に加えて別の部活を兼部しているため、部活動では全員がそろわないこともありましたが、1日あたり放課後2時間ほど、活動しました。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

ダイズ属の種子粉末の品種による活性の高さを調べるときに、誤差を減らすために計16回(4品種×4回)実験しました。操作そのものは簡単なのですが、とても地道な作業でたいへんでした。同様に地道だったのが、14個の試料を逆滴定してアンモニア生成量を算出した作業で、部員同士コミュニケーションをとりながら実験を進めていきました。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

常温、高基質濃度で逆滴定によってアンモニア生成量を算出するために、環境にやさしい生分解性プラスチックと白ナタマメ粉末を混合することで、極微量の白ナタマメ粉末を量りとる工夫をしました。アンモニアと二酸化炭素を分離する実験では、浸透圧実験器をアレンジした装置を組み立てました。他にもたくさんの実験をしており、様々な観点から考察を深めました。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

(1)“The chemical nature of enzymes” James B.Summer  Nobel Lecture,1946年

(2)「アンモニア燃料電池」京都大学、ノリタケカンパニー、三井化学、トクヤマ、日本触媒、豊田自動織機(SIP委託研究、2017年)

(3)「生体触媒反応を介したセメンテーションによる改良砂の力学特性」鹿渡洸一、林和幸、木下尚樹、安原英明(第40回岩盤力学に関するシンポジウム講演集)

(4)「ナタマメ粉末のウレアーゼ活性」富山中部高校スーパーサイエンス部(信州総文祭論文集 2018年)

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

今後は、現在の1年生にこの研究を引き継ごうと考えています。効率よくアンモニアを発生させる装置や条件を考え、同時に生じた反応溶液中の炭酸イオンをカルシウムイオンと反応させることにより、土壌の液状化の防止への活用の可能性を探っていきたいです。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

ふだんは実験を行ったり、結果をまとめたりしています。屋上で育てているナタマメやダイズに水やりをするのも、私たちにとって大切な活動です。私たちの部活では、この研究のほかに、飽和食塩水におけるNaCl結晶の研究も進められています。

 

■総文祭に参加して

 

全国大会はとてもレベルが高く、他の発表を見て、とても良い刺激を受けました。発表では、自分たちの研究の魅力を時間の限り伝えることができてよかったです。この全国大会に出場することができたのは、顧問の先生や部員、そして多くの方々の支えがあり、応援してくれる友達や家族の存在があったからこそだと思うので、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

⇒他の高校の研究もみてみよう

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